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毎日10分で体がラクになる!介護職員のための簡単ストレッチ&トレーニング②
2023.06 老施協 MONTHLY
移乗介助や入浴介助、体位変換などで体に負担がかかる介護職。体の不調は、仕事だけではなく日常生活にも影響を及ぼす恐れが。今回は、毎日繰り返すだけで体が軽くなるストレッチ&トレーニングを紹介。職場や就寝前など生活に取り入れよう!
体のメカニズムを知ると体の負担が確実に低減!
疲れやだるさを感じにくい体をつくるには日々のトレーニングが一番。体を鍛えた筋肉隆々の〝マッチョ介護士〟が働くひだまりグループの介護士で、フィットネス大会にも出場する本格派の丹羽凌也さんと滝昇悟さんに、介護において鍛えるメリットを聞いた。
丹羽「体を動かすのがラクになる上、急に無理な体勢を取っても、体を痛めるリスクは少ないです」
滝「特に無理な動きをしていると感じるのは移乗。人によって抱えられやすい角度があるんですよ。決まった姿勢がないため、その人に合った動きをするとどうしても体に負担が出てしまいます」
丹羽「あとベッドの上でのオムツ交換も中腰にならないとできないので、腰に負担がかかります」
滝「ちなみに移乗は猫背のまま抱えると腰を痛めてしまうので、背筋を伸ばして骨盤を立てて抱えることが大事。これは筋肉も必要ですが、それ以上に体のメカニズムを知っていることが大事なんです」
鍛えることで、動作するときに骨や筋肉、関節がどのように作用するかを知ることができるという。
丹羽「抱きかかえるときも、腕に力を入れるだけではなく、腰を落として体全体を使うと無理なくできます。どこの筋肉を使ってどう動かしたら効果的なのかを知ると、体への負担が確実に減ります」
滝「あと要介護者のどの部分を支えたら安定するのかなども知れるので、要介護者への負担を減らすこともできます。鍛えながら体についても知ってください」
トレーニングは長期間でやり続けることを考えることが大事。
丹羽「継続が一番。休んでも次の日から続ければOKです。休憩時間とかに挑戦してください」
滝「全セット10~20回など自分がつらいと感じる回数にプラス2回を意識して行ってください」
毎日の積み重ねで予防はできる トレーニング編
背中の疲れを軽減させる
背中には僧帽筋や広背筋、脊柱起立筋といった首や肩、体幹を支える重要な役割がある筋肉が集結。物を持ち上げたり、立ち仕事などで常に使うこれらの筋肉を鍛えると、背中の疲れはもちろん腰痛予防にもなる。
広背筋を鍛える
腕を後ろに動かしたり内側にひねったりする際に使う広背筋は、鍛えることで基礎代謝がアップ。肩甲骨を寄せることを意識して動かすと効果的に刺激を与えることができる。
①足を肩幅に開いて真っすぐに立ち、2人でタオルを持つ
②1人が腰を落とす
③1人が背中の筋肉を寄せるように思いっきり引っ張る
①うつぶせに寝転がり、頭の上でタオルの端を持つ
②頭の高さまで肩を上げる
③背中の筋肉を寄せるように手を引き、下がりきったら3秒ほど止める。息を吸いながらゆっくり腕の位置を戻す
足の疲れを軽減させる
長時間の立ち仕事や歩行時などで使う足にある大腿四頭筋が硬くなっていくと、膝や股関節に負担がかかり疲労やケガの原因に。また、大腿四頭筋の一つである大腿直筋が緊張すると、反り腰になり腰痛を引き起こす可能性も。
大腿四頭筋を鍛える
太ももの前側についている大腿四頭筋。体重を支える大きな役割を持っており、弱まると膝に負担がかかり痛みの原因に。スクワットをすることで筋力や筋肉量の増加につながる。
①イスの前に足を肩幅に開いて真っすぐに立つ。手はおなかの前で組む
②イスにお尻がつくまで腰を下げる。お尻がついたら元の位置までゆっくり体を伸ばす
腕の疲れを軽減させる
重い物を持ったり、デスクワークが続くと痛くなるのが腕。肩甲骨などを柔らかく保つことで疲れを軽減できる。特に上腕三頭筋を鍛えると疲労に強くなり、男性はたくましい腕を、女性は引き締まった腕を手に入れられる。
上腕三頭筋を鍛える
二の腕にあたる上腕三頭筋は、肩甲骨にも付着している筋肉で、腕の筋肉の3分の2ほどの体積を占める。鍛えるときは、肩甲骨を寄せることを意識しながら動かすことが大事。
①イスに浅く座る
②姿勢を正したまま手をついて体を支えるようにし、足を前に伸ばす
③手で体を支えながらお尻をゆっくり落とし、下がりきったら3秒ほど止める。息を吸いながらゆっくりお尻を元の位置に戻す
肩の疲れを軽減させる
肩関節周りの筋肉の血流が悪いと、疲労や肩の痛みやだるさを引き起こす原因に。筋肉を鍛えて血流を良くすることが肩凝り改善の一つになると言われている。中でも三角筋を鍛えると基礎代謝が高まり、血流の改善になる。
三角筋を鍛える
肩の代表的な筋肉の三角筋は腕のつけ根についている。トレーニングするときは、なるべく肩を上下させないことが効果的。軽い負荷でも十分に効果を感じることができる。
①両手に中身の入ったペットボトルを持ち、足を肩幅に開いて真っすぐに立つ
②ペットボトルを体から遠ざけるように上げていき、横に上げきったらゆっくりと下ろす
構成・取材・文=玉置晴子/撮影=井筒千恵子/写真=PIXTA