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〈政府〉
全世代型社会保障構築会議が報告書を提出、子育て、医療、介護等の改革像を示す
JS-Weekly No.860
#全世代型社会保障 #かかりつけ医機能
急速な少子高齢化と人口減少に対応するため少子化対策を前面に打ち出す
政府の全世代型社会保障構築本部は12月16日、同日に全世代型社会保障構築会議がまとめた報告書を了承した。
「全世代で支え合い、人口減少・超高齢社会の課題を克服する」をタイトルに掲げ、①「将来世代」の安心を保障する、②能力に応じて、全世代が支え合う、③個人の幸福とともに、社会全体を幸福にする、④制度を支える人材やサービス提供体制を重視する、⑤社会保障のDX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組む、の5つの基本理念を盛り込んだ。特に、少子化の進行は「国の存続そのものに関わる問題」と指摘し、子育て・若者世代への支援を急速かつ強力に整備することが最も緊急を要する取り組みとした。同時に、超高齢社会への備えとして、全ての世代で費用を出し合う仕組みの構築を明記した。各論では、①こども・⼦育て⽀援の充実、②働き⽅に中⽴的な社会保障制度等の構築、③医療・介護制度改⾰、④「地域共生社会」の実現の4つの分野ごとに、基本的方向、取り組むべき課題、今後の改革の工程について整理している。
かかりつけ医機能の制度整備などを足元の課題として早急に実施
こども・子育て支援の充実では、出産育児一時金の引き上げを足元の課題として早急に進める。育児休業給付の対象外となっている自営業者ら向けの現金給付制度の創設、児童手当の拡充や「恒久的な財源」なども盛り込んだが、これらについては、来年早急に具体化を進めるとした。
医療・介護保険制度の改革では、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という従来の構造を変えることなどを軸とし、高齢者の医療負担増を盛り込んだ。出産育児一時金は、現役世代の医療保険料で賄ってきたが、今後は75歳以上の後期高齢者にも段階的に負担を求める。
かかりつけ医機能が発揮される制度整備については、医療機関と患者それぞれの「手挙げ方式」とし、患者がかかりつけ医機能を担う医療機関を選択できる方式とした。同時に、医療機関が都道府県にかかりつけ医機能を報告し公表する制度の創設を示した。このほか、医療法人改革も足元の課題に位置付けた。
今後は社会保障審議会医療保険部会などでも議論を深めて制度の大枠を固め、令和5年の通常国会での関連法改正を目指す。
介護では、介護保険料負担や利⽤者負担の在り⽅などについて検討されていたが、報告書では「給付と負担の見直し、介護人材の確保が喫緊の課題となっている」と指摘するにとどまり、具体策はあげられていない。医療・介護等DXの推進、介護職員の働く環境の改善、次期介護保険事業計画に向けた具体的な改革については、来年、早急に検討を進めるべき項目に位置付けた。
「地域共生社会の実現」については、①一人ひとりに寄り添う支援とつながりの創出のほか、②住まいの確保が社会保障の重要な課題として位置付けられた。住宅の質の確保や既存の各制度の関係の整理も含めて議論を深め、必要な制度改正への検討を進めるべきとした。
岸田首相は、足元の課題について速やかな法案作成作業を要請
報告書を受け、岸田文雄首相は、緊急性の高い「足元の課題」について、「次期通常国会に向けて、厚生労働省において速やかに法案作成作業を進めるよう、お願いする」と要請した。
また、全世代型社会保障構築会議座長の清家篤氏は、報告後の会見で、平成25年の社会保障制度改革国民会議報告書の内容を振り返り、「地域の医療提供体制において、主役になってくるのがかかりつけ医機能だと理解している」と述べ、国民会議報告書の内容を団塊の世代が後期高齢者になる令和7年までに実現させる意味でも、「このかかりつけ医機能が実効性のあるものになっていくことが大切」として、今回の報告書は意義があると評価した。