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〈厚生労働省〉
次期介護保険制度改正に向け、介護サービスの基盤整備について議論
JS-Weekly No.855
#第101回介護保険部会 #特例入所 #複合型サービス
介護サービスの基盤整備について具体的な方向性を示す
厚生労働省は11月14日、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進をテーマに、第101回社会保障審議会介護保険部会を開催した。令和22年に向けた地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進を図るため、①生活を支える介護サービス基盤の整備、②さまざまな生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現、③保険者機能の強化という3つの観点が挙げられている。この日の会合では、介護サービス基盤の整備について具体的な議論を行った。論点として、次のものが挙げられている。
- 地域の実情に応じた介護サービスの基盤整備
- 在宅サービスの基盤整備
- ケアマネジメントの質の向上
- 在宅医療・介護連携
- 地域における高齢者リハビリテーションの推進
- 施設入所者への医療提供
- 施設サービス等の基盤整備
- 住まいと生活の一体的支援
- 介護情報利活用の推進
- 科学的介護の推進
- 財務状況等の見える化
- 介護現場の安全性の確保、リスクマネジメントの推進
- 高齢者虐待防止の推進
特養の要介護1・2の「特例入所」は柔軟な運用も可能に
介護サービスの基盤整備では、特別養護老人ホームの入所基準などが取り上げられた。特別養護老人ホームでは、入所者を原則として要介護3以上としているが、要介護1・2でも虐待などやむを得ない事情があれば「特例入所」が可能となっている。しかし、原則が厳格に適用され 「特例入所」が認められない地域があるなどその運用にばらつきがあると指摘されていた。さらに高齢者の人口減少や介護人材不足などもあり、特養の「空床」も目立ってきている。
全国老施協の小泉副会長はこの日の会合で、「地域によっては在宅サービスの供給量が不足しているため、特例入所の柔軟な適用が必要。自治体の理解が深まるようお願いしたい」と要請した。他の委員からも「特養に空きが生じてきているため、特例入所を柔軟化するといった見直しをお願いしたい」といった意見が複数あった。
厚生労働省では、空床の原因を詳細に把握・分析するとともに、要介護1・2の特例入所の趣旨を改めて明確にし、柔軟な運用を可能とするよう周知する方針だ。
通所・訪問を一体化した複合型サービスの創設へ
「在宅サービスの基盤整備」では、今後の単身・独居高齢者の増加や、介護ニーズが急増する都市部での状況を踏まえ、新たな複合型サービスの類型を作る考えが示された。多様化するサービス需要に柔軟に対応できるようにする。介護保険の複合型サービスには、現在、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせた看護小規模多機能型居宅介護がある。この複合型サービスのメニューを拡充し、通所介護と訪問介護を組み合わせ、一つの事業所で柔軟にサービス提供できるようにする。背景には、ホームヘルパーの人材不足や高齢化などもある。今後、介護報酬や運営基準などの詳細を詰め、令和6年度からの導入を目指す。
同時に、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護など、機能が類似・重複しているサービスについては、統合・整理も検討する。
全ての介護サービス事業者に財務諸表などの公表を義務付け
厚生労働省は、「財務状況等の見える化」として、全ての介護サービス事業者に財務諸表などの公表を義務付けることを提案した。既に社会福祉法人や障害福祉サービス事業者には、財務状況の公表が義務付けられている。政府が今年6月に閣議決定した「骨太の方針」でも、「費用の見える化」を要請されていた経緯がある。
具体的には、「介護サービス情報公表制度」を通じて、財務諸表などの経営に係る情報を定期的に都道府県知事に届け出ることを提案。介護職員1人あたりの賃金なども、公表の対象に加える意向も示した。
これらの提案について、委員からはおおむね了承を得た。次回会合では、「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」のうち、地域共生社会の実現、保険者機能の強化を中心に議論する。その次の会合で、「給付と負担の見直し」の議論を行い、12月から意見の取りまとめに入る予定。