最新制度解説

特集(制度関連)

〜11⽉11⽇の「介護の⽇」に考える〜 暮らす⼈、通う⼈、働く⼈ みんなのための「介護の⽇」

2023.11 老施協 MONTHLY

介護の社会的意義や重要性について、国民への啓蒙を趣旨に制定された〝介護の日〟。編集部では、この機に介護施設職員を対象とした意識調査を実施。多く寄せられた現場の課題について、有識者らの助言を基に解決の糸口を探る。


産業ストレスの専門家
健康社会学者

河合薫

Profile●かわい・かおる=産業ストレスやポジティブ心理学などを健康生成論の視点から調査研究。本誌で「みんなの気持ち」を連載中


働く皆さんに聞いた「意識調査」

10月12日〜16日の5日間、Google Formsを用いて、全国老施協会員施設の皆さまにアンケートを実施しました。

自由回答
  1. 入居者、もしくは利用者から掛けられた言葉で、心に残っている言葉を教えてください。
  2. 取り組まれている研究事案など、日々の業務の中でやりがいを感じていることを教えてください。
  3. 現在の目標は何ですか?
  4. 介護職の社会的地位をさらに向上させるために、どのような取り組みが必要だと思いますか?
選択制
  1. これから取り組みたい、学びたい事案は?
  2. 全国老施協に開いてほしいセミナーや研修は?
  3. 人材を定着させるために必要だと思うものは?

人材定着に必要なこととして「人間関係」との声が最多に

 このほど編集部が実施した全国老施協会員施設における意識調査では、土日を含む5日間で264通もの回答が寄せられた。介護の現場で日々奮闘されている皆さまにご協力いただいたことに、まず感謝を申し上げたい。加えて、回答数の多さから掲載できるのがごく一部となったこともご了承願いたい。皆さまそれぞれの〝現場〟で直面されている課題や介護業界に対する思いをつづられたご意見は、全国老施協の大山知子会長らとも共有させていただいた。その上で行った大山会長のインタビューは、本特集の最後に掲載している。

 ここからはアンケート結果で特徴的だったポイントを深掘りする。自由回答の問1〜4を見ると、多くの方が膨大な業務に追われながらも真摯に取り組みつつ、個々に目標を設定しているケースも多かった。が、同時に業務が膨大過ぎることに苦しんでいる人もおり、離職につながることも。そのため、選択回答の問1の取り組みたい・学びたい事案の1位は「人材の確保・育成・定着」だった。

 さらに今回、長年悩まされている介護業界の人材不足を解決する糸口を探るため、「人材を定着させるために必要だと思うものは?」という質問を設けた。結果は66.5%の圧倒的多数で「人間関係・チームワーク」がトップに(下グラフ参照)。介護業界では「給与の低さ」に併せて「人間関係」を理由に離職する人も多く、良好な人間関係に基づくチーム力向上を求める実態も明らかになった。

「施設のチーム力を高めるには、まず職員全員がイキイキと働ける職場をつくることを目標に掲げることが大切」と指摘するのは、本誌の連載ページ「みんなの気持ち」で介護職員の相談に答えていらっしゃる健康社会学者の河合薫氏。介護業界に限らず、数多くの企業を訪ね、働く人と職場環境を取材・調査している河合氏に、次項から人間関係づくりや人材育成について、本質を突く助言をいただく。

職場での関係性づくり 基本は至ってシンプル

 アンケートでは人材定着策への関心度が高く、選択回答「問2」の全国老施協に開催してほしい研修テーマも「人材の確保・育成・定着」との回答が1位となった(下グラフ参照)。では、人材定着につながる職場の人間関係は、どのように構築していくべきなのか。

「職場の人間関係に問題が生じると、多くの人はコミュニケーションスキルを高めることに関心がいきがちです。しかし、本来コミュニケーションというものは、伝えたいという思いと、それを受け取ろうとする思いがあれば成立するものなので、スキルなどの方法論から関係性を改善しようとすることはオススメしません」

