福祉施設SX
第3回 全国老人福祉施設大会・研究会議 JSフェスティバルin滋賀 基調報告
2024年11月21日(木)・22日(金)、びわ湖大津プリンスホテル(コンベンションホール)にて開催された「第3回 全国老人福祉施設大会・研究会議~JSフェスティバル in 滋賀~」。
開会にあたり、大山知子会長からは全国老施協の現状の取り組みとして、介護現場における 物価高騰・賃上げ等や、全国老施協DWAT(災害福祉支援チーム)活動についての報告がありました。
現場の声を関係省庁に 継続的に訴え続ける
全国老施協が行っている陳情や要望活動についてお知らせします。
2024年度の介護報酬改定率は1・59%引き上げられました。しかし、物価高騰や賃上げの影響で、介護現場の経営は依然厳しい状況にあります。介護職員の処遇改善加算は次の通りです。
加算Ⅰ:約73%、加算Ⅱ:約15%、加算Ⅲ:約5%。合計で約90%ですが、全施設での活用は未達成です。その理由として、「申請に伴う負担の大きさ」「要件の厳しさ」が挙げられます。これらの改善に向け、厚労省や財務省への要望活動を進めているところです。
さらに、全産業と介護分野の職員の平均賃金の推移については、一般企業との差は2020年にいったん縮まりはしたものの、その後、再び開き、2023年に6・9万円の差となりました。
もはや3年に一度の見直しでは、対応が追いつきません。現在の物価スライドに合わせた賃金改定ができるように、引き続き関係省庁にしっかりと訴えてまいります。
エビデンス収集を重視し 政策提言につなげる
総務省の消費者物価指数では、直近の食料は2021年比で19・1%増、最低賃金は同じく2021年比で13・4%増となっています。こうした物価高騰を受け、2024年8月から、基準費用額(施設で提供するサービスの料金基準)の居住費の見直しが行われました。その一方、基準費用額の食費については厚生労働省「介護事業経営実態調査」の結果、食材料費の支出が全体として大きく伸びてはいない」として見送られています。
このような状況を見据え、全国老施協では本会会員の特養に勤務する管理者、事務職員、栄養士を対象に「食費と食事サービスに関する調査」を実施しました。その結果、「食費に関する調査」からは、2022年比で年間約181万円超の赤字額の増大が生じていることがわかり、各施設では牛肉・豚肉の代わりに鶏肉の使用頻度を増加させるといった工夫をしているものの、ご利用者やご家族からは「物足りない」といった苦情が出ていることが見て取れます。
食事は朝・昼・夕と1日3回必ずお出しするもので、ご利用者にとって食事は楽しみであり、生きがいでもあります。まずは調査結果に基づく物価高騰対策のための補正予算の編成および早期成立、そして期中での基準費用額の引き上げを、報道関係を巻き込みながら、全国老施協および各県老施協が自治体や地方議員、さらには地元選出の国会議員や関係省庁に対して訴えかける「サンドイッチ方式」での戦略を実施し、引き続き、効果的な要望活動を行います。
同時に近年では、情緒的に訴えるばかりではなく、より具体的なエビデンスが求められています。今後、皆様のもとに頻繁にアンケートが届くかもしれませんが、その声を数値化し、我々のエビデンスとして、政策提言につなげていきたいと思います。
横のつながりを活かし 自分たちで明日を変えていく
続いて、2024年1月1日16時6分に発生した能登半島地震における全国老施協の対応と全国老施協DWAT活動についての動画(10分)をご覧ください。
―動画では、災害発生後、速やかに関係各位に連絡をとり、当日の16時30分に全国老施協災害対策本部を設置するとともに、各県の会長や厚労省とも情報共有を行い、被災施設の状況確認を行った全国老施協の初動対応を紹介。また、1月12日から始まった全国老施協DWATによる支援活動には、これまでに300名以上の職員が参加。支援者の声や活動の様子が具体的に描かれ、団体としての相互扶助のメッセージが込められていた―
この動画のなかには全国老施協DWATに参加した職員の「自分が少しでも役に立てるなら」「県や法人を代表して選ばれた自分を誇りに思う」といった言葉も紹介されております。これまでのDWATご参加者は、動画のエンドロールおよび本フェスティバルの要覧に派遣者名簿として掲載させていただきました。
多忙な業務のなか、使命感をもち、今もって仲間を助けるために動いていただいていることに、心からの感謝を申し上げます。 このように震災から1年近くが過ぎた今もなお現地に入り、支援活動を続けている団体としての使命感と強い横のつながりがあります。その力を活かし、自分たちで明日を変えていきたい。これからも皆様の声とともに邁進してまいります。
撮影=本田真康 取材・文=冨部志保子