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老施協ダイジェスト

「プラス9%の介護報酬改定の実現」を厚生労働省に要望 各地の老施協・デイ協による要望活動の成果を力に/物価高騰と賃上げに対応するため プラス9%の報酬改定の実現を!

2023.12 老施協 MONTHLY

「プラス9%の介護報酬改定の実現」を厚生労働省に要望各地の老施協・デイ協による要望活動の成果を力に

POINT

  1. 物価高騰と賃上げに対応するためにはプラス9%の報酬改定の実現を
  2. 各都道府県等老施協・デイ協からのバトンを受けて全国老施協が申し入れ

 全国老施協は、令和5年11月17日に、「令和6年度介護報酬改定率に係る要望」(内容は下記)を厚生労働省の間隆一郎老健局長に提出した。

 大山知子会長は、これまで全国で広がっている各都道府県・指定都市の老施協・デイ協による「地域の福祉・介護を守る」活動について、各地の国会議員等288名に対して、介護事業者の現状を訴え、要望を伝えてきた実績を併せて報告した。「ここまで大きな活動になったのは全国の介護現場の厳しい状況の表れ」であること、その背景にある現場の危機意識について訴えた。現在議論が進んでいる令和6年度介護報酬改定については、「プラス9%の引き上げか、または物価・賃金スライドで毎年見直すシステムを考えていただきたい。ここまで上げていただかなければ施設経営の継続が危ぶまれる事態だ」と強く訴えた。

 間老健局長は、「すごい力だ。介護にここまでの応援団を作った全国の皆さまに敬意を表する」と各都道府県等老施協・デイ協のこれまでの活動を大きく評価した上で、「いただいた件を踏まえてしっかりと議論させていただきたい」として意見交換を締めくくった。

要望書の内容

 高齢者福祉介護施設・事業所は、いわゆる2040年問題を控えて多様な地域特性の変化に応じて生産性向上や担い手の確保等の対応をすすめ、地域の介護と福祉を守っていかなければなりません。

 一方、足元では長期化する新型コロナウイルス感染症及び物価高騰の影響で高齢者福祉介護事業の経営が厳しさを増す中、物価高に対応する賃上げ機運の高まりにつれて他業種へ人材が流出するなど、人材難に拍車がかかっております。

 全国老施協の収支状況等調査によれば、令和4年度(速報値)の特養の経常増減差額比率 (平均値)は、調査開始以降、初めてマイナスに陥り、また、赤字施設の割合が半数を超えるに至りました。もはや、法人(施設)の経営努力だけでは限界に来ており、危機的な状況にあります。現況のままでは事業継続が危ぶまれ、今後、介護事業を休止・廃止する事業者の増加が危惧されます。そうなれば地域での介護サービスの必要量を充足できない、いわば地域の介護崩壊ともいうべき緊急事態を招きかねない状況に陥ってしまいます。

 このような現下の危機的な状況を鑑み、令和6年度介護報酬改定においては、以下のことを要望いたします。

物価高騰と賃上げに対応するため、プラス9%の報酬改定を実現すること

写真左から、田中雅英副会長、そのだ修光常任理事、間隆一郎厚生労働省老健局長、大山知子会長、里村浩常務理事

物価高騰と賃上げに対応するため プラス9%の報酬改定の実現を!

今回要望した「9%」の考え方については、下記表の通り。全国老施協「収支状況等調査」(令和3年度分)の特養費用割合をベースに、経費に掛かる物価高騰分には日銀のデータと消費者物価指数を、人件費にかかる賃上げ分には連合のデータを加味して算出した。令和6年度分からの3年間、介護事業所が物価高騰に対応し必要な人材を確保して、経営を継続していくのに必要な数値である。

※1 全国老施協「収支状況等調査」(令和3年度分)

※2 日銀「経済・物価情勢の展望(2023年10月)」消費者物価指数(除く生鮮食品)政策委員見通し中央値の2024年度と2025年度の2か年平均

※3 連合「2023春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について」組合員数300人未満定昇相当込み賃上げ

※4 社会保障審議会介護給付費分科会(第223回)・厚生労働省「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金の推移」を基に作成

JSフェスティバルin岐阜(R5.11.29)において、介護報酬改定に向けた「地域の介護と福祉を守る活動」緊急報告を行いました。緊急報告の模様はYouTubeにてアーカイブ配信していますので下記URLからご視聴ください。

https://x.gd/JU9tN


取材・文=早坂美佐緒(東京コア)