福祉施設SX

全国施設最前線

第27回 北海道 社会福祉法人 刀圭会 ケアハウス・デイサービスセンター そうび苑 ケアハウスだからできる「終活」のお手伝い

自立した高齢者が多い現在、「終活」が必須になる時代が必ず訪れます。自分の最期に、自分自身で責任を持つには何をすればよいのか?元気なうちに始められる、前向きな「終活」を行ったケアハウスをご紹介します。
※「第4回全国老人福祉施設大会・研究会議 ~JSフェスティバル in 山口〜」入賞施設を取材しています

 

終活アドバイザー
佐藤舞さん

JSフェスティバル in 山口で発表を行った佐藤舞さんは、平成28年に終活アドバイザーの資格を取得されました。「終活アドバイザー」は、終活についての知識を網羅し、高齢者や家族の相談に乗ってライフプランをサポートする専門家。相続や葬儀にお墓、医療など幅広いサポートをしてくれます。

社会福祉法人 刀圭会 ケアハウス・デイサービスセンター
そうび苑

住所:北海道帯広市西16条北1丁目27-127
TEL:0155-36-2088
入居定員:ケアハウス定員50名
URL:https://toukeikai.or.jp/facility/carehouse-soubien/

1998年開設。医療と介護、そして福祉の専門集団「社会福祉法人 刀圭会」が運営するケアハウスが「そうび苑」。地域社会の支持を受けて、高齢者が安心して生活を送れることを目指した拠点施設です。

医療と介護、生活の一体化を目指す

そうび苑は北海道・帯広市唯一となるケアハウス。母体となる社会福祉法人 刀圭会が運営する協立病院と隣接しているので、医療と介護が一体となったサービスの提供が可能となっています。

ケアハウスだからできる「終活」のお手伝い

 最期まで自分らしい人生を歩み、残された人たちが困らないように支援する「終活アドバイザー」。社会福祉法人 刀圭会(とうけいかい)の佐藤舞さんは、法人本部総務の役割をこなしながら、終活アドバイザーとして活動されています。

「私自身、4人の祖父母の終活とみとりをしました。その経験から、他人の終活をすることの苦労を身に染みて理解しているつもりです」

 親族の終活を経験し、専門知識を身に付けたプロのアドバイザー。そんな佐藤さんが訴えているのは「自分の最期は自分で決める」です。

 終活は子供の役目。そういった風潮がまん延する中、子供とはいえ、親のことは意外と知らないものではないでしょうか?また、親自身も自分のことを本当に知っているのか疑問が残ります。終活に関心が集まる昨今、佐藤さんはさまざまな施設や団体に出向いて終活講座を開講。その経験をケアハウスで生かすべく「あんしん塾」と名付けた終活セミナーを始めました。

 あんしん塾では、自らの戸籍謄本などは自分自身で取り寄せるように指導しています。中には、他県から取ったという方もいらっしゃったようですが、もしも家族がその事実を知らなければ一苦労だったはず。本人だからこそできる利点なのです。

 そして、自分で動けるのはケアハウスの元気な入居者だからこそ。自分自身の終活ができるのは、体の自由が利く、動ける間だけなのですから。

お友達との歓談はロビーにて。開放的で明るい空間が広がります。

 

[左]吹き抜けのある広い食堂。そうび苑では、月に一度「子ども食堂すまいる」を実施。地域の子供たちと入居者が一緒に食事を楽しんでいます。[右]お風呂は美人の湯といわれるモール温泉を使用。デイサービスをご利用の際には、身体状況に合わせてスタッフがお手伝いしてくれます。

 

そうび苑名物の足湯も、名湯のモール温泉で満たされています。5〜10月末までは、無料で一般開放しているのでどなたでも利用可能です。

 

施設を案内してくださった介護員の中島さんと相談員の野田さん。明るく穏やかなスタッフの笑顔あふれるそうび苑です。

 

「楽しむ終活」が日々の活力を生む

 一つずつ、確実に。終活を進めていく中で、いま一度自分の人生を振り返ってみる。前向きな終活に取り組み始めた方々の生活は、ポジティブに変わっていったそうです。

 食事付き高齢者向けマンションに近いともいわれるケアハウスには、意外と「やることがない」と感じている方もいらっしゃるとか。そんな方が終活にまつわる「やらなくてはならないこと」のおかげで、目に見えて活動的になったそうです。持ち家の掃除を始めた。財産をまとめてきた。「忙しくなったよ」と生き生きとした笑顔を見ることは、佐藤さんにとっての大きなモチベーションとなりました。

