最新情報
アルツハイマー病などの原因タンパク質「アミロイド」の無毒化を実証
#アルツハイマー病 #アミロイド
▶末期患者にも新たな治療選択となる可能性
東京大学大学院薬学系研究科ほか5つの大学で構成された研究グループは8月7日、アルツハイマー病などの原因物質として知られる「アミロイド」の無毒化を達成したことを公表した。
タンパク質の誤った折りたたみ(ミスフォールディング)とそれによる凝集は、加齢にともなって起こるタンパク質異常の代表的な現象で、特にそれらが不溶性の線維状構造となったものは「アミロイド」と呼ばれ、高い毒性を有することで知られている。
アミロイドは体内で分解されにくく、組織や臓器に沈着することで様々な病気を引き起こす原因となるが、世界的な高齢化を背景に近年これらの疾患は診断例が急増しているという現実がある。
中でも「トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)」は、80歳以上の高齢者の約4人に1人に影響を及ぼすとも言われている難治性疾患では、臓器移植以外に根治治療が難しく、一般的な治療法の多くは病気の進行を止めることが中心となっており、一度蓄積したアミロイドの毒性を消す方法はないため、一度発症すると有効な治療薬がないまま命を落とす患者も少なくないのが現状だ。
研究チームはこの難題に対し、「光」と「触媒」を使用した独自のアプローチにより、アミロイドそのものを無毒化するという革新的な戦略を試みた。小さな分子でありながらアミロイド特有の構造に対して選択的に結合し、光によって活性化され、空気中の酸素からアミロイドに対して親水性の酸素原子を化学反応により導入(光酸素化)することができる触媒を開発し、アミロイドの無毒化を達成した。またこの触媒は、世界唯一の本疾患モデル動物である線虫の体内でも機能し、初めて治療効果を得ることにも成功している。
今回の研究は「触媒医療(Catalysis Medicine)」という新しい疾患治療概念(化学触媒を通じて生体内の化学反応ネットワークに能動的に介入)の具体的な実証例でもある。将来的にはアルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとした、他のアミロイド関連疾患への応用も期待される。
(参考資料:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_00087.html)