最新制度解説

速報(JS-Weekly)

〈機械振興協会経済研究所〉

介護・ケア分野におけるロボット市場拡大に向け提言

JS-Weekly No.863

#介護ロボット #市場拡大

介護ロボットは活用が十分に進んでいるとは言い難い状況

 一般財団法人機械振興協会経済研究所は、令和3年度「サービスロボットの市場発展および産業の成長に関する調査研究」研究委員会における議論や意見を基に、「介護・ケア分野におけるロボット市場拡大に向けた提言」を公表した。

 医療・介護現場の人材不足を解消する一翼を担う「介護ロボットの活用」に向け、国もさまざまな導入支援・補助を行っているが、一部を除いて活用が十分に進んでいるとは言い難い。研究所では、問題を改善・解決するために4つの提言を行っている。

 なお、ここでいうロボットとは、センサー、コンピューター、アクチュエーターからなるシステムで、人間の身体的要素を代替する、質量・速度を伴う機器・機械である。

「人手不足を解消する」という介護ロボットの導入目的を根本的に見直すことが必要、目利き役となるロボット導入の総合プランナー育成なども提言

 4つの提言は以下のとおり(要旨)

<提言1>
介護・ケア分野において「ロボット導入により人手不足解消を図る」から議論を始めることを止め、ロボット活用の仕方を根本的に考え直し、市場拡大の方向性を改めて探るべき
現状では、技術的な制約から、人間と同様に「介護をするロボット」はほぼ存在せず人手不足を補完できていない。単作業あるいは部分的のみ作業代替が可能なロボットが開発されているが、そうしたロボットを現状のまま介護・ケアの流れのなかで活用するとかえって介護従事者に追加の労力・手間をかけるだけになり、ロボット導入の動機が生まれない。このため、介護・ケア分野におけるロボット活用の仕方を根本的に考え直し、改めて市場拡大の方向性を探るべき。
<提言2>
「介護ロボット」から「介護支援ロボット」へとニーズを再整理し、さらに「介護支援ロボット」を導入する現場をタイプ別に整理する
直接介護に関わる業務・作業をロボットで代替・補完するのではなく、間接業務での「介護支援ロボット」活用を積極的に推進し、開発の調整体制、役割分担を見直す。さらに、介護支援ロボットを導入する現場を「タイプ」別などに整理し、ロボット導入により介護・ケアの現場で得られる効果などの情報はガイドライン化し、 開発前に提供できるようにする。
<提言3>
DX(デジタルトランスフォーメーション)等の活用により介護現場の全体的な業務改善を図り、そのなかでロボットの適正な導入を試みる。そのための総合プロデューサー・総合プランナーとしての「目利き」の導入を目指す
DX化とロボット活用という異なる分野の技術・情報を統合的に整理し、介護・ケア分野で適切に配置するためには、総合プロデューサー・総合プランナーとしての目利きが必要。目利きの育成に向け、行政、介護・ケア業界、DX関連企業、サービスロボット関連業界などの関係者が議論を深める必要がある。
<提言4>
人間と連携して動作を実行するロボット、人間に対して作動するロボットが介護・ケア分野で導入される時代に備え、開発の活性化とともに安全性基準などの制度準備を進める
人間と連携して動作をするロボットや人間に対して作動するロボットの開発には多額の投資が必要で、介護・ケア分野を最初の市場として開発される可能性は低いと思われる。しかし他の分野でのそうしたロボット開発が介護・ケア分野で活用されることへの期待はある。その際には介護・ケア分野でロボットを「安全」だけではなく、「安心」に利活用するための基準・規格の整備が求められる。