最新情報
移動手段を失った高齢者ほど「要介護」リスクが上昇
#電動カート #介護予防効果 #千葉大学予防医学センター
▶地域の移動支援としての電動カートが介護予防につながるかを検証
千葉大学予防医学センターなどの研究チームは6月25日、電動カート利用による介護予防効果の検証結果を公表。1年間で電動カートを週1回以上利用していた高齢者では、電動カート運行停止4カ月後に要支援・要介護リスク評価尺度点数が、悪化していたことが明らかになった。
超高齢社会において、地域住民の移動手段の確保は公衆衛生上の喫緊の課題のひとつとされている。高齢になり、移動機会が減ることで歩行や活動量などが減り、将来の要介護状態につながる可能性があるため、地域における移動支援は高齢者が安心して日常生活を続けるための重要な要素と言える。
そこで本研究では、令和4年7月25日~令和5年7月21日に、大阪府河内長野市での電動カート実証事業「電動カート導入による高齢者のQOL向上・介護予防・社会保障費抑制効果の評価等に関する研究」を行い、運行前後および運行停止4カ月月後の計3回の調査データを用いて、利用者の要支援・要介護リスクの変化を検証した。リスク点数は、高齢者の生活状況や健康状態を把握し、地域の課題を特定することを目的に実施する介護予防・日常生活圏域ニーズ調査の必須項目10問(バスや電車を使って一人で外出していないか、自分で食品・日用品の買い物をしていないかなど)および性・年齢を合わせた計12項目から構成。合計48点満点で、高得点であるほど3年以内の要支援要介護認定が高くなることが確認されている。
調査対象者は65歳以上の高齢者78人(平均年齢77.3歳、女性が67.9%)で、実証事業の期間中に電動カート利用頻度が 週1回以上の者は31人(39.7%)、月1~3回の者は47人(60.3%)だった。このうち、週1回以上の利用者では運行前で20.7 点、運行中・停止直後が20.0点とやや改善し、運行停止4カ月後で21.8点と悪化していた。
これは、電動カートが動いている時と比べて、止まった後ではリスク点数が1.77点上がっており、3年以下の要支援・要介護認定の発生が高くなることを示すとともに、地域の移動支援としての電動カートの持続的な運行が高齢者の介護予防に重要な手段となり得ることを示唆している。
(参考資料:https://www.chiba-u.ac.jp/news/files/pdf/0625-cart2.pdf)