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特集

J Sフェスティバル in山口 誌上レポート15 先駆的特別報告

外国人介護人材への重層的な業務マネジメント体制には、教育担当者(設計)、現場職員(伴走)、施設・法人(支援)の三層構造による円環型協働モデルの形成を行いながら、教育担当者は「育てる力」の強化、現場職員は「進める力」の強化が必要。文化的背景、コミュニケーション、キャリア支援、地域共生、労働環境などについて多様性のなかの構造的接点を再定義しつつ、多文化共生に向けた組織基盤に焦点をあてることが重要である。

講評

現場に落とし込むためのより具体的な分析が行われている。 次のステージでは、国別、習熟度別、雇用形態別などの構築を目指してほしい。

 

レビー小体型認知症に多い「認知機能変動」(良い時・悪い時の揺れ)に着目。コグニサイン観察スケールは覚醒レベル、会話、感情・意欲、生活動作の4項目を7段階で評価することで、対象者を意識的に観察するきっかけとなり、症状を客観的・継続的に評価することで、BPSDとして現れる本人の苦痛を予測し、予防的なケア介入のタイミングを検討するなど、介護、看護、リハビリ、医師、相談員など多職種連携の場面で活用できる。

講評

専門用語が増えることに戸惑いと混乱を感じるため検討する必要性も ありそう。病変ごとに分類して分析を行ってはどうか。

 

 

法人での看取りを1年以内に経験した看護・介護職員に調査票を配布し、調査内容をもとに作成したガイドブックを利用した研修を実施し、その事前事後の意識の変化や介護への不安感の変化などを調査。看取りの技術と知識を集積し、施設内の職員や家族に手渡せるような四部構成の『死の人権と個別性に配慮した次世代型看取り介護ガイドブック』は研究協力施設など200カ所に頒布して活用されている。

講評

現場に根差した意見を取り入れた実践的なツールとして期待されている。 全国的な展開で事例を集めることで内容にさらに深みをもたせてほしい。

 

 

介護施設における変革志向の組織づくりを、ICT・ロボット導入への抵抗感と非効率業務(無駄)の実態から検討。調査では半数近くが変革に不安やストレスを抱え、ICT導入自体には賛成でも「使いこなせない」不安が大きい。心理的安全性、組織学習(組織内で学習し合う風土)がうまく機能していると無駄が低くなる傾向があり、小さな体験を積み重ねながら「変えられる」という認識をお互いにもつための組織づくりが必要。

講評

組織変革に成功した施設のケーススタディーなど、他施設にとって 参考となる事例を蓄積し、検証を続けてほしい。

 

特養の従来型・ユニット型で施設長が捉える介護労働の肯定的要因を調査。離職率はユニット型が高く、職業性ストレスは従来型が高い。インタビュー20施設と全国調査442件から、従来型は〈介護サービスを提供する介護労働を行う立場〉としての視点、ユニット型は〈介護サービスを受ける側の視点〉で、介護労働の肯定的要因を捉えている傾向があり、その特徴に施設形態による差異があることを特定。形態別の魅力発信の重要性を示した。

講評

施設長の視点から見た介護労働における「肯定的要因」という アプローチがよい。これを施設運営にどう活かすか、さらなる検討を期待する。

 

 

高齢者にとって重要な口腔機能低下を早期に評価し、改善するために、1)高齢者の表情による口腔機能の評価が可能か。2)日常生活に取り入れやすい口唇を閉じて頬を膨らませる動作を繰り返すプログラムの効果を評価。結果、非接触で簡便な口腔機能の評価が表情を用いて可能なことが示唆され、「ブクブクうがい動作」で優位に口唇閉鎖力が増大(運動中止により低下)することが確認され、口腔機能を改善しうると考えられた。

講評

今回のエビデンスは、施設で行っている取り組みの自信となるもの。 今後は咀嚼力や食事の量への影響についても調べてほしい。

 

 

夜間帯などに看護職員が常駐しない高齢者施設にも活用でき、職員の心理的不安を少なくし、利用者にとって尊厳ある死を迎えられる支援方法を検討することを目指し、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、小規模多機能型居宅介護施設における看取りの実態を調査。人員増加なしで対応するための機器の活用や体制の整備などの工夫を明らかにするとともに、終末期におけるケアの工夫や外部機関との連携の状況を探った。

講評

現場に飛び込んだ研究姿勢は高く評価しつつも、研究対象の母体が 少ないため、今後は対象数を増やしてエビデンスを構築してほしい。

 

 

介護事業等経営・総研委員会は、この夏に二つの委員会が合併し、中長期的な問題を研究するシンクタンク的な役割とともに、収支状況調査などのエビデンスに基づいた短期的な問題への発信を行う新しい体制となった。今回は、令和6年度収支状況調査の速報値と経営実態、全産業との賃金格差と人材確保、配置医師の実態と看取り体制、看取り介護加算の評価と制度上の課題、代行業務の実態調査と今後の取り組みなどについて概要が発表された。今後は特養部会や他の委員会と連携しながら、全国的なレベルでの調査研究を推進していく方針であることを報告した。

 

撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり