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北海道 社会福祉法人 さつき会 鷹栖町デイサービスセンター はぴねす 経営感覚をスタッフがつかみ 輝ける職場でさらなる飛躍を
独自の運営改善に着手しつつもコロナの直撃も相まって、利用者の低迷に直面していた「はぴねす」。新たなチーム体制の発足と、デイサービス事業継続等相談支援事業に参加することで、稼働率100%を実現した軌跡をご紹介します。
※「第4回全国老人福祉施設大会・研究会議〜JSフェスティバルin山口〜」優秀賞受賞施設を取材しています

常務理事・施設長
波潟幸敏さん

社会福祉法人 さつき会
鷹栖町デイサービスセンター
はぴねす
住所:北海道上川郡鷹栖町南1条3丁目2番7号
TEL:0166-87-3611
定員:34名(令和7年4月1日時点)
URL:https://satsukikai.or.jp/facility/20230927-5/
開設は1988年。北海道のほぼ中央、旭川市に隣接した自然豊かな鷹栖町唯一のデイサービスセンターが「はぴねす」です。住み慣れた地域で、安心して暮らしたいという利用者に寄り添い、自宅での生活がより豊かになるように支援しています。
経営感覚をスタッフがつかみ輝ける職場でさらなる飛躍を
デイサービスセンター「はぴねす」は「社会福祉法人 さつき会」が運営しており、同法人の施設長、そして、全国老施協の在宅サービス経営委員会の委員長を務める波潟幸敏さんが推進する「デイサービス事業継続等相談支援事業」は、経営改善を支援する取組です。
「一番の効果は、経営の感覚をマネジャークラスや現場の皆さんにつかんでもらうことですね。例えば、ある日の利用者が5人減ったとします。それに危機感を覚えるか否か?というのが経営感覚です」と波潟さん。
利用者が減れば収益が減る。減収となれば目指す介護ができないかもしれない。そして何より、利用者を元気にする機会が減ってしまう。
そういった経営感覚を全体で共有するために、何から始めればいいのでしょうか?はぴねすでは、改革に取り組む体制を強化。一丸となって取り組んだ結果、成果へとつながったということです。
「経営に行き詰まりを感じているのなら、全国老施協が実施している、デイサービス事業継続等相談支援事業を検討してください。参加された多くの施設が経営改善を達成されていますし、稼働率100%を達成したはぴねすは、成功例の一つです。その陰にはあくまで真摯に取り組んだリーダーたちとスタッフの努力があったことを忘れてはなりません。2年連続で離職ゼロという結果も、職員がやりがいを感じている証しだと考えています」
経営の改善と、一人一人が輝ける現場の実現。それは、はぴねすが到達した輝かしい成果なのです。



「断らない」と「稼働率100%」とは?

かつて苦しい状況だったはぴねすの経営。その立て直しは、管理者の谷さんと看護師の藤川さん、そして理学療法士の大矢さんという、新たなリーダー体制の構築から始まりました。
そして、デイサービス事業継続等相談支援事業への参加が、稼働率100%の実現へとつながったということです。
中でも、「断らない」と決めたことが大きかったといいます。
「全てを無責任に受け入れるという意味ではありません。安易にお断りするのではなく、何ができるか?を考えるということです」と谷さん。受け入れに前向きな姿勢と、受け入れられる力量を持った組織だったことが「断らない」を実現したのです。
もう一つ大きな指針となったのが「稼働率は最低100%」です。「100%というと『違法なのでは?』と聞かれることもありますが、ブレーキをかけるな、ということです」とお三方。利用者数は日々ばらつきがありますし、集計が完全に定員オーバーになったら定員増の申請をすればよい。満員を理由に一度でも断ったらケアマネジャーからの問い合わせはガクンと落ちるのです。100%を超えないようにお断りを続けていれば100%以下の稼働率が慢性化し、次第に利用者数が少なくても、法令遵守なのだからそれでいいという理由付けとなっていきます。それでは経営改善などできないという学びです。
どちらも、現場として貫くには簡単な指針ではありませんが、不退転の覚悟で臨んだからこそ開くことのできた経営改善の道のりなのです。
第4回全国老人福祉施設大会・研究会議 ~JSフェスティバル in 山口〜
実践研究発表 優秀賞受賞 誌上プレゼンテーション
デイサービス運営改善の軌跡 稼働率100%を実現!

