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特集

J Sフェスティバル in山口 誌上レポート8 【実践研究発表】 第2分科会  経営力の強化 ~地域に合わせた 持続的な事業戦略~

経営を現場に落とし込む実践の現在地

 最初に登壇したのは、▶︎特別養護老人ホームやもと赤井の里(宮城/土井孝博)。「ICTシステム導入による法人・事業所を超えたネットワークの構築」では、地域の医療・介護関係者を巻き込み、ICTを基盤とした多職種連携ネットワークを整備。情報共有の効率化による業務負担軽減と、事業所の稼働率改善を同時に実現したプロセスを報告。「ICTは導入が目的ではなく、関係性を広げ、地域包括ケアを深化させるための手段。今後も地域全体の支援力向上につなげたい」と語りました。続いて▶︎介護老人福祉施設 静苑ホーム(北海道/小西浩平)が、「思い出プロジェクト始動!!」を報告。“楽しい・嬉しい・美味しい”という日常の豊かさを支える視点から、ご利用者と家族の思い出を共有財産に変え、施設価値を地域にひらく取り組みを紹介。3番目は▶︎介護老人福祉施設サンリバー(愛知/渡邊陽介)の「災害時対応スキル向上のための体制作り」。災害発生時に動ける人材を増やすための訓練体系を整備し、施設防災マイスター育成への第一歩として提示。「災害は想定外ではなく、備えの質が行動を決める」と述べ、日常的な訓練が現場力を高めると強調しました。前半の最後は、▶︎特別養護老人ホーム森の園(愛媛/田村祐次)。「利用者・職員双方の安全・安心な介護を目指して」ではICT機器(ヒトメクカメラ)を活用し、転倒予防と拘縮予防を両立する仕組みを共有しました。  後半の皮切りは、▶︎特別養護老人ホーム平城園(奈良/秋吉将臣)。「脱・紹介会社で実現する経営の自立」では、採用構造の転換と離職抑制を軸に、事業運営の自立性を高める取り組みを紹介しました。続く▶︎特別養護老人ホームノットホーム(熊本/米田正人)は、「福祉避難所開設ゲーム(SgSE)の開発」を通じ、“平時から備える”という新しい防災学習の形を提示しました。ラストは▶︎特別養護老人ホーム高寿園(岡山/本多典子)。「生産性向上の取り組み」では、見守り機器や排泄ケアデータをもとに業務を標準化し、夜間ケアの見直しを進めることで、ご利用者の安心と自立支援、職員の働きやすさを同時に高めた実践を報告。「生産性向上は効率化ではなく、ご入居者の可能性を引き出し、介護の価値と職員の意欲を高めるための手段」と述べ、チーム連携による継続的な改善の重要性を示して締めくくりました。  審査の結果、地域ネットワークをICTで深化させたやもと赤井の里と、災害対応力を体系的に高めたサンリバーが奨励賞に、見守り機器のデータを的確に活かし、暮らしの安心と自立支援を同時に進めた高寿園が優秀賞に選ばれました。いずれも“経営”と“生活の質”を切り離さず結び付ける実践として、高い示唆を残す発表となりました。

 

撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり