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介護のかくしん

コミュニケーションの核心 その3 断り上手

介護の現場に必要な「革新」や「確信」や 「核心」をその分野の専門家に伺います。


誰にとってもむずかしい 依頼やお誘いへの断り方

 社会生活を営んでいれば、誰もがどうしても断らなければならない事態に遭遇するものです。できるだけ気まずい思いをせず、相手との関係を壊さずに断るにはどうしたらよいかと考えると、気が重くなるという方も多いことでしょう。

 誰かに何かを依頼されるということは、単純にその関係性だけをみると自分の方が有利な立場です。

 だからこそ相手の反感をかわないように細心の注意が必要になります。相手が上司やご利用者、そのご家族などであればなおさら慎重になる必要があります。

 最初に気をつけなければならないのは、〝これは断ることになる〟と思っても相手の話を丁寧にしっかりと聞くこと。〝忙しいけれど、何とかしてあげられないか。よいアイデアはないか〟という気持ちで耳を傾ける。こういう姿勢、こういう心構えが相手に伝わります。そして、依頼する相手に自分を選んでくれたことに感謝の念を示しましょう。

 

「断る」のではなく 応じられない理由を「説得」する

 今後の相手との関係を視野に入れた場合、ただ「無理です」「できません」というのではなく、どうして断るのか、その理由を丁寧に説明して納得してもらった方が得策です。相手の話をしっかりと聞きつつ、説得ポイントを探しましょう。

 とっさに挙げがちな「時間がない」「決まりでできない」などの理由は自分本位になりがちで、それをそのまま伝えるだけでは相手は納得してくれません。

 「大変申し訳ないのですが~」「こちらも残念なのですが~」「今回に限っては~」など、クッションになることばを入れつつ、「時間に間に合わせようとすると、仕事が雑になりそう」「残念だけど私が引き受けることで○ ○さんが怒られちゃう」などと、こちらに依頼することが相手にとって最善ではないということを具体的にわかりやすく説得しましょう。断りの極意は、相手に「なるほど、そういうことであればやむを得ない」と思ってもらうことなのです。

 

ビジネスマンの「説得術」には 断り上手のヒントがある

 説得したり、お断りをする相手は千差万別。絶対成功するノウハウはありません。しかしどうすれば少しでも上手に断れるかは、左記の『ビジネスマンの説得術』が参考になります。

小手先の対応で 心のしこりを残さない

 相手に配慮しすぎて「考えておきます」のような曖昧な返事で期待をもたせるのもよくありません。可能性が半分以下ならまずお断りして、幸いにもオッケーになった場合にその旨を伝えた方が人間関係はよくなります。

 事実でないことは必ず後でわかるものなので、うそやごまかしは厳禁です。

「断る」ことから よりよい関係が始まることも!

 ここまで上手な断り方を紹介しましたが、さらに上のレベルとして、依頼は断ったけれど、相手の信頼を高める方法があります。それが代案や新しいアイデアを出すことです。

 「 経験豊富な○ ○さんに私から頼んでみます」「買い物は紅葉がきれいになる秋ではダメですか?」などの提案をすることで、より誠意は伝わりやすくなり、かえって相手からの信頼が増すこともあるものです。

 以上、3回にわたってコミュニケーションのコツをお話ししてきました。話力磨きには、行動する勇気と実践が大切です。いつものように無難にやっていては成長はありません。一歩を踏み出す勇気をもってください。

 

 

取材・文=池田佳寿子