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介護の心の 在り方を 著名人が語る!
オラキオ「私たち介護のこと知ってます。」~お笑いを通して、介護する側の心をケア
2022.05 老施協 MONTHLY
介護を必要とする高齢者を持つ家族も、施設や在宅で働く介護職も、
日々のケアを行いながら心を一定に保つのは難しいとされる介護の現場。
今回は芸能界の仕事の傍ら、在宅介護、介護福祉士としての施設勤務、
そして、介護職のケアを行うワークショップ活動経験のある三者から、
取り組み方や心の在り方、何を支えに活動してきたのかを伺った。
お笑いを通して、介護職の心をケア
オラキオ
介護する側が楽しい気持ちになったら結果、
介護される側にも伝わると思うんです
オラキオ
Profile●おらきお=’77年9月5日生まれ、佐賀県出身。お笑い芸人の活動と並行して介護施設に勤務。調理師免許も保有している。また、俳優としても連続テレビ小説「ひよっこ」(’17年NHK総合ほか)、「ルパンの娘」(’19年フジテレビ系)などに出演。現在、「未来への10カウント」(テレビ朝日系)にレギュラー出演中
北欧の雑談文化を取り入れた新しい取り組みで離職率低下へ
「元々は体操選手の田中光さんのお友達で、特別養護老人ホームの施設長をされている方に言われた言葉がきっかけでした」と語るオラキオさん。お笑い芸人や俳優としての芸能のお仕事の傍ら、介護人材の定着を図るサービス「kaigo FIKA」で介護士のケア活動をしている。FIKAとはスウェーデンの言葉で休憩やコーヒーブレークの意味だ。
「施設長から『芸能人が何か事件を起こすと、禊のように介護士として施設で働くのに抵抗がある』という耳の痛いお言葉をいただいたんです。そして、介護現場で働く方の離職率が高いことも教えていただき、何かできないかと考えているときに知人の紹介でFIKAを知ったんです」
活動内容はとってもシンプル。オラキオさんは介護施設で働く職員の方々と会話をするだけ。
「現在はコロナ禍ということもあって、月に1回、介護施設の皆さんとオンラインでお話ししています。僕はお笑い芸人だから、相手をどこかイジれないか(笑)、探りながらツッコミを入れたりしています。介護施設の福利厚生としての取り組みなのですが、僕と話して楽しかったと思ってもらうだけでもいいし、こういうガス抜きをしてくれる会社なら続けたいなと離職を思いとどまってくれたらいいなと思います」
その会話のほとんどが、実務的な内容ではない雑談だという。何げない会話だからこそ、この活動の重要性を感じているようだ。
「お話しする相手に若い介護士さんが多いので、僕が出演したテレビ番組の裏話なんかも、よく話したりしています。相手が興味のある話題や知りたい事を探って、それについて積極的に会話することで、相手の新しい面や笑顔が引き出せるので、そこがお笑い芸人である僕の強みと感じています。でも、新人の介護士の方は、学んできたことと現場の違いに戸惑っていたり、人間関係での悩みも抱えているみたいで。介護士さんは日常的な生活に関する業務が多いので、僕との会話で非日常を楽しんでもらったり、笑ってスッキリした気持ちになってもらえたら、結果、介護される側にも伝わるし、気持ちのいい介護環境になると思うんです。そして介護士さんが次の月まで頑張ろう、となってほしいので、定期的に続けることが大事だと思っています」
介護現場に心地よい空気を流すオラキオさん。自身も週に一度、介護の現場で働いているという。
「皆さんのお仕事を理解したいですし、経験もないままじゃ説得力がないと思うんです。実際に利用者と触れ合うことでこの仕事の大変さや素晴らしさも感じています。でも、最初は『こんにちは○○さん!』とお声掛けすること自体が恥ずかしくて(笑)。声のボリュームはどのくらいがいいのだろうとか、なれなれしくしたらまずいかなとか考えてしまって。芸人スイッチを入れて頑張っています」
そんなオラキオんさんは、高校時代、体操競技で九州チャンピオンに輝くほどの実力持ち主。腰痛予防や介護のボディーメカニクスについては自信満々!?
「体操をやっていたので体幹がしっかりしているのか、僕自身、腰痛はまだないですね。ただ、体操では技を成功させるために、どんな筋トレをしたらいいのか考えて体をつくってきたので、介護での体の使い方とは全く別物で…。まだまだ勉強中です!」
普段は悩みを聞くことが多い彼だが、自身も考えさせられた介護士の経験談があるという。
「利用者を施設でみとったお話をお聞きしたのですが、利用者の死はとてもつらく、ロスになることもあるようで。でもその方の人生の最期にお世話ができて『あなたのおかげですごく楽しかった』と言ってもらえたり、ご遺族に感謝されたり、他では経験できない仕事だとおっしゃっていました。僕はイヌを飼っているのですが、先に動物が死ぬのが嫌だから飼わないと聞くとそれは違うと思っているんです。動物を育て、その一生をみとるまでの命の経験はとても大切なことで、子供のうちから勉強すべきだと、強く思っています。ましてや人の生死を目の当たりにし、後悔したり悩んだりできる介護という仕事は、とてもやりがいがあると思います」
〝三足〟の草鞋を履くオラキオさん。今後の展開も楽しみ!
「お笑い芸人と介護に関する仕事をバランスよく、ずっと続けていきたいです。そして、俳優も(笑)。芸人の僕にとっては介護士さんのケアは一生の仕事にしていきたいと思っています。さらに僕がメディアで売れるほど介護人材へのアプローチも良くなるでしょうし、両輪で成長していきたいと思っています。新規の介護人材も増えてほしいですし。FIKAもメンバーも増やそうと、今10人に声を掛けています。芸人チームの輪を広げていきたいです!」
撮影=磯﨑威志/取材・文=一銀海生
オラキオさんの心を動かしたmessage
失敗や事故を怖がって相手を腫れ物のように扱わないで
ベテラン介護士の方に言われたのですが、未熟な介護技術を不安に思って事故や失敗ばかり気にし過ぎると、相手は心を開かず疲れてしまうそう。介護される側が腫れ物のような扱いをされると一緒にいて気が休まらないとか。いかに相手の気持ちを察するかが大事で、思い切りやってもらいたいと言われました。お笑いも、お客さまの状態や気持ちを察してネタをします。相手のことを分かった上で、ケアを変えていくことは大切ですね!