 終活と介護は切っても切れない関係ですが、介護の世界では、まだまだ浸透しているとは言えません。ケアハウスだからできる終活の支援を、これからも続けていく。それが、そうび苑全スタッフと佐藤さんが掲げる目標です。

優秀賞を受賞した2025年の全国老人福祉施設大会には、当時の施設長だった木村大志さん(写真右)と、現施設長の長谷川香さん(写真左)、そして研究発表者の佐藤さんが参加されました。

 

 

第4回全国老人福祉施設大会・研究会議 ~JSフェスティバル in 山口〜
実践研究発表 優秀賞受賞 誌上プレゼンテーション

自分の最期は自分で決める!
〜ケアハウスだからできる終活支援〜

発表者:ケアハウスそうび苑 佐藤舞さん

自分が死んだ後のことを、子供や親族に任せるのではなく、自分自身で準備をする。そのためには、元気なうちに自分の「終活」を進めておく。そんな取組を行ったケアハウスの活動と研究発表をお送りします。

終活してますか?

法人で行っていた終活講座をケアハウスでも生かしたい!

 社会福祉法人 刀圭会では、終活アドバイザーによる、出張の終活講座を開いてきました。さまざまな団体から多くの依頼を受けており、現在もその数は増え続けています。終活への関心の高さを実感するとともに、ケアハウスそうび苑でも実施することにしました。

2019年から行っていた終活出前講座は、JAや社協、市民イベントなどで活動してきました。

 

ケアハウス50名に聞きました

 ケアハウス入居者の元気な方50名からアンケートを取りました。「終活していない」が半数以上で家族任せの方もいましたが、中にはこの先のことをどうしたらいいか不安だ、という方も。これは、今が終活を知ってもらえるよい機会だと判断しました。

終活とは何か?

 第一歩として、どうして終活が必要なのか?具体的に何をするのか?といった基本となる考え方の講習を入居者全員に向けて実施。「縁起が悪い」という先入観を変え、元気なうちにしかできないことであることに気付いてもらえる、前向きな時間となりました。

入居者全員向け講習を実施、1時間の講話を通してケアハウス入居者の意識を高めました。

Tips

そもそも終活とは?

何をしたらよい?

何ができるのか?

 

ケアハウスで行った支援

皆で同じエンディングノートを!

 終活の基本は、エンディングノートに自分の想いを残すこと。ただ、現在数多く発売されている中から選ぶのは難しい。そこで、そうび苑が可能な限りのノートを購入して比較検討。厳選した一冊を選び、参加者が皆で、同じノートを使ってもらえるようにしました。

 

Tips

書きやすいエンディングノートを選定

そうび苑で購入できるように調整

皆で同じノートを使うと始めやすい

 

“終活セミナー”ではなく「そうび苑あんしん塾」に

 月に一度の講習は、「そうび苑あんしん塾」と名付け、住居録をテーマにした月には、出生時までさかのぼった全ての戸籍謄本を自分で持ってきてもらいました。相続時には本人死亡後の戸籍謄本が必要ですが、どこで取り寄せればよいかを家族も知ることができます。

スケジュール

月ごとにテーマを選定した令和5年度の年間スケジュール

6月 私の基本データ・相続家系図

7月 健康状態・住居録

8月 預貯金のこと

9月 不動産・資産・年金

10月 家族情報

11月 看護・介護・告知・終末医療

12月 葬式について

1月 お墓のこと

2月 遺言書・相続

3月 死後の希望・メッセージ

Tips

自分の必要書類を自分で用意する

元気で自分で動けるからできること
自分自身を見つめ直すきっかけに

毎月一つのテーマとする

より深く研さんすることができる
一気に全てを進める必要はない
一つずつ進めていけばよい

配布する資料は一枚にまとめる

後日見返しても分かるように
「何をするのか?」を明確に

 

