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J Sフェスティバル in山口 誌上レポート13 介護人材対策委員会プログラム 外国人介護人材の定着へ ~成功や失敗を事例から学ぶ~

外国人介護人材の採用が当たり前になりつつある今、配置や戦力化だけでは語れない課題にどう向き合うのか。本プログラムでは、共に働き、成長し合う関係を探るため、その本質に迫りました。

各現場で積み上げてきた 受け入れと定着のプロセス

 受け入れ初期の戸惑いと丁寧な軌道修正の経過をリアルに語ったのは、守安祐文氏(特別養護老人ホーム青葉台さくら苑)。「教える側と教えられる側という関係のままでは続きません。生活や感情まで含めて伴走する姿勢が必要でした」。日本語教育のみならず「話を聞く場」「相談できる関係性」の整備によって、職場の雰囲気そのものが変化したと振り返りました。そこから見えてくるのは、関係づくりがそのままケアの質に影響するという現実です。

 また、地域とのつながりが定着支援にもよい影響を与えることを示したのは、坂千代雅之氏(特別養護老人ホームヒワサ荘)です。少人数の受け入れでは、ホームシックや精神面の負担が生じやすい現実に触れつつ、「地域との交流や日本人との関係づくりが支えになった事例があった」と紹介。受け入れ体制の整備に加え、現地での生活や人間関係が安定することが、働き続ける力につながる可能性を示しました。

 宮内絵美氏(特別養護老人ホーム梅光園)は、処遇や制度運用において公平であることの重要性を話しました。自園では「国籍に関係なく同じ給与規定と評価基準で運用している」と説明。日本人職員と同一基準で働ける環境づくりが、安心感や信頼の形成に寄与しているとし、特別扱いではなく、同じ仲間として働くための制度設計が定着支援の土台になるとしました。

 さらに草薙貴光氏(社会福祉法人敬世会)は、受け入れを一度の対応で終わらせず、課題を整理し見直しを重ねながら継続してきた経緯を紹介。宗教や文化背景への配慮についても検討を続け、「勤務中のヒジャブの着用は2022年5月から許可し、現在も問題なく運用できています」と説明。支援を見直し続け、受け入れの質向上を目指す姿勢が共有されました。

 

欠員補充を超えて 未来を共に創る人材へ

 議論全体に通底していたのは、外国人介護人材を欠員補充ではなく「組織の未来を共に創るパートナー」として迎える思想でした。日本語教育や生活支援、住居、相談体制、キャリアパスの提示。これらは単なる制度整備ではなく、「人として尊重する」文化を現場に根付かせる営みです。加えて、転籍や離職のリスクも「恐れるべき脅威」ではなく、「選ばれる職場とは何か」を問い直す契機として捉える視点が共有されました。学習機会、挑戦の場、相談できる人間関係が整っている職場こそが、結果として自然に定着が進む職場であるという認識が、複数の発言から浮き彫りになりました。

 最後にコーディネーターの西丸晴彦副委員長は、各法人が課題に向き合い、解決を積み重ねてきたプロセスこそが「定着支援」であるとし、今後は国内外の人材獲得競争が一層激化することを見据えて「選ばれる職場としての魅力形成が不可欠」と指摘。取り組みを継続していく重要性を強調し、プログラムを締めくくりました。

撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり