福祉施設SX
第25回 東京都 TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会

毎月、全国の老人福祉施設をご紹介している本連載ですが、今回は、「第4回全国老人福祉施設大会・研究会議~JSフェスティバルin山口~」における実践研究発表で最優秀賞を受賞したTOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会についてご紹介いたします。
東京都内の10法人が連携して介護職の魅力を発信 TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会とは?
TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会は、東京都内で福祉・介護事業を展開する社会福祉法人の有志が連携、福祉・介護職の魅力を世の中に発信し、介護業界全体の人材確保や育成、定着を図ることを目的に、2020年に発足しました。
その背景には、1施設だけではさまざまな対応力に限界があるため、多様な法人が協働することで支援の質を高める狙いがあります。現在は10法人が加盟し、同じ意志を持つ仲間で一致団結して課題に取り組んでいます。
活動内容としては、福祉・介護のお仕事相談会や現役職員による座談会イベント、介護体験教室、合同就職フェアなどの開催、介護サービス事業所見学ツアーの企画、学校などで開催されるイベントへの職員・講師派遣などを行ってきました。
また、X(Twitter)やInstagramなど公式SNSを通じて、その活動内容のほか、職場の魅力や現場の雰囲気を積極的に発信。
これらの取り組みは、東京都社会福祉協議会が主催する研究大会「アクティブ福祉in東京’24」において優秀賞を受賞。さらに、全国老人福祉施設協議会が主催する「第4回全国老人福祉施設大会・研究会議~JSフェスティバルin山口〜」における実践研究発表で最優秀賞を受賞するなど、介護業界で高い評価を得ています。
TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会 加盟法人
社会福祉法人サンフレンズ
◼︎法人本部所在地:東京都杉並区上井草3-33-10

社会福祉法人大三島育徳会
◼︎法人本部所在地:東京都世田谷区鎌田3-16-6

社会福祉法人東京都福祉事業協会
◼︎法人本部所在地:東京都北区王子2-19-21

社会福祉法人三交会
◼︎法人本部所在地:東京都目黒区青葉台3-21-6

社会福祉法人ファミリー
◼︎法人関東本部所在地:東京都足立区江北3-14-1

社会福祉法人ウエルガーデン
◼︎法人本部所在地:東京都足立区伊興3-7-4

社会福祉法人東京弘済園
◼︎法人本部所在地:東京都三鷹市下連雀5-2-5

社会福祉法人マザアス
◼︎法人本部所在地:東京都東久留米市氷川台2-5-7

社会福祉法人親和福祉会
◼︎法人本部所在地:東京都八王子市犬目町688-2

社会福祉法人泉陽会
◼︎法人本部所在地:東京都練馬区西大泉5-21-2

第4回全国老人福祉施設大会・研究会議 ~JSフェスティバル in 山口〜
実践研究発表 最優秀賞受賞 誌上プレゼンテーション
複数法人の協働による人材確保事業
〜都内10法人による就職フェアがもたらした効果〜
発表者:TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会 片桐恵子さん 平本穣さん
TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会が、第4回全国老人福祉施設大会・研究会議 ~ JSフェスティバル in 山口〜の実践研究発表において最優秀賞を受賞。ここに、その発表内容をダイジェストにてお送りします。


TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会 スタッフ・インタビュー

今回は、TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会に加盟している10法人の中から、現場で活躍している4法人5名のスタッフの方々にお集まりいただき、協力会の成り立ちや活動状況などについてお話を伺いました。
──この協力会が結成されたきっかけというのは、どのようなものだったのでしょうか?
佐藤
東京都高齢者福祉施設協議会というものがありまして、その委員をやっている者同士で日頃から交流がありました。その中で、平本さんと人材難で困っているだとか、就職フェアに高い料金を出してもなかなか人が集まらないとか雑談していたんです。そこで、だったら自分たちでやってみようかという話になりまして、そこから上司と相談して他の施設の方も誘ったのが始まりです。
平本
私たちの間では、その頃から人材確保は大きな課題でした。就職フェアなどに出展して高額な費用がかかる中で、そこに費用をかけるのであれば自分たちの施設のスタッフに費用をかけたい、という思いが強かったので、人を集める企画を自分たちでやろう、と佐藤さんと実現していきました。
田中
私は佐藤からすぐに相談されまして、ぜひやりましょうと言いました。元々世田谷区内の施設合同で就職フェアを実施した実績があったのですが、なかなか意思統一がかなわず、活動が停滞していたところだったのを、平本さんと佐藤のお話が出まして、思いの強い者同士でやってみようということになったのです。
片桐
私が今所属している三交会は大三島育徳会と姉妹法人で、元々私が大三島育徳会にいた頃、世田谷区の就職フェアを担当していました。当時、なかなかうまくいかない部分もあり、視野を広げてやってみようというこのお話があったときに、いいアイデアだと思い、一緒にやることになりました。
横須賀
既に協力会として成り立っていた後に、お声掛けをいただきまして、ぜひということで参加させていただいた次第です。
──協力会が発足してから、まずはどのような活動から始めましたか?
平本
最初は仲間集めから始めました。都内の法人でどれだけこの思いに共感してくださるのかというところからフェアを開催するまで多少時間がかかりました。
佐藤
仲間も日頃から研修委員会などでご一緒している方たちですので、お互いの施設の内情なども分かりますし、ご担当の方の人柄も分かりますので、一緒にやっていける安心できる方にお声掛けをさせていただきました。まずは法人くらいのときに就職フェアを初めて開催したのですが、そのときはノウハウがなさ過ぎまして、参加者が全然来ず、スタッフの方が多いという感じでしたね。
平本
実際に就職フェアがいろんな所で開催されている中で、採用したら完結というような形になるのが一番嫌だったというか、そういった求人の仕方はしたくないという思いは一致していました。仲間集めをする中でも、入った後の職員の育成であったり、働きやすい環境をつくってくれる同じ思いの法人に集まってもらいたいというのは最初からあったと思います。
──加盟されている法人が、それぞれ得意分野を分担しておられると伺ったのですが。
佐藤
平本さんと自分は、まずは求職者を集める活動をしようということで、学校やハローワーク、労働局、人材センターなどに足しげく通ったりしました。
田中
最初の立ち上げ当時は、まず私たちの活動を知ってもらわなくてはいけないということで、ブログを立ち上げて介護現場に関する情報を発信していましたね。
片桐
チラシ作りを担当していまして、チラシを見て人が来てくれるように、魅力的な内容が盛り込めるよう、皆さんのお話を伺って作っていました。
横須賀
私は就職フェアの司会進行役です。人前に立ったりが慣れているものですから。
──10法人で協働するメリットに は、どういったものがありますか?
佐藤
行政に話をするときに、1施設だと特別扱いできないということで、なかなか話が通らないのですが、10法人共同だと話を聞いていただけることがあります。
平本
メリットというわけではないのですが、一度もリーダー、代表といったものをつくりませんでした。みんな同じ立場でやっています。リーダーをつくってしまうと、その方だけが引っ張らなくてはならなくなりますし、他の方もリーダーだけに任せてしまうことになることもあるからです。
田中
やはり、一番のメリットは、一人一人の力が集まって、大きな力になることでしょうか。
──この活動をされていて、苦労されたことはありますか?
平本
協力会発足当時はコロナ禍で就職フェアなどの中止も多く、人も全然集まりませんでしたね。でも、誰もやめようと言わなかったというのが救いでした
片桐
どういう企画が求職者に刺さるのか、なかなか思い付かなくて、苦しみました。現役スタッフ座談会は、とてもいい企画でした。
横須賀
新卒の方がなかなか来ていただけないので、学生の方にもっと魅力的な企画を考えなければいけないと思っています。
平本
就職フェアは、前職が介護業界ではなく異業種にいらっしゃった方の方が、介護の魅力を知っていただけることが多いです。
──活動を始められてから、その効果はいかがでしたか?
佐藤
最初の4、5回は苦戦の連続でした。しかし、みんなで頑張っているうちに少しずつ参加者が増えてきて、就職が成立するようになってきましたし、ネットワークを継続しようという意思が強まりました。さらに、若手スタッフの勉強会をやろうとか、災害時の助け合いとか、人材交流など話がどんどん膨らんでいます。
田中
ハローワークなどと連携し、介護の魅力を発信して、若手スタッフの座談会というものを開催していただきました。
平本
人材確保は協力会の大きな柱でありますが、両輪で介護の魅力発信も重要です。自信を持って介護の仕事をしてもらいたいし、皆さんに介護の魅力を知っていただきたいという思いはぶれないようにしています。
片桐
この協力会は法人に就職していただくことが大きな目的ではありますが、やはり介護の業界に興味を持っていただかなければ人は集まりません。介護の仕事を目指す方自体の人数が本当に少なく、就職フェアに来てくださらないという状況があり、これは介護の魅力が伝わっていないのだというところから協力会ができたので、介護の魅力発信を前面に出すというのは、みんなの思いとしてありました。それが徐々にではありますが、実ってきたかと思います。
横須賀
初めて就職フェアに参加したときに、ちょうど新卒の方が来てうちの法人に就職していただいて、頑張ってくださっている。介護業界にはまだまだマイナスイメージが先行しているので、私たちがしっかり介護の魅力を発信していくことにより、介護業界への就職を考えている方の背中が押せているのかなという気がしています。
──就職フェアによって就職された方からは、どのような評価などのお声を伺っていますか?
佐藤
うちに就職したスタッフは、10法人が参加者を奪い合うのではなく、お互いがいいところを薦め合っている協力体制というのが心地よかったと聞いています。
平本
就職してからのミスマッチが離職の大きな原因となります。この就職フェアでは、それぞれが自分の法人ブースに来てくれた求職者の方に、こういう仕事がしたい、この地域で働きたいという希望を、10法人の中から見つけていただくという意識でやっています。ですので、離職は少ないように思いますし、実際に就職フェアで就職してくれたスタッフは、いろんな法人のいいところを見ながら就職できたというメリットを感じたと言ってくれています。
田中
「あちらの法人さんの方があなたには合っているかもしれない」と紹介したり、逆に他の法人さんに紹介していただいたりということもありますね。
──今後、協力会の活動で考えている新たな施策はありますか?
佐藤
勉強会や他の施設のお祭りなどに参加して、啓発活動ボランティアをやらせていただくことを計画しています。介護士養成学校に注目していただけるようになったので、授業をやっていく中で、介護のいいところ、大変なところを紹介するなど、PR活動をしていきたいと考えています。
田中
平本さんと佐藤がハローワークに掛け合って、労働局にこのフェアを就職活動として認可していただき、厚生労働省が助成金を出してくれるようになりました。それにより、今、各大学にもお話をして、就職担当者にお話をつなげていただいているところです。
──この取り組みをやって良かったことなどや協力会への思いを教えていただけますか?
佐藤
何でも相談できる仲間ができたことが一番良かったです。介護業界のことに関して、現場の悩みを相談し合える仲になったので、とても助かっています。
平本
この協力会は、決まったことだけをやればいいというのではなく、積極的に時勢の変化に対応して、先駆的な取り組みをしていきたいと考えています。
田中
私たちがやることで、他の法人にも続いていただき、日本の介護業界の魅力を発信し、他の施設にも人材が増えるような活動をしていければと思います。
片桐
他の就職フェアだとライバルでしかない集まりですが、この協力会は介護業界全体に人を集めようという視野の広い活動なのです。今後も尽力していきたいですし、そういう団体でありたいです。他の施設からもスタッフが楽しんで参加してくれていて、それがこの業界に定着してくれているという意味もあり、本当に大事な協力会だと感じています。
横須賀
うちの法人だけではなかなかできないことを、皆さんと意見を出し合い協力しながら形にできているので、すごくありがたいです。この協力会のことをもっと広めて、参加してくださる法人が増えればと願っています。

佐藤朋巳さん

平本穣さん

田中美佐さん

片桐恵子さん

横須賀英一さん
撮影=山田芳朗 写真提供=TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会 取材・文=石黒智樹