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特集(制度関連)

3STEPでお手伝い!介護職員の「お悩み」解決します。 STEP3 メンタルヘルスケアのプロに心の持ちようを聞こう

2022.09 老施協 MONTHLY

仕事内容や自身の私生活・健康面、さらには待遇面や人間関係など、「お悩み」の内容は人それぞれ。
そんな誰にも相談できないお悩みを一人で抱え込んでいませんか?
そこで今回は、お悩み事情の動向からサイト活用のススメ、全国から相談できるお悩みサイト一覧をご紹介。
まずは気軽に相談して、心の負担を軽くすることから始めよう!


【STEP3】
メンタルヘルスケアのプロに心の持ちようを聞こう

老施協運営のアプリ&相談窓口と民間メディアを加えたタイプの異なる3媒体に、相談の傾向や有効な利用方法などをお伺いした。


老施協運営アプリ
老施協.com

https://app.adjust.com/hmjux26

全国⽼施協 経営戦略室室⻑
社会福祉法人
秋川あすなろ会 理事長

今 裕司さん

「老施協.com」 運営
株式会社テンシア 取締役

三辻大志さん

相談できる場所があることを職員同士で共有し合おう

「介護に関するニュースやお役立ち情報の配信、登録者同士の意見交換をする全国老施協のコミュニティーアプリです。匿名で登録ができ、談話室機能で介助技術から労働環境、介護報酬まで、幅広い疑問や悩みをご利用者が相談し合っています。私自身も利用者として、意見の押し付けにならないよう配慮しながら、悩みにお答えしています。特に認知症のご相談に関しては、認知症介護指導者の方に専門的なアドバイスをコメントいただくシステムも構築しています」

三辻「介護職の方のみが集っているので、“職場の人には話しづらいけれど、同じ立場の人に聞いてほしい”そんな思いに応えられる場です。介護の方法や環境が適切なのかという悩み相談から、日々の“介護職のあるある”など日頃の小さな悩みが共有できるほか、全国の施設や事業所の方々と情報共有できるのが強みです。また、リーダー職や施設長など管理職の参加が多いのも特徴ですね。安心安全に使うためにはネガティブにならない雰囲気づくりも大切。AIのチェックシステムで誹謗中傷のような発言は表示されないようになっています」

「コロナ禍はマスクで表情が分かりづらくコミュニケーションが取りづらい状況が続いていると、私自身現場で感じています。職員同士が職場で少しでも直接言葉を交わしたり変化に気付いたりできるように、物理的な距離を近くすることが大切だと思います。つらいときはセルフケアに考えがなかなか及びません。同僚に異変を感じたら声を掛けたり、相談窓口をさりげなく伝えたりすることもできます。悩んでいると抱え込みがちになりますが、意外と似たような悩みを抱えている方もいらっしゃいます。近い人に相談することが難しいようでしたら、JSここメンのような相談窓口を利用する、愚痴のように老施協.comを利用するなど、セルフケアに一歩踏み出していただきたいです」

三辻「個人は特定できないようになっているので、気軽に参加してください」

POINT

現場で働いている職員同士がトークを展開し、小さな悩みから相談し合える場所として活用


老施協運営相談窓口
こころメンテ(JSここメン)

https://js-cocomen.com/

「こころメンテ」
労働衛生コンサルタント
産業医科大学 公衆衛生学 助教

得津 慶さん

「こころメンテ」心理カウンセラー
株式会社アイディアヒューマン
サポートサービス 本社統括

髙溝恵子さん

一人で抱え込み過ぎないで 早めに相談窓口にアプローチを

得津「コロナ禍においてメンタルヘルスケアの必要性から、’20年9月に老施協がスタートした相談窓口です。相談には産業医や保健師によるメール、電話、心理カウンセラーによるLINEチャットの3つの方法があり、利用しやすいものを選んでいただけます。産業医は就労状況などの問題解決を、心理カウンセラーはカウンセリングを中心にお伺いしています」

高溝「チャットは声を出す必要がなく気軽に打てるため、相談することへの心理的なハードルが下がり、日々の小さな悩みから深い悩みまでさまざまなお悩みが寄せられます。コロナ感染症対策のため自粛生活が長引いている上、プライベートや仕事での突発事態にも対応が求められることへの悩みが最近多いですね。寄り添って一緒に考えることを心掛けています」

得津「個人的な悩みに思えても職場環境に要因があることが多いです。休職を考えるような状態でも精神科受診への抵抗感や復職への不安から働き続けている方がいらっしゃいます。産業医はそうした不安や、治療から復帰の流れについてしっかりご説明し、相談者が根本的な解決策を得られるように対応しています」

高溝「一人で抱え込んでしまうと、どんどん思考がマイナスになっていってしまいます。この仕事をしていて楽しいことは何か、喜びは何かを思い出していただけるお手伝いをしたいと思っています。愚痴でもなんでも話してください。メンタルな面での専門家に聞いてほしいという方はぜひアプローチしてみてください」

得津「最近はスマホで連絡網が見えてしまうなど、休日もどこかで仕事のことを考えてしまって頭や心がしっかり休めていない方が多くいらっしゃいます。オンオフを切り替えるタイミングを自分自身でつくることが大切です。きちんとリラックスできているのか、まずはご自身の心の動きに関心を向けてみましょう。心に余裕がないと知らず知らずに健康を害してしまうので、我慢しないで相談してください」

POINT

産業医や心理カウンセラーなど、専門職の方に電話、メール、チャットで、匿名で相談


民間メディア
ケアきょう

https://carekyo.com/

「ケアきょう」運営
株式会社カイゴメディア
代表取締役

向笠 元さん

実務もメンタルも情報を活用し仕事の継続につなげよう

「魅力ある介護職を長く続けていただきたいという思いから、SNSを中心に、動画や記事で介護情報を発信するデジタルメディアです。YouTube、Twitterなど延べ約20万人にご登録いただいています。お悩み相談でも多く寄せられる介護技術とストレス発散に関するコンテンツに特に力を入れ、他の介護職員も同じような悩みを抱えていることを共有・共感できるような情報を発信しています。また、職場環境や待遇に関しての悩みも多く寄せられるので、処遇改善やキャリアアップ、転職などの情報も積極的に発信しています。

 相談窓口としては、匿名で利用できる無料LINE相談で、介護の現場経験のある介護福祉士などがご相談を受けています。処遇改善など実務的な部分から、暴言暴力をされるご利用者様への心労など、寄せられるお悩みはさまざまですね。誰かに話を聞いてもらいたいという方にも気軽にアプローチしていただけますし、法律家やカウンセラーなど専門家が必要なご相談には提携先のご紹介もしています。

 そしてもう一つはオンラインセミナー。登録者のコミュニティー活動を活発に行っており、認知症、服薬介助、介護の事故などさまざまなテーマで専門家を招き、10人ほどの小規模なものから300人規模のものまで勉強会や相談会を開催しています。参加者は特養、老健、有料などで働く現場の方ばかり。専門家に質問するだけでなく、参加者同士の情報交換も可能です。顔を見ながら話ができるので、交流も深まります。知人に遭遇するリスクを減らすため、参加者の勤務先の都道府県は異なるよう配慮していますし、匿名での参加も可能です。

 夜勤・日勤の連続勤務が続くなど、過酷な労働状況で働いている方もいらっしゃいます。体力が削られると精神的にもつらくなり、自分を追い込んでしまいがちです。LINEやセミナーなどご自分に合った窓口で相談をしながら、お仕事を続けていただければと思います」

POINT

介護職経験者へのLINE相談のほか、相談会や勉強会などのオンラインセミナーを開催


文=岸上佳緒里