キャリアアップ
女性活躍の核心 その1 管理職比率と不利の認識
介護の現場に必要な「革新」や「確信」や 「核心」をその分野の専門家に伺います。
注目すべき 全国老施協の取り組み!
近年の重要キーワードの一つである「女性活躍」は、2016年4月から施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が、その根拠になっています。しかし、「経済」「教育」「健康」「政治」の四つの分野における男女格差の度合いを示すジェンダーギャップ指数(GGI)の2023年の結果をみると、日本は146カ国中125位で過去最低でした。
「教育」(47位)と「健康」(59位)は上位にあることから、「経済」と「政治」での男女格差がいかに大きいかがわかります。特に「経済」に関しては、労働参加率や男女の賃金格差のほか、管理職の男女比の格差が大きく(133位)なっています。
そうした中、全国老施協では大山会長のもと、女性役員比率は33・3%を達成し、女性キャリアアップ推進部会(以下、推進部会)も設置されました。介護関係はもちろんのこと、福祉業界団体全体をみてもこうしたことを実現している組織はみられません。まさに注目すべき先駆的な取り組みといえるでしょう。
管理職比率の男女差と 非管理職が感じている 性差による不利の認識
推進部会では女性管理職の起用(多様性の確保)を通した誰もが働きやすい職場づくりや人材確保・育成、研究事業の推進など、さまざまな取り組みに着手しています。その中で、「女性のキャリアアップに関する意識調査」(以下、調査)を2024年1月~2月に実施しています。今回、その結果の一部を紹介することの許可を得ましたので、要点を取り上げます。
まず回答者数は全体で2238人。その「性別内訳」は70・3%が女性、29・3%が男性でした。
回答者の「年齢」は、男性に比べて30~39歳の層の女性が少ない結果でした。一方、「勤続年数」では男女差があまりみられませんでしたが、「管理職であるという回答」は、男性が39・8%であるのに対して女性は13・4%で、男女で3倍以上の開きがありました。次に、非管理職の方の「キャリアアップに対する関心」をみますと、関心があると回答した男性は58・7%、女性は45・1%で、男性の方が関心が高いといえますが、管理職比率ほどの差はありません。
そこで、非管理職の方に「キャリアアップについて女性は男性に比べて不利だと思うか」を尋ねた結果をみると「そう思う」という回答は女性が49・6%であるのに対し、男性は26・0%にとどまり、認識に隔たりがありました。ただ、「女性が不利だと思うと回答した理由」は、全体で「妊娠・子育てなどでキャリアが寸断される」が72・8%で、「管理職=男性という周囲の風潮(固定概念)がある」が51・8%で、この傾向は男女ともに共通していました。
女性のライフイベント対応と ステレオタイプからの脱却
今回の調査回答者も結婚や出産・子育てなどのライフイベントに重なるといえる年齢層(30~39歳)の女性が少なかったことから、仕事との両立が難しい状況があることがうかがえます。ただ、近年では子育てなどによる時短労働の女性が管理職になっている事例が出てきています。
東京都は2024年度、育児などで時短勤務をしている女性を管理職として登用する企業などに30万円の奨励金を支給する制度を制定しましたので、制度面では女性の両立支援や管理職になることへの環境整備が進みつつあるといえそうです。
しかし、それだけでは女性が不利と感じる状況の解決にはならないでしょうし、管理職=男性という固定観念(ステレオタイプ)からの脱却も求められます。次回は今回の調査の管理職の回答もみながら、女性活躍に向けた課題などについて検討をしてみたいと思います 。