福祉施設SX
第3回 全国老人福祉施設大会・研究会議 JSフェスティバル 誌上レポート① 基調報告・行政報告
開催日となった2024年11月21日(木)・22日(金)は2日間ともに好天に恵まれ、寒さも和らぐ小春日和となりました。会場となったびわ湖大津プリンスホテル(コンベンションホール 淡海) には、最新の情報を得るためや、多くの仲間と繋がってともに考え、共感し、高めあいたいと願う全国の会員施設の方々が集結し、汗ばむほどの熱気に包まれていました。
今回のテーマは「介護最前線の変革と戦略
〜自ら動く、ともに動く、働き甲斐のある現場への挑戦」〜
開催地となった滋賀県といえば近江商人の『三方よし』が有名です。これは今ふうのことばでいえば「win-win」。「職員」のモチベーションを上げる、「利用者」に質の高い介護サービスを提供する、安心して暮らせる「地域社会」を構築する、という高齢者福祉・介護施設の『三方よし』を目指して会員施設の応援やさまざまな取り組みを続けている全国老施協も、その成果や今後の目標をこのイベントを通して発信しました。
皆さまの生の声をエビデンスとして政策提言に!
2024年度の介護報酬改定率は1・59%のプラスであったものの、物価高騰により経営の困難が続く介護業界。大山氏は「補正予算の編成および早期成立、そして期中での基準費用額の引き上げを、全国老施協および各県老施協が国会議員、国、自治体に訴えかける『サンドイッチ方式』による要請活動を実施しています」と説明し、「今後も皆さまの声を数値化し、エビデンスとして政策提言を続けていく」と力強く宣言しました。後半では、能登半島地震での全国老施協の対応や老施協DWATの活動を記録動画で紹介し、DWATにご参加いただいた方々に心から謝辞を述べました。
厚生労働省の吉田氏による講演では、日本の介護保険制度と高齢化対策について説明が行われました。「2000年に始まった介護保険制度は承知のとおり税金と保険料によって運営され、利用者負担は1~3割に抑制されており、世界的にも優れた仕組みと評価されている。しかし、高齢者の人口増加に伴い利用者や給付費は増加しており、制度の持続可能性が課題である」と説明。
また、地域包括ケアシステムについて、「住み慣れた地域で医療や介護を受けられるように、2025年までに中学校区単位で支援センターの設置が進められている。予防介護事業では健康寿命の延長や介護費削減を目標とし、高齢者の健康づくり等に資する市町村の取り組みが各地で開催され、それによって要介護認定率の低下も見られる」と報告。愛知県豊田市での事例をあげ、「2年間で推定3・7億円の介護給付費削減という成果が得られている。全国で展開できるモデル事業をつくりたい」と語りました。
さらに、医療福祉分野の人材確保は喫緊の課題であるとして以下の対策を挙げました。
●介護職員の処遇改善
●多様な人材の確保・育成
●ロボットの介護活用による業務負担の軽減
●外国人人材の受け入れ環境の整備、処遇改善
「このうち処遇改善については、2024年度に2・5%、2025年度に2・0%のベースアップを目指します。また、2024年度の補正予算に向けた経済対策も進めている」と説明。最後に吉田氏は、介護の生産性向上により、人材不足のなかでも介護の質を確保し、持続可能なサービスを提供できる体制を整えたいとし、そのために「職場環境の整備」や「記録・報告様式の工夫」「情報共有の工夫」などをまとめたガイドラインを参考にしてほしいと呼びかけました。
撮影=本田真康 取材・文=池田佳寿子