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能登半島地震と 全国老施協DWATの 活動を振り返ってvol.6  全国老施協災害対策委員長に聞く

災害救助法における福祉の位置づけについて

 1月3日時点でも入手できる情報は断片的であったため、支援活動を開始するまでに時間を要することとなりましたが、まずは石川県の、続いて富山県と、近隣の登録者から派遣を要請しました。当初は政府の許可なしには被災地に入れず、12日になってようやく第一陣が被災施設に入ることができました。このように災害救助法に福祉が位置づけられていなかったため支援に制限がありましたが、今回の災害を受けて提案を行い、国会で承認される見通しとなっています。

 高齢者施設の建物は頑丈にできているため、直接の人的被害は少ないものの、その後の栄養状態や、衛生環境、ADLの低下などによる災害関連死は避けられませんでした。災害関連死を防ぐためにも、介護を代行できる全国老施協DWATによる支援は、医療と同様に重要であることが再認識されたのではないでしょうか。

リーダー不在時や、外国人スタッフのためのマニュアル整備

 今回は元日の被災ということもあり、施設長やリーダーが現場にいなかった施設もありました。道路の寸断により駆けつけることもできない状況はやむを得ませんでした。こうした経験から、リーダーが不在のときに甚大な災害が起きた場合はどうしたらよいかを決めておく必要性が浮き彫りになりました。

 一方、主に東南アジアからの技能実習生は施設の近くの寮で生活していたため、地震直後に施設に集まることができました。その後の外国人職員の泊まり込みでの支援のおかげで乗り切れたという施設もあります。外国人スタッフのための災害マニュアルの整備や、彼らのためのBCPも必ず考えておかなくてはなりません。  

全国老施協DWATの会員を増やすことも大切な役割

 全国老施協DWATの活動においては、派遣チームの指示系統をしっかりと決めておくことや、事前の研修への参加を推奨することが課題となりました。支援する側の人員のストレスの軽減や、支援のために職員を送り出す施設の人手不足の問題も、今後の大きな課題になると思います。

 9月には奥能登豪雨が発生し、道路の復旧の遅れに拍車をかけ、施設職員の自宅の被害などもありました。このように長期にわたる複合的な災害にどう対応するかも、これからの全国老施協DWATに求められていると思います。

 また広域災害に備えたブロック単位での新しいBCPの構築は必須で、たとえば南海トラフ地震など繰り返し起こる大規模な災害については、ブロック単位で被害を想定し、備蓄や発災地への応援体制の構築など現時点でできうる備えを行うなど、相互支援体制の確立は重要です。そのためにもできるだけ多くの施設が全国老施協DWATに参加してくれるように後押しし、施設同士の関係性も強められるようにすることが、私たち全国老施協の災害対策委員会の重要な役割となると思います。

 今回の震災では、設備の完全復旧までに1年以上かかっていたり、多くの施設ご利用者と職員が近隣県へ避難したりしたことで、いざ施設再開となっても、建物の修繕や職員不足などの問題が続いています。本当の意味での復旧や再開、自立ができるよう、支援を続けていきたいと思っています。