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全国老施協、介護保険制度等の見直しに関する要望書 懸案事項について検討・確認 ほか
2022.08 老施協 MONTHLY
全国老施協、介護保険制度等の見直しに関する要望書
懸案事項について検討・確認
POINT
- さまざまな施設が所属する団体として厚労省への意見を検討
- 軽度者(要介護1・2)の地域支援事業への移行には反対の姿勢を明らかに
全国老施協は、第4回制度政策検討会議で、厚生労働省に提出する意見書「介護保険制度の見直しに関する介護現場の要望について」の修正項目・内容についての検討を行った。主要検討事項は、次の通り。
- 業務の効率化・大規模化・協働化
個別の状況への対策が不可欠である。成果を上げ広めていくには、国主体の特別枠の補助を求める旨を盛り込む。 - 介護サービスの共働化に対するさらなる支援
社会福祉連携推進法人の制度については、設置・運営の負担に比べメリットが弱い。設置後当面の運営費補助(人件費など)についての要望を盛り込む。 - 管理者の基準見直し
兼務制限や資格基準の見直しを求める。現場重視で先行できる幅を広げてほしい。 - 社会福祉法人会計関係の合理化
会計監査人配置法人に対する行政の会計監査の省略や、現況報告書の重複提出(行政と福祉医療機構)の見直しを求める。
要介護1・2の地域支援事業への移行については反対を明確に打ち出す。しかし、軽度者が利用対象から外れた場合でもデイサービスセンターとして存続できるよう、他事業所との差別化(リハビリ特化型などの特徴づけ)や小規模多機能への転換なども視野に入れた検討が必要となってくるのではないかとの意見もあった。
全国老施協、令和4年度事業継続等相談支援事業
デイサービスの経営改善に向けたプログラム
POINT
- 事業所が置かれている状況分析や目標がワークで明らかに
- 個別相談や質問指導などで経営改善への着手、成果創出を後押し
全国老施協では、デイサービスの事業継続等相談支援事業を開始した。近年のデイサービスセンターにとって厳しい経営動向を背景とし、会員事業所の経営改善に資するため、デイサービスセンター部会の事業として企画されたもの。今回参加する25事業所は、株式会社TRAPEの指導による、全6回のコンサルティング(オンライン、集団指導方式)と個別相談を経て、経営改善計画を策定、着手し成果創出を目指す。
各回、講義のほかにワークの時間を設け、講師のアドバイスを受けながら、その場で調査や分析をしたり、シートに記入したりすることで、講義内容を具体化していく。その場の対話で新たな気付きも期待できる。
事業終了後には、参加事業所による報告会を設けるほか、取り組みのプロセスをまとめたリポートが作成され、今回参加しなかった事業所も課題設定やアプローチの方法などについて、情報を共有できる。
構成・テーマ | 第1回 | デイサービス経営概論と目指すサービスビジョン |
---|---|---|
第2回 | 現状把握(課題の全体像) | |
第3回 | 優先課題の絞り込みと原因分析 | |
第4回 | 目標設定 | |
第5回 | アプローチ・行動計画の具体化 | |
第6回 | 経営改善計画完成・経営者の役割 |
地方交付税に関する合同勉強会を開催
養護、軽費・ケアハウス職員の処遇改善に向けて
POINT
- 地方交付税制度に関する基礎的知識の講義と質疑応答・意見交換を実施
- この勉強会をファーストステップとして今後のさらなる検討につなげる
全国老施協の養護老人ホーム部会と軽費老人ホーム・ケアハウス部会は7月19日、林正義氏(東京大学大学院経済学研究科教授)を講師に招き、地方交付税に関する合同勉強会を開催した。この勉強会は、今年度より地方交付税措置がなされた養護、軽費・ケアハウスの職員の処遇改善に関連したもので、念頭に地方交付税の知識をより深める目的で開催された。
はじめに、林教授より地方交付税における基準財政需要額とその積算方法、一般財源化と交付税措置、国の予算と地方交付税の関係など、地方交付税制度の基礎的知識を中心に講義が行われた。
その後の質疑応答や意見交換では、地方交付税の実際の金額は積算可能かどうかの質問があり、地方交付税は年に数回に分けて交付され、年度初めに金額は確定しておらず、積算は難しいとのことであった。また、一般財源の使途に強制力を持たせる可能性について意見交換が行われ、現状の制度では難しいが、一般財源とはいえ本来的には法律等で定められている国の政策がしっかりと実施されるべきとされた。
今後、両部会では本勉強会をファーストステップとして、養護、軽費・ケアハウスの処遇改善をさらに進めるため、地方交付税の検討を重ねていくとしている。
全国老施協版介護ICT実証モデル事業
導入後タイムスタディ、データ収集分析、結果取りまとめへ
POINT
- 全国老施協版介護ICT導入モデル(案)策定へ
- 各実証モデル施設には調査・分析結果をリポートにまとめフィードバック
全国老施協は7月22日、第4回ロボット・ICT推進委員会を開催した。全国8ブロック8施設で展開している本事業もいよいよ終盤に差し掛かっている。
4〜5月に介護ICT機器導入後、タイムスタディと定量調査で3カ月後比較などを行い、実態を把握しながらPDCAサイクルを回してきた。
7〜8月には、各実証モデル施設ごとの業務改善・生産性向上の効果と課題等のタイムスタディの結果、介護記録等の調査、職員向けアンケート調査等のデータを収集、分析し、各施設ごとにリポートを作成して、フィードバックを行う。全施設の分析内容を取りまとめ、事業報告書を作成。業務改善・生産性向上の効果が最大限となる施設条件や取り組み内容を明確化し、「全国老施協版介護ICT導入モデル(案)」を策定する。
以上の令和4年度事業による、モデル実証と実態の把握後、ウェブやセミナーによる情報発信を行う。実証を踏まえたセミナー事業は、デジタル化が遅れる施設への導入支援にもなり得る。これらの実績に基づき、2023年以降、実証モデル事業、導入状況調査、情報提供、セミナー、導入支援について全国展開を図る。資金調達や人員体制の構築など全国老施協のみでの実施が難しいものなどは引き続き検討していく。
全国老施協、医療・介護連携の進め方について協議
第2回 老施協総研運営委員会
POINT
- 特養が行うべき医療の範囲を明確にし、配置医が担う範囲の見直しを
- 調査結果は有識者を招いて分析を行い、要望へ結び付ける
全国老施協は7月13日に、第2回老施協総研運営委員会を開催、医療・介護連携における今後の事業の進め方について検討した。特養入所者の重度化や医療ニーズは年々高まっているが、配置医師の役割が「日常的な健康管理」にとどまる現行制度では、全てに対応できていない。特養の配置医師が担う健康管理とそれを超える部分について実態を調査し、現在の特養における医療提供体制の問題点の整理を行う。医療・介護連携実態調査(仮称)の結果を整理し、医療提供の仕組みや報酬についての政策提言へとつなげていく。
今後の上記取り組みに対するスケジュールは、医療・介護連携ワーキングチームを開催して調査項目等を検討し、実態調査を実施、その後、医療・介護連携ワーキングチームで行った調査結果を整理、分析して要望につなげるポイントを絞っていく。
委員からの意見としては、「配置医が行う健康管理を超える行為と診療報酬対象の行為との線引きが曖昧なので、はっきりさせるべき」、「前提として、特養の役割を今一度確認し、明確にする必要がある」、「嘱託医がどのくらい施設に来て、どの程度の報酬をもらっているのか、把握が必要」、「施設により状況が違うので、一律で決めず、選択できるとよい」などがあった。
厚労省、総合的な介護人材の確保や介護現場の生産性向上の施策を検討
POINT
- 社会保障審議会介護保険部会、専門委員会で検討
- 生産性向上の取り組みの効果を検証し介護報酬改定検討のエビデンスに
厚生労働省は、社会保障審議会介護保険部会等で、介護人材の確保と介護現場の生産性向上について検討を重ねた。第95回介護保険部会での総合的な介護人材確保の主な取り組みは次の5つに整理され報告された。
①介護職員の処遇改善、②多様な人材の確保・育成、③離職防止・定着促進・生産性向上、④介護職の魅力向上、⑤外国人材の受け入れ環境整備。
生産性の向上に資するガイドラインでは、
①職場環境の整備、②業務の明確化と役割分担、③手順書の作成、④記録・報告様式の工夫、⑤情報共有の工夫、⑥OJTの仕組みづくり、⑦理念・行動指針の徹底が挙げられている。
文書に係る負担軽減については、専門委員会で議論が重ねられ、介護ソフトの導入などにより、行政が求める帳票等の文書量半減を目指している。
また、第211回介護給付費分科会では、次期介護報酬改定の検討材料とするため、生産性向上への取り組みの効果を測定する実証事業を行う方針を示した。見守り機器等を利用した夜間見守りや介護ロボットの活用などについて今年度末に取りまとめを行う予定。
取材・文=早坂美佐緒(東京コア)