社会福祉法人 さつき会
在宅介護支援課・課長
谷和仁さん
「私は、特別な経営知識があったわけではありません」といういち管理者が、仲間と共に稼働率100%を達成しました。
苦しい時期をいかに耐え、デイサービス事業継続等相談支援事業(以下、相談支援事業)の支援を受けながら続けた挑戦のプロセスをお届けします。
新体制の発足と相談支援事業への参加
利用者が低迷した時期(平成20年4月から令和5年4月)
下図は、平成20年から令和5年までの実利用者数です。平成25年は67名まで落ち込み、その後一時は持ち直したのですが、令和2年のコロナ流行で再び低迷しています。稼働が低く、収益も上がらず「仕方ない」という諦めムードがまん延していました。

改革のきっかけ
きっかけとなったのは、新主任と新リーダーを加えた新しいチーム体制を発足させたことと、相談支援事業への参加です。相談支援事業では、経営改善のコンサルティングや報告会を通じて、具体的な支援を受けました。
「デイサービス事業継続等相談支援事業」とは?
概 要
デイサービス事業所を対象に、コンサルティング、個別相談、報告会を通じて経営改善計画の策定を行い、具体的な成果が得られるように支援する。
対 象
「経営改善を志向」または「課題への解決策を打ち出せていない」デイサービスの経営層。全国の事業所が参加可能。
支 援
❶ 集団指導方式によるコンサルティング(計6回/月1回程度)
❷ 個別面談(1回)
❸ 報告会(1回)
内 容
❶ 活動計画の策定
❷ 活動計画の実行
❸ 進捗の共有・報告会の実施
❹ プロセスレポートの作成・提出
「相談支援事業」で学んだ行動指針
キーワード❶
断らない
キーワード❷
稼働率は最低100%
⬆︎相談支援事業で学んだ「断らない」は、改革において最も大事な指針であり、「稼働率100%」も経営への甘えを捨て去る覚悟そのものとなりました。
運用改善への5ステップ
STEP1:チームの土台づくり
運営改善は、一人では難しいと思います。私たちは、主任やリーダーにも相談支援事業に一緒に参加してもらい、法人理念を改めて共有することやゴールの設定、そして、会議や日々のコミュニケーションで収支の具体的な話をするようにしました。

STEP2:数字で見た現実と甘えを捨てる覚悟
収支シミュレーションでは、稼働率が78%から100%に上がると年間収入が1,750万円増え、入浴介助加算をIからⅡに変えると年間95万円の増収になることが分かりました。デイ単体ではなく、ケアマネジャーも巻き込み、法人全体で加算を取ることを目指しました。
加算取得の意識改革
法人内のケアマネジャーと
加算による収益効果を共有
▼
デイ単体ではなく
ケアマネジャーも巻き込む体制を構築
法人全体で
「加算を取ることの意義」
を共通認識に!

STEP3:ケアマネジャーの本音を調査
ケアマネジャーの本音を知るために、アンケートを実施、返信用封筒を付けて無記名で返信してもらいました。この結果、理学療法士の配置と柔軟な個別対応が強みであり、利用者の様子がケアマネジャーに伝わっていないフィードバック不足が弱みとして浮かび上がりました。

