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特集(制度関連)

全国老人福祉施設協議会 会長 大山知子 新年のごあいさつ 〜より良い介護のための、新たな目標と取り組み~

2024.01 老施協 MONTHLY

2024年度介護報酬改定に向けて全国老施協は昨年、都道府県・指定都市老施協らと協同で「地域の福祉・介護を守る活動」を全国展開。そうして得た介護報酬1.59%プラス改定の結果を踏まえ、大山知子会長に新年の心境や抱負を伺った。


全国老人福祉施設協議会 会長
社会福祉法人蓬愛会 理事長

大山知子


本年も地域の介護基盤を守る行動を!

介護現場の厳しい現実にプラス改定はどう生かされるか

 新年早々に発生した能登半島地震では、北陸地方を中心に多くの施設で停電や断水、建物被害に遭われました。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、非常時も介護施設としての責務を果たされていますことに敬意を表します。今後、復旧作業を進めていただくことになりますが、全国老施協ではDWAT派遣による人的支援や義援金の募集など必要な支援をしてまいります。

 介護報酬改定につきましては昨年、各都道府県・指定都市老施協の皆さまにご協力いただきながら国・地元選出の国会議員などへの要望活動に奔走いたしました。その結果、介護報酬1.59%のプラス改定となり、うちo.98%は介護職員の賃上げ分、0.61%は介護サービス本体などに充てられることに。私どもの目標値プラス9%(※1)には遠く及ばずながら、診療および障害福祉の報酬を上回る改定率となったこと、介護職員の処遇改善に関する加算の一本化が決まったことは、請求事務が簡素化され取得率向上につながる意味で、一定の成果が得られたといえるでしょう。しかし、コロナ禍や物価高の影響で赤字経営となった6割強の施設を救い、他産業との賃金格差を解消するには不十分であると言わざるを得ません。

 私どもは今改定の報酬内容で次期改定までの3年間を耐えしのぐのではなく、中間年でも介護業界の実態を国に訴え、ベースアップや賃金・物価スライドの導入を求めていくべきだと感じております。

高齢者介護の基盤を守るべく新たな経営支援事業を開始

 近年、過疎地では経営難の施設が増え、地域で支え合ってきた介護福祉の基盤が揺らいでいます。

 こうした事態に対応すべく、全国老施協では本年1月よりWAM(独立行政法人福祉医療機構)との共同事業として、経営診断支援事業を開始しました。WAMが施設ごとの決算書を基に生産性や収益性などの視点から簡易経営診断を実施。その費用の一部を本会が補助いたします。簡易診断とはいえ、50ページに及ぶ経営分析指標が掲載されており、今後の事業計画に生かせる内容ですので、ぜひご活用ください。

 また、研究助成事業などの推進を通して高齢者介護の先端技術を探求していくことが、私どもの社会貢献の形であります。数ある研究事業の中から「全国老施協版介護ICT導入モデル事業」などを行った本会員施設が、昨年、都道府県の推薦により国の「令和5年度介護職員の働きやすい職場環境づくり」表彰を多数受賞しました。砧ホーム(東京都)と地域密着型特別養護老人ホームささづ苑かすが(富山県)は内閣総理大臣表彰を受賞。厚生労働大臣表彰優良賞は2施設、同奨励賞27施設という結果は大変誇らしいことです。

 全国老施協では、そのほか女性がキャリアアップしやすい職場環境改善を足掛かりに、多世代や外国人の職員らも活躍できる施設づくりをサポートいたします。本年も共に行動し、地域の高齢者介護の基盤を守ってまいりましょう!

※1=賃上げや物価高に対応するための1年約3%ずつのプラス


構成=及川静/取材・文=菅野美和