キャリアアップ

介護のかくしん

コミュニケーションの核心 その2 上司と部下

介護の現場に必要な「革新」や「確信」や 「核心」をその分野の専門家に伺います。


立場の違いではなく役割の違いという大前提

 働き方の多様性が叫ばれていますが、介護の現場はその最先端。性別はもちろん年代もさまざまな人たちが働いています。他の業界でキャリアを積んできた方も多く、若い上司がいたり、年長者の部下がいたり、管理職、正社員、パートと職位も異なると、どう話しかけていいものかと悩む場合も多いと思います。  でも上司と部下、発注者と受注者、利用者と従事者は上下関係があるのではなく、それぞれに役割が違い、その役割にできるだけ忠実であるべきだと考えると、少し楽になるのではないでしょうか。

 役割だからこそ、それはいつ入れ替わってもおかしくなく、あなたが部下になったり、利用者になったりする可能性もあるわけです。そんなとき、今のあなたの立場の人にどのように話しかけてもらえると快いかを考えてみることもヒントになるのではないでしょうか。

 今回はこうした前提のもとで、年齢や性別に関わりなく、上司から部下へ、部下から上司へはどう話せば効果的かを紹介します。

 

部下の自尊心を満たすことが何より大事な時代

 上司から部下への発言では、自分ではそのつもりがなくてもちょっとしたことばづかいが相手の反感をかってしまうこともあるので、何よりも相手の自尊心を大切にすることを強く意識する必要があります。

 例えば仕事を頼むときには、義務として押しつけるのではなく、「ゴミ捨ても手伝ってもらえますか?」などと相手を頼っている言い方をする。連絡や報告を促したいときは、「その後、○ ○さんの様子に問題はありませんか」「書類を作るのが負担になっていませんか」などと相手を気遣う言い方をすることで進捗状況を教えてもらったり、作業完了の報告をしてもらう方法もあります。

 上司には作業全体を目標通りに完遂させる役割があります。仕事がスムーズに進むためにはどうすればよいかを一番に考えて言葉を発するようにしてみてください。

 そしてこんな気の使い方を若い部下に対してもする必要があるのが、「今」という時代なのです。

 

やる気を引き出して〝お願い上手〟になる3つのコツ

 仕事に ついてまわる〝依頼〟のシーン。頼み方次第で相手のモチベーションが大きく変わります。依頼を快く引き受けてもらうには、日頃から左記の3つのポイントを押さえておくことが大切です。

今回のコツの集大成が「注意(助言)する」ときに生きる

 部下に注意したり、行動を改めてもらうことは上司の重要な役割です。苦手意識のある方も多いと思いますが、チームワークが大事な職場ほど、個人のミスは早めに是正しておく必要があります。

 相手の自尊心を傷つけないようにしながら、あくまでも業務のために「今、伝えるべきことだけ」を話すようにしましょう。そして、どうすれば改善できるのか一緒に考えようとする姿勢が、効果を最大限に高めるのです。

人を育てる「7つほめ、3つ叱る」

 注意される立場にたてば、それは嫌なことで、言い訳したり反発したくなったりします。繰り返されれば、聞き流すようになるかもしれません。 それを和らげるのが〝ほめる〟ことによる〝やる気ホルモン〟の注入です。

 先人もそれは知っていたようで、多くのことわざや名言も残っています。ぜひ実践してみてください。

 

取材・文=池田佳寿子