講習だけではなく思い出話の時間も

 講師が一方的に話すだけではなく、入居者同士が体験談を語り合う時間も設けました。戸籍を見ながら故郷の思い出を語った後、セミナー終了後に個別の相談を受けることも。とにかく楽しく終活をしてもらいたいという願いを、入居者の皆さんと一緒に育むことができました。

「お父さんのときはこうだった」など、自分の体験を語り合う時間も用意されています。

Tips

皆で同じページを開いて同じ話題を

体験や思いを共有、時には思い出話も

終活を楽しんでもらいたい
個別の相談にも対応

 

葬儀場見学ツアーで感涙

 集大成として葬儀場見学ツアーを実施しました。なじみ深い一般葬と、近年増えつつある家族葬、それぞれの葬儀場を訪れ、どんな式が執り行われるかや、費用についての説明も受けました。今はこんなこともしてもらえるんだ!という気付きにもつながっています。

家族葬では、デジタルで遺影が浮かび上がる最新の焼香台などを体験。感激して涙ぐむ参加者の方もいらっしゃいました。

 

終活支援終了後「自分で決める」が急上昇

 1年間の支援終了後にアンケートを取ってみました。「自分で決める」が7.9%から58.8%に上昇する結果となり、実際に財産をまとめた方や、持ち家の片付けを始めた方が、生き生きと終活に取り組んでいるのを感じ、大きな達成感を得ることができました。

Tips

銀行を回って財産をまとめた

家の片付けを始めた

誰に何をあげるかを考え始めた

不動産の売却を決めた

墓じまいについて家族と相談中

終活ノートを書いて娘に話をした

葬儀場を決めて生前契約の相談を娘としている

 

今後の課題

本人と家族が終活を楽しめる環境を!

 現在、家族向け終活支援を考えており、ケアハウスが家族と一緒に考える場となるような環境をつくりたいと思います。また、いざというときにどこに相談すればいいのかが分からないという声が多くなっている現代。私たち刀圭会が地域に根差した相談窓口となり、信頼できる業者との橋渡しになりたいと願っております。そして、そうび苑なら最期まで安心だと思ってもらえることが目標です。そうび苑を卒業、特養に移ったときも終活で培ってきた「本人の気持ち」を支援できたら、最高の介護が提供できるのではないでしょうか?

 

1 職員とのコミュニケーションを増やす

家族から見た終活がどのようなものかを把握する

家族と一緒に終活について話せるように

2 地域と密着した相談窓口に

介護のみならず、葬儀・納骨の相談が気軽にできる法人に

信頼できる業者と連携し、安心して託せる関係性を

3 そうび苑に入ったら最期までという安心感

最期までその人らしく

法人として安心できる仕組みづくりを

 

ケアハウスが介護の入り口 終活のバトンをつなぐスタートに!

COLUMN 私が出会った「理想の終活」

元気なうちから、今できることを、楽しく自分らしく進める。佐藤さんが出会ったAさんは、それはそれは見事な終活をなさった方でした。

「しなくては」ではなく「やれることを楽しく!」

「そうび苑に入居されていたAさんは元々終活への意識が高かった方で、あんしん塾にも毎月参加されていました」と佐藤さん。

 自分でエンディングノートを仕上げ、居室の整理はもちろん、退去後の片付けを業者と生前契約するなど、自分の死後に家族やケアハウスのスタッフが困らないように気を配る。そして、仲間へのごあいさつとして 全員に贈り物を用意された上、「欲しいものがあったら持っていって」と自分の部屋を開放されました。

 本人が元気なうちに家族に託された願いは、家族から仲間へと受け継がれたのです。

 その見事な終活は、共に過ごしてきた仲間にとってのお手本となり、多くの心を動かしました。やらなくてはいけないではなく、今できることを楽しくやろうという姿勢。それは、そうび苑の職員にとっても、終活を前向きに考える大きなきっかけとなったのです。

元気なうちから、今できることを、楽しく自分らしく進める。「自分の最期はこうありたい」と願ったAさんの想いは家族や仲間に受け継がれ、まさに理想とも言える終活の姿を見せてくれました。

Tips

エンディングノートの作成

生前整理と生前契約

仲間への感謝
仲間が終活に対して前向きに

感謝の気持ちを込めて法人へ寄付金を


撮影・取材・文=山田芳朗/写真提供=ケアハウス そうび苑