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3STEPでお手伝い!介護職員の「お悩み」解決します。 STEP1 みんなが抱えているお悩みを知ろう

2022.09 老施協 MONTHLY

仕事内容や自身の私生活・健康面、さらには待遇面や人間関係など、「お悩み」の内容は人それぞれ。
そんな誰にも相談できないお悩みを一人で抱え込んでいませんか?
そこで今回は、お悩み事情の動向からサイト活用のススメ、全国から相談できるお悩みサイト一覧をご紹介。
まずは気軽に相談して、心の負担を軽くすることから始めよう!


【STEP1】
みんなが抱えているお悩みを知ろう

介護職員が抱える今の「お悩み」を知るべく、2019年に行ったウェブアンケートを基に、緊急アンケートを2022年に実施。コロナ前とコロナ後で分かった、現場で働く人が感じているお悩みの違いをご紹介する。

回答者プロフィール
全ての表は「令和元年度 会員の意識調査 ウェブアンケート結果報告書」(2020年3月9日 全国老人福祉施設協議会 経営戦略室 発表)より引用

老施協アンケートにおける職員たちの「お悩み」は?

 日々、介護職員たちは、どういった悩みを抱えて現場に立っているのだろうか? その状況を知るために、老施協が’19年の9月30日から1カ月の間、全国の老施協会員に向けて行ったウェブアンケートからひもといていこう。

 20〜69歳の男女から、総数5725通の回答があった。その内訳は、上の回答者プロフィールの通り。男女比は女性が54・4%とやや多めで、年齢層は40代の31・9%をトップに、50代、30代の順に回答数が多く、広い居住地における回答サンプルが採れていることが分かる。その役職は一般職が6割を超えており、実際に介護の現場で利用者と接している人たちからの意見が多かった。

職場に対する満足度
Q.今の職場に対する満足度を教えてください。

 さらに上に示した、回答者の「職場に対する満足度」を見ると、4割弱が「満足」と答え、14・8%が「不満」と答えた。その回答を職種別に振り分けたところ、理事長・施設長に比べて、管理職・一般職において満足度が下がり、不満度が上がっている。

 この「職場に対する満足度」を項目別に分けたのが、下のグラフ。「不満」と答えた割合は「給与・待遇」「設備・環境」「業務量」といった項目の度合いが高い。

職場に対する満足度
Q.今の職場に対する満足度を教えてください。

老施協が全国の老施協会員(20〜69歳の男女)に向けて行ったウェブアンケート(2019年9月30日〜10月31日の期間で実施)より、「職場に対する満足度」の結果を表したグラフ。どの項目も「どちらでもない」+「不満」が「満足」を上回る結果で、特に「自分の将来性」に関しては、現在の環境下で満足と思っていない職員が8割以上もいることが分かった。

「令和元年度 会員の意識調査 ウェブアンケート結果報告書」(2020年3月9日 全国老人福祉施設協議会 経営戦略室 発表)より引用

 これらの回答を念頭に置いた「何を変えたら職場がもっとよくなると思いますか?」という問いに対し、それぞれの職種別に表したのが下のグラフとなる。いずれも「人間関係・チームワーク」「給与・待遇」が1・2位を占めているが、一般職になると順番が入れ替わる。また管理職・一般職になると、共に「業務量」の改善希望が4割を超えていることも、注目すべきポイントと言える。

職場への変更希望内容
Q.何を変えたら職場がもっとよくなると思いますか?

新型コロナウイルスによって緊張状態が続く職員の生活

 前述した通り、ここまで紹介した老施協のアンケートは’19年に行われたものだ。それを踏まえて、本誌では今回新たに10施設に追加のアンケートを実施、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、現場で新たに発生した問題点・改善点などもあわせて質問した。

「ご自身を含め介護職員のお悩みの理由で多いのは?」という質問については、「低賃金で重労働。さらに時間外労働もあり、有休が取れないので離職者が絶えない」(宮城県/39歳/男/特別養護老人ホーム介護員)といった、労働環境に対する悩みが多かった。

 加えて「ここ数年で増えたと感じるお悩みや相談はありますか?」という設問には「コロナの濃厚接触での待機で職員が手薄になったこと」(宮城県)、「急な勤務変更や超勤」(宮城県/24歳/女/介護職員)といったコロナ禍での勤務状況の変化に関する回答が多かった。その上で「コロナ関連で日常生活から神経を使わされる」(茨城県/34歳/男/ユニットリーダー)のように、普段から緊張感のある生活を送らざるを得ず、休日なのに外出できないような状況が続いていることから「ストレス解消の場面が少なくなってきている」(東京都/48歳/男/副施設長)という意見も見られる。

 こうした中、妊活、育児など、職員自身の生活の悩みだけではなく「自分の力量が足りず他のスタッフに迷惑をかけているのではないかという相談」(秋田県/37歳/女/介護支援専門員)を持ちかけられる傾向もあるという。これらについて「具体的に話を聞き、ケア方法や技術についてアドバイスした」(同前)と、限られた時間の中で対応を行っている。

 張り詰めた状況下で職務を行わねばならない中、悩みを話し合う場を設けることが「コロナ渦の影響で、なかなかできない」(宮崎県)という意見も寄せられた。

「悩むことは一生懸命に努力しているからだと思います。悩みを相談できる職場の雰囲気づくり、リラックスできる環境づくりに力を入れていきます」(東京都/46歳/男/施設長)、「悩みを一人で抱え込まず、周りの誰かに相談してほしい。無理をし過ぎる前に相談する。上司に相談してダメなら、他の方法を考える。みんなが相談し合える仕組みが必要です」(広島県/32歳/女/生活相談員)という意見の通り、職員たちの悩みに対するケア対策を行う時期が本格的にきているように思われる。

 実際に「プライバシーの保護に十分配慮した対応をしている」(秋田県/38歳/男/特養主任生活相談員兼介護支援専門員)と言う施設も見られるようになった。

 次回からは、ここで紹介したような「お悩み」を解決する実践的な手段をご紹介していこう。


文=一角二朗