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第3回 梅雨になるとイライラして機嫌が悪い・・・。こんな人にはどう対処する?
2022.06 老施協 MONTHLY
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
天気は体調と密接に関係
気分の変調をきたす原因は光
スカッ晴れだとやる気が出るが、曇りの日はいまひとつ。「頭痛がする次の日は決まって雨。気象予報士より当たる」なんてしたり顔で話す人もいるほど、お天気は私たちの体調と密接に関係する。とりわけ、「雨の季節」は鬼門だ。
「うちのチームリーダー、梅雨になるとイライラして機嫌が悪い。毎日地獄です。どうにかしてほしい」――。こう悲鳴を上げるのは介護士の花田さん(仮名35歳)。梅雨入り宣言を聞くだけで、今年も魔の季節が来た!と戦々恐々。
梅雨前線が日本列島に停滞すると、ぐずついた天気が続く。洗濯物は乾かないし、電車は遅れるし、傘は荷物になるし、不快・不満・面倒のオンパレードだ。ただし、気分の変調をもたらす原因は雨ではない。「光」だ。太陽が雲に隠れ、光が足りなくなることで、イライラしたり、気分が落ち込んだり、思いがけない変化が起きる。その鍵を握るのがメラトニン。太陽と大の仲良し、別名「睡眠ホルモン」だ。
メラトニンには、体内時計の機能や生体リズムをコントロールする役目がある。日中光を浴びるとメラトニンの分泌が減り、夜暗くなると増える。ところが雨が続くと、メラトニンの分泌量が変わり、生体リズムが崩れてしまうのだ。その結果、うつ状態に陥り、だるい、やる気が出ない、イライラする。日中ウトウトしてしまうのも日照不足が原因だし、無性に炭水化物が食べたくなるのも、光が足りないから。「ネコが寝てばかりいるときは雨、はしゃぎ回るときは晴れ」という俗説もあるように、ネコも人間も光にコントロールされているのだ。とはいえ、ネコの不機嫌は我慢できても人間のは勘弁。そこで不機嫌を予報して、イライラ注意報を発令してはいかが?
- その日の天気とリーダーの様子を1週間ノートに記録。
- 新聞の天気図をおのおのに貼る。
- 天気、不機嫌、天気図の関係から不機嫌予報にトライ!
- 不機嫌が予想されたら迷わずイライラ注意報を発令!
人間にとって 一 番のストレスは不意打ちを食らうこと。備えは最大の防御だ。当たれば「キタキタ〜」とほくそ笑み、ハズレたら「何かいいことあったのかな?」と会話のきっかけにしてみればいい。
たかが天気、されど天気。そして、もし、あなたがイライラで周りを不愉快にさせたときは、「ごめんなさい。光が足りないんですぅ」とちゃっかり天気を言い訳にしてみて。天気にはあらがえない。
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子