強 み
■ ニーズに応じた柔軟な個別対応
■ 理学療法士の配置による高い満足度
■ ケアマネジャー・家族から高評価
個別対応とリハビリ支援の充実
・ 営業時にリハビリの説明を重点的に行う
・ 要支援者も入浴可能であることを宣伝
弱 み
■ モニタリング表が分かりにくい
■ デイでの利用者の様子がケアマネジャーに伝わらない
ケアマネジャーへのフィードバック不足
・ デイでの様子や欠席理由をこまめにフィードバックする
STEP4:「断らない」文化の定着と仕組み
「断らない」は、確かにとても難しい判断でもありますが、自分たちで決めたルールということでもあり、改革の大事な部分ですので、大切に守ってきました。ケアマネジャーからの相談を「まず受ける」ことや、さまざまなニーズについて「できる方法を考える」、そして難しい事例は「体験利用」を勧めることが基本となります。

[ケアマネジャーからの相談事例]
①「基本の情報が(ケアマネジャーが忙しくて)ほとんどないのですが……」
▶ 過度に情報を求めない
▶ 「今ある情報だけで何とかする」を基本にして受け入れる
▶ デイで情報収集し、ケアマネジャーへ伝える(送迎時や直接電話で家族に確認、またはデイ利用時に本人に確認する)
②「帰宅願望の強い利用者ですが、対応得意ですよね?」
▶ 認知症の種類に合わせて、適切な対応を取る
➡特に多かった困難事例は前頭側頭葉型認知症の様な症状の方
▶ 対応:代替行動の提示・スケジュール確認・帰宅願望のスイッチを探る等で対応
STEP5:外部への発信と関係作り
私自身も外部への発信、つまり「営業」は苦手でしたが、月に一度は必ず営業しようと決めると、ケアマネジャーとの関係性もできて紹介も増えました。手ぶらではいけませんので手作りチラシを持って、「良かったら紹介のときに使ってください」という感じで訪問していました。
❶営業範囲の居宅をピックアップ
❷新しいチラシを毎月一枚作成
❸手作りのチラシを持参し、営業範囲の居宅を月に一度回る
❹先方の都合も考えできるだけ短時間にまとめる

5ステップの効果
STEP1〜STEP5を業務に落とし込む
チームの土台づくりから数字を確認して経営感覚を持つことやケアマネジャーとのコミュニケーション、そして「断らない」から営業まで。それぞれのSTEPを業務に落とし込みます。進むだけではなく、時には原点に戻って再確認、トライ・アンド・エラーの繰り返しです。

稼働率100%へ!
取組を続けた結果、令和6年11月には稼働率100%を超えるようになりました。「断らない」や営業を継続できたのは職員全員で共通認識を持ち続けたからです。平成25年度はマイナス500万円だった営業利益は1,500万円の黒字にすることができました。

利用者・家族の満足度もアップ
利益増だけではなく、利用者・家族満足度もアップしました。令和3年度と令和6年度に調査した満足度を比較すると、日々の積み重ねが、利用者の満足度につながっていることが分かります。

「選ばれるデイ」として、着実に信頼を得られるようになった
■ 令和6年11月に稼働率100%を突破
■ 令和7年度も稼働率100%超を維持
定員を30名から34名に拡大
稼働率100%を達成するための条件
稼働率100%の達成は、管理者と主任、リーダーをはじめ職員全体で共通認識を持つことが必要です。「断らない」を続け、「経営的視点」と「できる方法を考える」ことで成果は付いてきます。失敗を恐れず、課題に取り組むことで運営改善の道は開けるはずなのです。

高稼働の中で働く職員の反応は?
忙しくなると、気になるのは職員の様子ですが、「疲れた」や「利用者が多過ぎて業務が回らない」といった反応はなく、むしろそれぞれの職員が自発的にサービスの向上を考えてくれました。令和7年4月まで、離職者ゼロを2年間継続しました。

撮影・取材・文=山田芳朗/写真提供=鷹栖町デイサービスセンター はぴねす
全国老施協
デイサービス事業継続等相談支援事業
▶ 経営課題を捉え、改善への方策を学習する
▶ 受講者による経営改善計画の策定を支援
▶ 半年間(6カ月間)、毎月1回の研修会を実施