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特集

J Sフェスティバル in山口 誌上レポート3 行政報告 介護政策の課題と対応 2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会の報告

人材不足と処遇改善について

 令和4年度の全世代型社会保障構築会議では、これからの目指すべき社会福祉の方向性として、医療、子育て、介護などを総合的に捉えて、全世代が支え合う形で社会全体を幸福にしていくとしました。そのなかで大きな課題となっているのが介護分野における人材不足、給与・処遇です。全産業で賃上げが進むなか、介護も 色なく賃上げし、差を縮める対応が必要です。「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月閣議決定)では、医療・介護などについて「コストカット型からの転換」が明確に示され、経営の安定や、現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる的確な対応を行うことが盛り込まれました。この点は大変意義があると受け止めています。

 「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会とりまとめ(概要)では、人材確保、あるいは人材確保につなげる事業者に対する支援として、基盤となるプラットフォームを構築していくことが大事だとしています。都道府県・市町村、福祉人材センター、ハローワーク、介護労働安定センター、介護生産性向上総合相談センター、事業者・団体が参画し、地域の実情に応じて、定着支援、職場環境改善、テクノロジー導入、若者や他産業からの転職者に向けた理解促進・魅力発信を進めるというもので、すでに全国各地でいくつかの取り組みの実例があります。

 また、介護職員が直接ケアに専念できるよう、周辺業務はタスクシフト、タスクシェアの発想で介護助手の活用も有効です。元気な高齢者が支える側に回ることは、人材確保だけでなく生きがいにもつながり得ます。

 

生産性向上とテクノロジー活用

 生産性向上というと冷たい印象をもたれがちですが、目的は「よりよいケア」と「職員負担の軽減」です。職場の整理整頓などの基本、役割分担の見直し、OJT、記録・報告の工夫といった仕事のやり方を見直し、記録ソフトやスマホ・タブレット入力、見守りセンサーなどを現場の意見を踏まえて活用することが重要です。活用方法が分からない場合には、伴走支援の仕組みを用意し、大分県では生産性向上の相談センターを設け、専門家紹介も含めた支援を行っています。

 

中山間地域の施設転用

 中山間・人口減少地域では、サービス確保が一層厳しくなるため、既存の基準該当サービス等に加え、新しい類型の検討が必要です。新たな地域医療構想がとりまとめられるなかで、介護施設では協力医療機関の登録が経過措置付きで義務付けになっていますが、3割弱がまだ協力医療機関を定めきっていないという実情もあり、自治体に適宜情報の共有やマッチングを行うようお願いをしています。

 高齢者のための住まいでは、住宅型有料老人ホームが増加するなかで事前規制導入の必要性が示され、制度改正の検討を始めました。施設の柔軟な活用については、補助金制度上、整備後10年未満の転用に制約があるため、計画達成に支障がない場合の一部転用や、状況が厳しい地域での全部転用も含め、より柔軟な対応を検討しています。

 こうしたハード面の柔軟な活用に加えて、地域を支えるサービスが厳しい状況にあるなか、医療・福祉はもちろん、子育て、教育、農業、他の産業、あるいは住民の方々の移動といった交通、また、高齢者の方を中心に、地域で買い物する場がないなど複合的な課題を一体的に捉えて、中山間地域においてどのように生活基盤を確保するかという観点から、取り組みを進めていく必要があると考えています。

 地域共生社会の実現に向けては、包括的な支援体制の整備のために高齢者のニーズの変化に応じて多様なサポートをいかに切れ目なく、シームレスに提供していくかが課題です。

 

ニーズに合わせた多様なサービスの提供

 災害時の対応では、災害派遣福祉チームDWATの取り組みが進み、ケアマネジャーの業務については、2024年12月に取りまとめられた検討会の中間整理概要に基づき、ケアマネジャーの資格取得要件をより幅広くしたり、更新制の見直しをしたりする等の議論も進めています。

 

令和 7 年度補正予算案の支援

  最後に、11月に決定された令和7年度補正予算案では、「医療介護等支援パッケージ」を盛り込み、介護分野の職員の処遇改善、サービス継続支援、経営改善等支援などを行うとしています。

 加えて国土強靱化に基づく浸水対策等と併せた大規模修繕について、30人以上の広域型施設も対象とするメニューを想定しています。  テクノロジー導入支援は令和6年度補正の200億円から220億円へ増額し、補助率は国・都道府県が5分の4、事業者負担が5分の1となる案です。成立後、速やかな執行に努め、皆さまの取り組みをしっかり支援していきます。

 

撮影=菓子谷 梨沙、児玉 一成、吉本 博史 取材・文=冨部 志保子、池田 佳寿子、箭本 美帆、濵口 ゆかり