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特集(制度関連)

トリプル改定に向けて議論が進む 介護報酬改定の今

2023.12 老施協 MONTHLY

診療報酬、障害福祉サービス等報酬とともにトリプル改定となる令和6年度の介護報酬改定。より良い改定のために議論が繰り返されており、状況は日々変化している。今回は全国老施協としての要望と、11月25日時点の厚生労働省・介護給付費分科会での議論のポイント、今後の注目点などを古谷忠之参与に解説してもらう。



古谷忠之参与

公益社団法人全国老人福祉施設協議会参与。社会福祉法人邦知会 法人本部長/特別養護老人ホームハーモニー広沢、ケアハウス ハートフル広沢 施設長

厳しい経済状況を打破する介護報酬改定を目指す

 かねてから厚生労働省社会保障審議会・介護給付費分科会で、令和6(2024)年度介護報酬改定への議論が進んでいる。今回は、日々変化している介護報酬改定の現在(11月25日)の状況や問題点、注目ポイントを紹介する。

 これまでもお伝えしてきたように、来年度の改定は、診療報酬改定、障害福祉サービス等報酬の改定が重なる6年に一度の「トリプル改定」となることからも、これからの介護業界の行方を大きく左右する重要なポイントとなるのだ。

 そんな中、全国老施協では8月7日に厚労省老健局長に向け、大きく6つの重点要望を提出した(詳細は下記『全国老施協の重点要望』参照)。

 要望書は分科会の資料としても提出され、10月、11月にもさらに詳細な要望を同じく老健局長宛てに提出している。こうした要望の意図について、委員として介護給付費分科会に参加している全国老施協・古谷忠之参与は語る。

「現在、取り巻く経済状況は非常に厳しいものがあります。全国老施協が行った令和4(2022)年度の『介護老人福祉施設等収支状況等調査』の速報値によると、特養は62%で赤字となりました。しかも、新型コロナウイルス関連や物価対策の補助金を含めても51%が赤字という結果でした」

 下に示したグラフは、同じ全国老施協の調査で、補助金を除いたサービス活動収益対経常増減差額比率を示したものだ。2022年は特養でマイナス2.8%、デイサービスでマイナス5%を記録。

「また、厚労省が発表した介護事業経営実態調査でも特養はマイナス1.0%、老健がマイナス1.1%で、特に特養では調査開始以来初の赤字に転落しているのです」

 その理由として、コロナ禍、さらには物価高騰と、日本の経済状況が大きく影響しているという。

「前回(2021年)から比べてもインフレが急速に進み、水道光熱費など施設運営におけるコストも併せて上昇しています」

 施設の支出については令和2年度と令和4年度(共に4月~翌2月)を比較すると、電気代で約42%、ガス代で約27%、燃料費で約10%の増加が見られた。

「こうした状況を踏まえ、来年度の介護報酬改定は今後の安定した施設運営、介護の未来を考える上で、非常に重要だと考えます」

サービス活動収益対経常増減差額比率(補助金を除く)の推移

全体的に年々、下降してきている収支。新型コロナウイルス感染症の影響で、デイサービスも2021年からマイナス収支となっていたが、2022年にはついに-5.0%、さらに特養においても記録を取ってから初となるマイナス収支になった。

出展:全国老施協「介護老人福祉施設等収支状況等調査」


ここだけ押さえたい!
改定の気になる3つのポイント

1 特別養護老人ホームの在り方

「骨太方針2023」において医療と介護連携の推進を強調した政府。特に11月16日に行われた分科会では、厚労省からドラスチックな案が出された。それは特養を含む介護保険施設において、1年間の経過措置を設けた上で協力医療機関の確保を義務化するというもの。全国老施協としては、早急過ぎる上、過疎地や離島などの実情を踏まえてその土地に合わせた対応が必要と反論。特養が安定した福祉社会のとりでとなる最も適した施策とは何かの議論を進めている。

2 通所介護所での加算の見直し

11月6日の分科会では、通所・訪問介護についての論議となり、訪問介護の同一建物減算の拡充および居宅介護支援に同一建物減算を導入する案が出された。一方で看取り期対応への新加算、入浴介助加算の見直しなど、需要の高いサービスへの改善策が図られた。また注目されていた訪問・通所を組み合わせた、介護保険の新たな複合型サービスの内容も明らかに。定員は29名、要介護度別の包括報酬による、地域密着型サービスとなる提案だが、反論も出ている。

3 地域包括ケアシステムの深化・推進

介護報酬改定にあたっての基本的な視点として、厚労省は「地域包括ケアシステムの深化・推進」を掲げている。その一つがポイント②でも述べた新たな複合型サービスだが、経営上のメリットが少ないなどの問題点も多い。さらには、認知症がある利用者への積極的な介護従事者等の対応力向上に向けた取り組みを進めることを挙げていることから、全国老施協をはじめとする諸団体からも、認知症ケアへの評価を充実させ、重度の認知症入居者への手当を求める声が挙がっている。

介護の未来に向けた施設の特性に応じた議論を

 特養の運営費用の比率は経費が32.9%、人件費が67.1%を占めている。全国老施協は、前者では日銀の物価見通しを、後者では春闘の賃上げ率を踏まえ、合計プラス9%になるように報酬改定を求めている。

「現在、報酬基準上の人件費率は介護職員以外の給与費が除外されているので、その是正も求めています。また施設を取り巻く社会状況に対し、臨機応変な対応を望んでいます。これまでの介護保険制度はデフレ下の経済状況で運用されてきました。しかし、インフレ化した物価の変動に追いついていない現状があります。加えて3年に一度の改定では、その時々の実情に合わせることは難しい。よって経費の内容に応じて、改定の中間年に賃金・物価上昇率の変動でスライドできるようなシステムを提案しています。食費・居住費に関する基準費用額も同様です」

 安定した施設運営は、介護人材の確保にもつながってくる。

「運営側もできる限り、介護従事者の処遇を改善する努力を行っています。しかし、その原資が不足してきている状況です。人材流出を防ぐためにも、まずは各サービスの基本報酬を引き上げることが重要だと、強く主張しています」

 報酬改定において、一律改定の議論だけではなく、現場に即した柔軟な視点が必要だと古谷参与。中でも、定員30人の小規模特養を考える上で重要だという。

「小規模特養は、特に離島・過疎地域などにおけるセーフティネットとなっています。それ故に経営を成り立たせるのが困難な面も否めません。そうした施設には特性に応じた評価の引き上げ、一部の経営困難な地域に対する地域加算の創設、自治体による支援などでサービスを維持していくことが、地域包括ケアシステムのさらなる推進につながると考えます」

 特養の今後にかなり影響のある今回の改定。また通所介護の加算の見直し、認知症ケアへの評価を含めた地域包括ケアシステムの在り方など、議題は山積みだ。


PICK UP 特別養護老人ホーム
医療機関との連携強化

医療機関の確保が最優先 まずは努力義務にするべき

「骨太方針2023」でも強調されていたが、政府は医療と介護の連携を推進しており、今回の介護報酬改定でも、活発な議論が進められている。中でも特養は2015年の介護保険制度改正以降、入所者が要介護3以上と定められており、医療との連携は大きな意味合いを持つ、と古谷参与は言う。

「入所者の日常的な健康管理や療養上の指導のため、配置医師を置いています。そのうち9割を超える施設が非常勤医師。こうした健康管理の域を超える治療が必要な場合は、外部の医療機関を受診したり、入院する形を取っています」

 しかし今後の特養では、認知症や専門医療、さらには看取り対応、緊急時の対応も重要視される。

「とはいえ配置医師は非常勤の場合が多い。委託ですから人数も時間も施設によって違います。あとは報酬のルールも煩雑で、健康管理・指導までは介護報酬でも、医師が投薬や検査をしたりする場合には診療報酬の範囲になる。高齢化社会が進む日本において、医療と介護の連携は不可欠なものです。それだけに介護保険の施設で担うべき範囲を明確にし、診療報酬との住み分けなど特養の医療アクセスの向上を目指すべきです」

 その上で、11月16日に行われた分科会で、厚生労働省が特養・老健・介護医療院の介護保険施設において、協力医療機関の確保を1年間の経過措置を設けて義務化する案が提出された。医療機関の要件は「入所者の急変時などの際、医師か看護職員が夜間休日を含め相談対応する体制」「診療の求めを受け、夜間休日を含め診療可能な体制」「療養を行う患者が緊急時に原則入院できる体制」という3つを満たすものと明示されている。

 これに古谷参与は一定の理解を示しながらも、一律の義務化という部分に関しては疑問を呈する。

「トリプル改定のタイミングだからこそ、新たな体制を取りやすいと理解できますし、連携を深めることは非常に良いことだと考えます。しかし、1年間の経過措置というのは短過ぎますし、要件も厳しいものです。施設によっては義務が果たせず、運営基準違反となってしまう可能性もあります」

 その上で、地域差などの個別の事情を勘案するべきだ、と語る。

「例えば過疎地や離島においては、既に病院・診療所も少ない地域もあるわけです。先に挙げた小規模特養など地域包括ケアシステムを支えるべき施設の多くにとって、あまりに厳しい条件です。さらに中小程度の都市でも緊急医療の資源が切迫している地域も見られますし、そもそも現状の協力病院がこの義務化によって契約できなくなってしまう恐れもある」

 当然、施設との連携を“しない・できない”医療機関も存在する。今後も話し合いは必要だ。

「まずは義務化ではなく努力義務にしていただき、医療ソース確保の困難な地域のあぶり出し、市町村・医療機関側との関係など、最も理想的な連携に向けた議論を深めた上で、ルール作りをするべきです。このことは、全国老施協としてこれからも訴えていく所存です」

特養における協力医療機関との連携内容

協力医療機関の緊急対応ありは、特養全体では23.3%を占めている。その中で連携内容は、入所者の診療(外来)の受け入れが最も多く、次いで入所者の入院の受け入れと続いた。ちなみに緊急の場合の対応(配置医師に代わりオンコール対応)は17.4%であった。

出展:令和4年度 老人保健健康増進等事業「特別養護老人ホームと医療機関の協力体制に関する調査研究事業」


PICK UP デイサービス
加算見直しと今後の動き

物価高騰・コスト増を踏まえ入浴介助加算の要件緩和を

 11月6日に行われた分科会では、訪問介護・通所介護についての議論を中心に交わされた。

 厚労省からは、訪問介護の同一建物減算の拡充、居宅介護支援への同一建物減算導入についての提案が出た。

「有料老人ホームなどで、ケアマネジャーや専属のヘルパーがその建物の入居者にサービスを行うケースなどにおいて、移動がない分を減算しようという意味合いを持つものだと考えられます。ただ、コスト=移動時間という概念にされてしまうのは、現場従事者の実情に合わない。サービス提供が苦しくなるような状況に追い込まれることは避けるべきでしょう」

 一方で、看取り期の利用者に対してのサービスにおける加算評価という案も提出されている。

「看取り加算については拡充していくべきだと考えます。特養においても看取りケアは増加していますが、今回の議論で目立ったのは、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)に基づいた看取りへの対応と、その評価です。本人の意思を重視して、病院・施設ではなく自宅で最期を迎えたいという方も増えています。そういった選択肢をすくうためにも、個人的には有効だと考えています。ただ看取りの基準の統一は必要と思います」

 そして、通所介護の議論として注目されたのが通所介護の入浴介助加算である。厚労省の案としては、入浴介助加算(ⅰ)について、研修内容を算定要件に組み込むこと、上位となる加算(ⅱ)の要件を明確化することを挙げている。

「今回は最初にお話ししたような物価高騰、さらには光熱費、水道代の上昇からくるコスト増も大きい状態ですから、そこからまず見直しを図っていただきたいというのが正直なところです。その上で、入浴介助というサービスが、どれだけ大変な労働かという議論も当然重ねられています。現在の加算(ⅰ)、つまり入浴介助だけならば40単位=400円の報酬ということになりますが、これは東京の銭湯の価格(520円)より安い。在宅での入浴自立を考えた加算(ⅱ)55単位が前回からできましたが、要件が非常に細かいこともあって算定率は1割強といったところで推移しているのが現状です」

 コスト高で、入浴サービスを提供するごとに赤字になりかねない。

「特に通所に関しては、機能訓練の目的で通われている方が多く、在宅でお風呂に入るのが不安な方のために必要なサービスです。また、加算(ⅱ)に関しても基準を分かりやすくして、算定率を上げていきたいところです」

 だが、この根本となる加算(ⅰ)の算定に関わる「研修」には、一抹の不安を感じる、と述べる。

「研修を受けるのは重要なことです。しかしこうした研修自体が増加傾向にあり、職員のオーバーワークにもつながりかねません。また認知症加算では、認知症介護実践者研修など定員オーバーで、受けたくても受けられないという状況も起きています。まずは、研修を受けるための環境整備や内容の整理をすべきだと訴えています」

入浴介助技術研修の実施状況

厚労省の案では、通所介護事業所において、入浴介助加算(ⅰ)で6割台となっている入浴介助研修を算定要件に組み込むことで、1割強に落ち込む加算(ⅱ)の要件を緩和し、算定率を上げるもくろみだ。しかし研修の順番待ち、職員の負担増といった問題も懸念される。

出展:令和5年度老人保健健康増進等事業「通所系サービスにおける入浴介助のあり方に関する調査研究事業」(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)より作成


まとめ 介護報酬改定
これからの動き

地域包括ケアシステムの中核となる、理想の特養へ向けての報酬改定を

介護業界崩壊の危機を防ぐ基本報酬アップの実現へ

 新型コロナに続いて物価高の影響が直撃している介護業界の苦境を示すデータがある。東京商工リサーチの調べでは、2022年度の老人福祉・介護事業者の倒産件数は、介護保険制度開始以降最多の143件となり、うち通所・短期入所介護事業が69件、訪問介護事業が50件を数えている。また福祉医療機構によると、2021年度の通所介護の経営状況は46.5%の事業者が赤字と出ている。

「地域包括ケアの理念を考えたときに、黒字が出なくても簡単にやめられない状況があります。その上で経営側は、介護人材の不足が叫ばれる中で頑張る介護従事者の皆さんに、できる限り報酬を上げていきたいというジレンマがある。はっきり申し上げれば、現状は業界として大変な危機を迎えています。厚労省にもこの危機感は伝わっているはずです。それだけに、全国老施協として今回の介護報酬改定で、基本報酬のアップを掲げ議論しているのです」

特別養護老人ホームの経営現状

地域包括ケアの中核となるべき特養だが、物価高や光熱費の上昇といった経済状況が大きく響き、2022年度は特養の62%で赤字となった。これに新型コロナウイルス関連などの補助金を含めても51%が赤字という、厳しい現状になっている。

出展:全国老施協 令和4年度「介護老人福祉施設等収支状況等調査」(速報値)

 こうした状況を踏まえ、今後の特養の在り方を、古谷参与は語る。

「今回の改定議論を見ても、地域包括ケアシステムを必要な方々にどう提供するかという根底は医療・介護関係者と共に持っていることは明らかです。その中で私は、特養という存在は、地域においての社会資源だと考えています」

 頼れる特養があること自体が地域のセーフティネットとなる。そのためにも、どれだけサービスの質を高めていくかが大切になっていく、と古谷参与は続ける。

「特養においては、約9割以上の入居者の方が認知症の何らかの症状があり、BPSD(行動心理症状)を発症されている方も多くいらっしゃいます。そのため、しっかりとした認知症に対する専門的な対応ができる施設でなければなりません。また機能訓練に関しても、日常のリハビリをしていく体制が整えられる場所であることが大事。これらを遂行し、施設の信頼度を高めていくことも重要です」

 それは、自身が特養の施設長である経験から出た思いでもある。

「トイレの介助を受けるようになったときに、介護施設を利用する方が増えるというデータがあります。もちろんそうならないのが理想ですが、“うちの地域にはあの特養があるから、まだ在宅で頑張れる”という思いを持っていただけるような存在、つまり地域包括ケアシステムの中核となることが特養にとって理想の姿だと考えます。そのためには今回、大幅なプラス改定が必要となってきます」

 さまざまな問題点が明確化され、さらなる意見が飛び交っている介護報酬改定の議論。日々変化しているため、今後も注視が必要だ。

介護報酬改定率の推移

2000年に介護保険制度がスタートして以降の改定率グラフ。これまではデフレ基調の経済状況が続いていたが、この3年の間にインフレ基調に。施設運営費の高騰もあり、全国老施協では9%の大幅プラス改定を要望している。


全国老施協の重点要望

全国老施協は8月7日、厚労省・間隆一郎老健局長宛てに「令和6年度介護報酬改定に向けた要望」を申し入れた。さらに10月25日にも間老健局長宛てにさらなる要望書を提出。その上で11月17日に間老健局長にプラス9%の報酬改定を要望した。ここでは要望の骨子ともなる8月7日の要望書の内容を紹介していこう。

1 インフレ経済下における報酬改定の在り方

インフレ経済傾向が続き、加えて政府の方針である構造的賃上げが実現されると、施設運営はさらに厳しい状況となる。ついては3年に一度の改定の中間年に賃金スライドおよび物価スライドを導入することを望む。さらに報酬基準上の人件費率から介護職員以外の給与費が除外されていることから、国にはモデル的な基準上の人件費率、経費率を示すことを求める。

2 介護従事者の処遇改善

今年度の春闘で、正職員・非正規職員共に大幅な賃金引き上げが実現。しかし翻って介護分野では、公定価格である介護報酬が収益の中心となるためその例に漏れ、異業種への人材流出が顕著となりつつある。ついては給与格差の是正のための原資確保を強く要望する。具体的には基本報酬の増額、処遇改善に関する加算で、介護職員以外の職種も対象とすることを求める。

3 食費・居住費に関する基準費用額の見直し

インフレ基調で光熱費の上昇などが起こり、施設運営に多大な影響を及ぼしている。利用者負担で対応すべき食費・居住費においても、食材料費をはじめ今後も広範囲にわたっての物価高騰が考えられる。よって介護報酬と同様に厚労相が定める基準費用額についても、利用者負担限度額は維持しながら、物価・賃金上昇率の変動でスライドする仕組みの導入を検討すべき。

4 複雑化した介護サービス体系の簡素化

介護保険サービスの報酬体系は複雑で、多くの利用者は理解できないままサービスを受けている。各種加算についても種類が多く、要件が細か過ぎるために、活用されないものもある。またサービス体系の改定のたびに混乱を起こすことからも、算定率が低い加算などを中心に見直しを行い、全体的に算定しやすく、現場に即した加算体系をすることで円滑な運営を図りたい。

5 特別養護老人ホームにおける医療アクセスの向上

中重度の要介護者を支える施設として特化された特養では、医療と介護の連携ニーズがより高い。だが配置医師はほとんどが非常勤で、緊急時などの対応も施設を取り巻く状況によって異なるのが現状。特養の行うべき健康管理および療養上の世話の範囲を明確にし、その範囲を超える対応について、配置医師と協力病院などの役割を再整理、体制強化を求める。

6 小規模特別養護老人ホーム(定員30人)の存続について

小規模特養は地域の介護福祉拠点としての重要な役割を果たしているが、法人の努力だけでは限界に達しているという現実がある。ついては、「地域社会を支えるセーフティネットの役割を評価要素に取り入れた単価引き上げ」「一部の経営困難地域に対する地域加算の創設」「特殊地域や個別事情に対応する自治体独自の支援」という三階建ての仕組みを検討すべき。


構成=玉置晴子/取材・文=一角二朗/写真=PIXTA