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「令和6年度介護報酬改定に向けた要望・各論」 介護報酬改定の本格議論に向けて厚生労働省に申し入れ

2023.11 老施協 MONTHLY

POINT

  1. 基本報酬と基準費用額は物価・賃金の上昇に見合う大幅な増額
  2. 他業界と遜色のない賃上げが実現できる介護従事者の処遇改善

 全国老施協は10月25日、厚生労働省・間隆一郎老健局長宛て要望書「令和6年度介護報酬改定に向けた要望・各論」を斎須朋之審議官に提出した。

 大山知子会長は、令和4年度収支状況等調査(速報)の結果で具体的な数値を示した上で、介護現場は本当に必死だと、その窮状を訴えるとともに「厚労省として真剣に受け止めていただき、現下の状況に見合う大幅な報酬改定をお願いしたい」と要望した。

左から山田淳子副会長、田中雅英副会長、小泉立志副会長、大山知子会長、斎須朋之審議官、そのだ修光常任理事、瀬戸雅嗣副会長、石踊紳一郎副会長、里村浩常務理事
Ⅰ 重点事項

1.基本報酬の増額

2.介護従事者の処遇改善

3.食費・居住費に係る基準費用額の見直し

4.介護報酬改定の施行時期

Ⅱ各論要望

(1)特別養護老人ホーム

  1. 特別養護老人ホームの医療アクセスの向上
  2. 小規模特養(定員30人)の存続について
  3. 特例入所の更なる活用促進
  4. 日常生活継続支援加算の要件の見直し

(2)通所介護

  1. 入浴介助加算への更なる評価について
  2. 特別地域加算等への通所介護の適用
  3. 中重度ケア体制加算の複層化

(3)地域包括ケアシステムの深化・推進

  1. 認知症対応力の強化
  2. 複合型サービスのあり方

(4)自立支援・重度化防止に向けた取り組み

  1. 科学的介護情報システム(LIFE)の推進

(5)良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり

  1. 介護現場の生産性の向上
  2. 介護人材の確保

(6)制度の安定性・持続可能性の確保

  1. 複合的なサービス展開を可能とする人員配置基準等の見直し
  2. 処遇改善に関する加算の一本化

(7)地域共生社会の実現に向けた養護老人ホーム及び軽費老人ホーム・ケアハウスの財政支援

令和4年度収支状況等調査・速報

[表1] 赤字経営の特養が6割超に
令和4年度(速報値)では、赤字経営の特養は補助金を除いた場合で6割を超え、補助金を含む場合でも5割を超えるに至っている。
[表2] 特養、デイサービス共に収支差率 マイナスへ
特養の収支差率が、調査開始以来初めてマイナスになる極めて厳しい状況。デイサービスは、昨年に続きマイナスに。令和元年以降、急激な悪化傾向が続いている。

 要望書では、長期化する新型コロナウイルス感染症および物価高騰の影響で高齢者福祉介護事業の経営が厳しさを増しているという問題点に加え、高まる賃上げ機運に対応できないことで、他業種へ人材が流出し、人材難を招くであろう介護業界の危機的状況を説明。収支状況等調査の結果を見ても、法人(施設)の経営努力だけでは限界に来ていることが明らかであること、事業を継続できない事業者が増えることによる地域の介護崩壊を危惧しなければならないほどの緊急事態であることを強調した。令和6年度介護報酬改定においては、「プラス改定」であるだけでなく、物価、地域共生社会の構築を進めてほしい賃金の上昇に見合う大幅な介護報酬の増額を求めるとしている。

 また各論においては、特養についてはこれまでの論点に加えて特例入所の更なる活用促進と日常生活継続支援加算の要件の見直しについて、通所介護では入浴介助加算への更なる評価、特別地域加算等への通所介護の適用、中重度ケア体制加算と認知症加算の複層化等について、養護及び軽費・ケアハウスでは地方自治体に対する地方交付税の更なる措置と適切な運用、支援員・介護職員の処遇改善等といった、現場が必要としている具体的事項を盛り込んだ。

 斎須審議官は、介護事業者が日々現場の第一線で頑張り、高齢者を支えていていることは重々承知しているとした上で、「足元の状況を補正予算で対応した上で、その先にある介護報酬改定に向けてこれから調整していきたい」と回答した。意見交換では、特養やデイの現状についての認識を共有するとともに、養護、軽費・ケアハウスの処遇改善については総務省としっかり連携して対応していくことを確認した。