 こう述べる河合氏が大切だと訴えるのは、〝心と心の距離感が近い関係性〟をつくること。

「例えば、雨が降ってきて自分は傘を持っていないとき、誰かに『傘を貸してもらえませんか?』と言えたら、その人との心の距離は少し縮まりますよね。ささいなことのようで、ちょっとした勇気も必要です。こうした感覚で、職場の上司部下、先輩後輩の垣根を越えて、一人で自己完結せず『助けてほしい』『教えてほしい』『聞いてほしい』と言える距離感の近さがあれば、コミュニケーションは十分に取れるでしょう。しかし、この距離感が遠い場合は、まず自分が職場の人たちにどのような感じであいさつをしているかを思い返してみてください。『おはようございます』『ありがとうございます』『お疲れさまです』といったあいさつや声掛けこそが、人と人の心の距離感を近づける最もシンプルなコミュニケーションです。これなら難しい人間関係トレーニングを受講しなくても、今すぐ始めることができます。私自身、さまざまな企業を訪れていますが、チームづくりに成功しているところは社員さんたちによる元気なあいさつが飛び交っています」

 また、河合氏は職員間の世代間ギャップも必要以上に気にしなくてよいという。「中高年と比べると、若い世代は反応が薄いなどコミュニケーションスタイルが違います。しかし、人としての本質は皆同じです。誰もが人として認められたいし、必要とされたい。だからこそ毎日現場であいさつや声を掛け合うことが、良好な人間関係の基盤となるのです」(河合氏)。

さらに専門性を向上させ 新たな介護職像を社会へ

 介護職員に仕事へのやりがいと自信をもたらし、離職を防ぐ手段ともなる人材育成。目標を尋ねたアンケート(下記、自由回答問3参照)では介護技術の向上はもちろん、認知症ケアの専門研修に参加したり、機能訓練を学ぶため理学療法士による研修を実施したりする施設もあった。その上で「よりよいケアを提供してサービスの質を上げていくことが、介護職の地位向上のために必要」(下記、自由回答問4参照)という意見も。人材育成について、河合氏は次のように指摘する。

「人は現場で熱くなったり、悩んだりした経験を通して成長できるもの。さまざまなスキルを学ばれたら、積極的に現場で生かしてください。例えば、音楽療法を学んだら、レクリエーションで活用するのもいいでしょう。職員の能力を発揮する機会を日常的につくることで、みんながイキイキできる職場になります」

 こうした介護現場の様子を社会に伝え、従来のイメージを変える必要性を訴える意見も多く寄せられた(下記、自由回答問4参照)。

 介護職員のイメージづくりについて、河合氏は先ごろ他界されたお母さまの介護を通して触れ合った施設職員らの姿を思い浮かべながら助言をくださった。

「この夏に永眠した母は、散歩中の転倒が原因で入院してから一人暮らしが難しくなり、自宅近くの施設へ入居しました。私は毎日のように様子を見に行っていたものの、介護や看護のプロの方たちが母を24時間見守ってくれるという安心感は想像以上のものでした。しかも介護職の方々は母だけでなく私のことまで気遣ってくれた。まるで家族が増えたように心強くて本当にありがたかった。こうした経験から、私は介護職は高齢者に寄り添うだけでなく〝家族のサポーターでもある〟という視点を前面に打ち出すことで、リアリティーのある介護職像を社会にPRできると思っています」

自由回答 問1
入居者、もしくは利用者から掛けられた、心に残っている言葉

  • 送り際に言ってくださる「今日も楽しかった〜」という一言(長崎県、デイ、管理者)
  • 「自分のことは自分でやります」(岐阜県、養護老人(盲)、役職無回答)
  • 若い頃、「上から目線で理屈っぽく話すな」と言われた経験から相手の気持ちをくみ取ることを心掛けるように。(東京都、ケアハウス、係長/生活相談員)
  • ご家族に言いたいけど、迷惑を掛ける気がして言えないことがある入居者さまの本当の気持ちをご家族に伝えるお手伝いをさせていただき、「家族と話せて良かった。ありがとう」と涙ぐまれて言っていただいた感謝の言葉(佐賀県、特養、支援業務課長)
  • 朝、「あなたが来るのを待ってたのよ」と言われたこと(広島県、特養、主任)

自由回答 問2
日々の業務の中でやりがいを感じていること

  • 外国人の介護福祉士育成 (石川県、デイ、代表取締役)
  • フレイル予防プログラムデイリーアクション事業 (三重県、デイ、管理者)
  • 利用者様の拘縮を進行させない拘縮予防策と有効なポジショニングについての研究(兵庫県、特養、役職無回答)
  • 全職員の福利厚生の見直し (山口県、特養、施設長)
  • 介護全般における職員の勉強会(移乗介助・排泄介助・食事介助など)(東京都、特養、管理職)
  • ノーリフティングケアの実践による、業務負担の軽減および職員の腰痛予防(宮城県、特養、施設長)
  • 認知症の方へのアプローチ方法について、外国人実習生と話し合いながら進めている こと(広島県、特養、副主任)

自由回答 問3
現在の目標は何ですか?

  • 笑いのある職場(大阪府、特養、施設長)
  • ご入居者一人一人の栄養状態を把握し、可能な限り状態に合った食事を提案すること(三重県、特養、管理栄養士)
  • 入居者のQOL向上と、より働きやすい職場環境の整備(北海道、特養、施設長)
  • 職員定着率をアップさせるための残業のない職場づくり(鹿児島県、デイサービス、生活相談員)
  • 日々の業務に追われてツラく、目標を設定するところではない(栃木県、居宅支援、管理者)
  • 認知症介護のスペシャリストになるために、自己学習および研修に参加している(広島県、特養、役職無回答)
  • 施設と外部をつなぐ生活相談員として、地域共生社会の実現を目指している(愛知県、特養、生活相談員)

自由回答 問4
介護職の地位向上のために必要だと思うこと

  • 介護職も看護師と同程度の収入が得られる基本介護報酬の算定が必要。要件が厳しく、取れない加算では意味がない(山口県、特養、施設長)
  • メディアによるイメージ発信。ケアニンのような作品が連続ドラマ化されたら反響があるのでは?その際、単に美しい話ではなく、大変さもリアルに表現してほしい(北海道、特養、施設長)
  • よりよいケアを提供して、介護の質を上げていくことが必要だと思います(千葉県、特養、サブリーダー)
  • 介護の資格の難易度を上げ、資格の種類を増やしていくことで誰でもできる仕事ではなく、“専門職”としての地位を確立させる必要があるのではないかと思います(熊本県、特養、介護主任)
  • 誰でもできる仕事という認識のままだと、介護職はいつまでも底辺扱いのままなのではないかと思います(愛知県、ケアハウス、相談員)
  • 介護報酬や加算を充実させて、他の業種レベルに給与をアップさせること(愛知県、養護老人、役職無回答)
  • 介護福祉士、社会福祉士などの業務独占およびさらなる処遇改善(三重県、特養、施設長)
  • SNSを活用し、介護に対するイメージを一新させる情報を発信していくこと(栃木県、特養、役職無回答)

選択制 問1
これから取り組みたい、学びたい事案

①介護⼈材の確保・育成・定着について26.9%
②リーダーとしての資質と知識向上など、⼈材育成について19.3%
③LIFEなど、介護保険制度・介護報酬に関する事案14.4%
④認知症ケアにて機能する多職種連携チームの育て⽅11.0%
⑤介護職員の処遇改善について7.2%
⑥介護DX時代の職場づくり6.8%
⑦誤嚥に関する介護事故予防などのリスクマネジメント5.3%
⑦協働ネットワークの作り⽅など、地域連携について5.3%
⑧その他3.8%

選択制 問2
全国⽼施協に開いてほしいセミナーや研修

①介護⼈材の確保・育成・定着について24.2%
②LIFEなど、介護保険制度・介護報酬に関する事案17.8%
③リーダーとしての資質と知識向上など、⼈材育成について15.9%
④認知症ケアにて機能する多職種連携チームの育て⽅11.0%
⑤介護DX時代の職場づくり8.7%
⑥介護職員の処遇改善について6.8%
⑦誤嚥に関する介護事故予防などのリスクマネジメント6.4%
⑧協働ネットワークの作り⽅など、地域連携につい4.9%
⑨その他4.2%

選択制 問3
⼈材を定着させるために必要だと思うもの

①⼈間関係・チームワーク66.5%
②給与・待遇27.4%
③業務量4.2%
④福利厚⽣1.1%
⑤設備・環境0.8%


実例1 SNS活用
デイのサービス内容をより深く知ってもらいたくて、インスタを始めました

社会福祉法⼈かがやき 湘南ベルサイド デイサービスセンター

介護福祉士 藤本美子さん

今年3月からInstagramを始めた湘南ベルサイド(@shonanbellside)。藤本さんともう一人のスタッフの2人が中心となり、週3回を目安に投稿している。「これまでは紙媒体で情報を発信していましたが、インスタなら週に何度もアップできるので、デイのサービス内容をより深く知ってもらいたいと思い始めました」。投稿内容は、人気の散歩シーンや季節の素材を使った食事、そしてレクリエーションが中心。「お散歩などを皆さんが楽しんでいる様子が伝わるように撮影していますが、アップする際には個人情報保護の観点からご利用者さまのお顔が写らないように配慮しています。また、キャプションを書く際には、検索されやすいようにハッシュタグを多めにしています。ご利用者ご家族だけでなく、新たな働き手にも届いたらいいなと思いますね」。今後やってみたいことはICTを活用したWeb旅行。「皆さん、遠出は難しいので、ライブ配信で寺院巡りなどを楽しんでもらえたら…と思っています」

湘南ベルサイド デイサービスセンター

住所:神奈川県茅ヶ崎市中島736-1
URL:http://www.bellside.or.jp


実例2 人材育成
2カ月ごとに介護技術のテストを行うことで、サービスの質が向上!

社会福祉法人 サマリヤ 特別養護老人ホーム サマリヤ松並

課長 大森志保さん

特別養護老人ホーム サマリヤでは、3年ほど前から介護技術のテストを行っているという。「虐待防止委員になった際に、虐待は介護の質の悪さの積み重ねから生じるのでは?と思い、質を向上させるにはどうしたらいいのかと考えたことが一つと、うちの施設はベテランからEPA介護福祉士や技能実習生まで幅広い職員がいるので、サービスの質を均一化したいと思ったことがきっかけでした」と、大森さん。テスト内容は食事・排泄・入浴などの介助、着替え、掃除など基礎的なことを、2カ月1セットで最初の月にテスト、翌月に評価という形で行っている。「毎回テーマだけ告知し、ある日突然抜き打ちで各チーフ(写真右)が25項目のチェックを行います。声掛けや目線、説明内容など何をチェックされるかわからないため、みんな勉強するので、それがおのずとサービスの質の向上につながっているように感じます。そうして、得意分野を見つけて技術を伸ばすことでキャリアパスにつなげられたらいいなと思いますね」

特別養護老人ホーム サマリヤ松並

住所:香川県高松市松並町573
URL:http://www.samariya.or.jp/


会長から働く皆さまへ

調査結果から浮かび上がる介護現場からの声。大山知子会長にも目を通していただきながら、介護職の皆さんに伝えたい思いを伺った。

全国老人福祉施設協議会 会長

大山知子

Profile●おおやま・ともこ=全国老人福祉施設協議会会長、栃木県老人福祉施設協議会会長、社会福祉法人蓬愛会理事長。介護施設に加えて、栃木介護福祉士専門学校も運営している


介護職の努力が報われる未来をつくっていくために

介護職員の社会的役割に見合う報酬額を改めて問う

 今回、〝介護の日〟にちなんだ「月刊老施協」編集部による意識調査に、全国老施協会員の皆さまより、現場の声をたくさんお寄せいただきました。介護のあらゆる現場では長きにわたるコロナ対応で精疲力尽の様相を呈しながらも、皆さまが今再びケアの充実や地域とのつながりを回復させようと奮闘されている様子が言葉の端々からも伝わってまいります。

 折しも、政府は最新の経済政策に盛り込むとしている介護職員の賃上げについて「月6000円程度が妥当」という考えを示しています(’23年10月末時点)。本アンケート結果でも介護職員の報酬アップを切願するご意見は多く、全国老施協としても’24年度介護報酬改定に向けて、一貫して「基本報酬の増額」を強く要望しているところです。そうした中、政府によって示された来年2月の実施を目指すという賃上げ案。金額の妥当性についてネットなどではさまざまな意見が飛び交っています。何より私が訴えたいのは「コロナ禍で高齢者の命を守るべく力を尽くし、これからも少子高齢化が進む日本社会を支える主要な職種である介護職員の社会的役割に見合う報酬額とは?」という根本的な問いを、今こそ国民的議論にまで広げる必要があるのではないか、ということです。

介護福祉士誕生から36年 専門職としての認知度UPを

 介護業界からの離職原因で多いのが「給与の低さ」であり、近年は介護福祉士養成校でも入学者の定員割れが起きています。現行の報酬体系のままでは、介護人材の他産業への流出も増え続けかねません。今年の春闘における賃上げ率は3.58%だった一方で、介護業界は同率1.42%にとどまりました。介護職員の月収は処遇改善加算などの補助が入っても、全産業の平均賃金との差額は6.8万円。社会で賃上げムードが高まるほど、介護業界からの人材流出に拍車がかかっていると言えます(※参考資料)。それに歯止めをかけるためにも、全国老施協では基本報酬アップに併せて、報酬改定について「社会経済情勢による経費の性質に応じ、賃金上昇率や物価上昇率の変動によって改定する賃金スライドおよび物価スライドの仕組みの導入」も国に要望しています。

 とはいえ、介護職員の低賃金傾向の背景には、いまだ一部政治家や国民の中に「介護は家事労働の一部である」という固定観念が残っている現実があります。介護福祉士が国家資格として誕生してから36年が経ちます。報酬改定の議論を前進させるためには、介護福祉士による介護サービスは家事労働の延長線上で提供されるものではなく、国民の尊厳ある暮らしを支えるプロフェッショナルな職能であるという認識を、改めて社会全体にしっかりと浸透させなくてはなりません。

介護における専門性のさらなる強化に向けて

 今回のアンケートでは「介護職も看護職と同等の収入が得られる基本報酬の算定が必要」といった回答が多数見受けられました。確かにその通りで、現状では介護職と看護職の賃金格差は月額約5万円、年収にして60万円以上の差が出ています。例えばシングルマザーの女性が看護師であれば育児サービスを利用しながら自活することは可能ですが、介護福祉士の仕事だけでは同様の生活は難しいのが現実。若い世代の介護福祉士の皆さんが仕事と育児を両立できるようになるためにも、基本報酬のプラス改定は必須です。

 同時に、介護の仕事の社会的地位向上のため、今後も続けるべきことは「専門性の強化」であります。介護福祉士は国家資格として名称独占してきましたが、いまだ医療職のように業務独占は成し得ていません。今後、介護技術の専門性をさらに高め、社会に周知していくことが業務独占への第一歩となるでしょう。

 専門性向上については、全国老施協は他団体と比べても、率先して介護技術の最新動向を踏まえた各種研修やモデル事業を実施しておりますので、ぜひご活用ください。また、アンケートでも皆さまの関心が高かったLIFE(科学的介護情報システム)をはじめ、ロボットやAIといった介護DX時代の環境変化についても、適応化に向けた支援策を講じてまいりますのでご注目ください。

 こう言いつつ逆説的ではありますが、どれほど社会のデジタル化が進もうと、最終的に介護職と利用者の方々が直接触れ合うことで成り立つのが介護業界です。いろいろな課題は山積しながらも、「やっぱり介護の仕事が好きで辞められない」という皆さんの熱い思いと技術に今日まで支えられてきました。介護職の方々の努力が報われる未来をつくっていくために、全国老施協として今後も行動してまいります。

※参考資料:介護サービス事業者11団体による調査結果資料「介護現場における物価高騰および賃上げの状況(令和5年4月)」


構成・取材・文=及川静/取材・文=菅野美和