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J Sフェスティバル in山口 誌上レポート12 【実践研究発表】 第6分科会 養護老人ホームの経営改善と今こそ発揮される蓄積力 ~地域共生社会における 措置施設としての多面的・ 戦略的アプローチ~

蓄積を“戦略”へと転換し、現場に根づく次の一手へ

幕開けを担ったのは、▶︎養護老人ホームかるな和順(北海道/横山晴香)。「医療介護連携による養護老人ホームの誤嚥事故予防」では、EAT–10を核とした評価の徹底と職員連携により誤嚥リスクを可視化し、医療機関との協働まで含めた包括的アプローチを提示。「評価を揃えると判断と対応が迷わなくなる」として連携の質が安全を支えることを示しました。次いで▶︎養護老人ホーム三春町敬老園(福島/遠藤滉也)は「養護老人ホームにおけるACPの重要性」を通じて、意思決定支援の在り方を丁寧に共有。「ACPは結論を出すためではなく、思いを共有し続けるための対話」と強調しました。3番手は▶︎養護老人ホーム掛川市ききょう荘(静岡/草賀一友)。「虐待防止検討委員会の取組み」では、チェックリストと「虐待の芽 ツム子さん」というキャラクターを用いて“面白真面目”に継続しやすい仕組みを構築。「続かなければ虐待の芽に気づけない」と語り、日常に溶け込む予防の重要性を示しました。また、▶︎養護(盲)老人ホーム 第二光が丘ハウス(福井/山口信裕)は「養護・軽費・ケアハウス職員が抱える日常業務における困難」を掲げ、複合的課題に対する改善の方向性を具体的に示しました。 休憩を挟み、後半最初は▶︎養護老人ホーム 阿波老人ホーム 白寿園(徳島/亀井由紀)。「養護老人ホームでの看護師の役割と課題」として精神疾患や看取りケアへの専門性と連携体制づくりを提起し、「看護師は現場と医療をつなぐハブ」だと述べ、養護における看護の存在価値を明確にしました。その後に登壇した▶︎養護老人ホームきぬがさ(滋賀/外山直美)は、「地域と歩む“備え”のかたち」を通じ、防災と地域交流を重ねる姿を紹介。「守られる存在ではなく、地域と一緒に備える関係を築きたい」と語り、日常の関わりが防災力を高めることを示しました。続く▶︎養護老人ホーム寿光園(鹿児島/黒木雄生)は、「地域と共に」と題し民営化から15年の歩みを踏まえ、「地域に飛び込み、呼び込むことで支え合いが育つ」との言葉とともに、地域連携と入所者支援を重ねてきた実践の深化を報告。最後は、▶︎養護老人ホーム鳥取市なごみ苑(鳥取/池本美鈴)。「寄り添うチカラで整える居室環境」では、転倒・転落低減のための分析とPDCAの継続により、安心と自律を見える化するプロセスが提示されました。 審査の結果、奨励賞は、虐待防止を意識化とユーモアで推進した掛川市ききょう荘と、長期的視野とデータ活用で環境改善に取り組んだ鳥取市なごみ苑。優秀賞は、医療介護連携を基盤に誤嚥予防を体系化したかるな和順が獲得。PDCAを継続的に回す戦略性が強く印象づけられ、養護老人ホームの可能性と責任を感じさせる時間となりました。
撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり