福祉施設SX
J Sフェスティバル in山口 誌上レポート6 【実践研究発表】 第1分科会 分散会1 その人らしさを 支える介護の実践 ~根拠あるケアの展開~ (認知症対応/医療・介護連携、看取り)

日常のケアから 人生の最終章までを支えるために
冒頭を飾ったのは、▶︎介護老人福祉施設手稲つむぎの杜(北海道/髙澤美里)。「絶対家に帰りたい」と題した発表では、“在宅復帰は困難”とされた90代夫婦の現実に向き合い、日常生活の介助や各種サービス調整などに取り組みながら在宅復帰につなげた事例を報告。「特養だからできることを模索、実践していきたい」と今後の抱負を語りました。次いで登壇した▶︎特別養護老人ホーム 勝田三思園(青森/高橋進一)は「排泄エコーで看取りケア向上の実践」を発表。排泄支援に超音波診断装置(エコー)を活用する独創的な手法により、尊厳ある排泄と看取りケアの質向上を実現した事例を提示しました。「エコーで直腸内の便の有無などをチェックすることで、漫然と刺激性下剤を使用することがなくなり、自然排便につながった」と成果を述べました。3番目となる▶︎特別養護老人ホームせきこもれび(岐阜/森 千鳥)の「特別養護老人ホームにおける看取り介護ケアの充実を目指して」では、看取り介護ケアにおける介護職の困難をアンケートで可視化。「多職種で意見交換や振り返りを繰り返すことが、成熟した死生観や介護観などの醸成にもつながる」として、看取り介護ケアを職員教育や体制整備へつなげる意義を話しました。次いで、▶︎総合福祉施設なかやま幸梅園(愛媛/神川愛子)は「『心と体を健やかにする優しい排泄ケア』笑顔で過ごせる毎日」として排泄状況の分析と用品見直しにより、尿・便失禁を軽減する取り組みを報告しました。
休憩を挟んで後半は、▶︎特別養護老人ホームエル・グレイス六甲(兵庫/西川沙羅)が登壇。「法人理念を日々のケアにどのように展開していくか」をテーマに、法人理念を現場実践へ結びつける道筋を示しました。続いて、▶︎特別養護老人ホームるり苑(熊本/安達諒平)は、「心を動かし、意欲を引き出す『化粧療法』」を通じて、BPSD軽減と意欲・ADLの改善を科学的に提示し、生活の彩りが回復する過程を共有。「化粧をする行為で五感を刺激することでご利用者の脳が活性化され、認知機能の改善が見られた」と、その意義を総括しました。最後に、▶︎特別養護老人ホーム石内慈光園(広島/白川ゆかり)が「一人ひとりの看取り、ここでよかった」と題して、家族と職員双方の不安に寄り添う看取り体制を提案しました。 審査の結果、排泄エコーという新発想で尊厳ある排泄から看取り・日常ケアへと波及効果をもたらした勝田三思園と、多職種で協働し「90代でも在宅に戻れる」という希望を現実として示した手稲つむぎの杜が奨励賞を受賞。多職種連携のもと化粧という日常行為を“生きる力”へとつなぎ、成果を明確に提示したるり苑が優秀賞を受賞しました。
撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり