アーカイブ

特集(制度関連)

令和5-6年度 公益社団法人全国老人福祉施設協議会 新会長・副会長所信表明

2023.06 老施協 MONTHLY

4月27日の会長選の結果、大山新会長と5人の副会長が就任。それぞれに思いを語っていただきました!


新会長 大山知子

新会長 大山おおやま知子ともこ
社会福祉法人 蓬愛会 理事長


正確なキャッチを行い
素早く行動してまいります!

初の女性会長として新しい目線を打ち出す

 全国老人福祉施設協議会の会員の皆さま、今期より会長を拝命させていただきました、大山です。平石前会長が、非常に困難な時期に会長職をお引き受けになられ、組織の融和と再生、体制再構築にまい進されるのを、この4年間、副会長として微力ながらお手伝いさせていただきながら見てきました。引き続き、組織強化、情報発信と共有といった課題に取り組んでまいりたいと考えております。

 私がご指名いただいたという意味では、女性の視点をもっと強く打ち出し、現場の職員さんの7、8割を占める女性のキャリアアップがなかなか進まない状況を打破する施策も検討してまいります。くしくも私の会長就任をご承認いただく6月20日の総会の4日後の24日から、G7男女共同参画・女性大臣会合が私の地元の栃木県日光市でございまして、これも何かの縁と感じております。そして来年4月には介護報酬改定がございます。来年は6年に一度の、医療、障害福祉サービスを含むトリプル改定の年に当たります。さらに新設されたこども家庭庁に多くの予算を充てる動きが出るのは確実と考えられ、プラス改定に向けては非常に困難な交渉が予想されます。そうした中、現在介護保険部会に参加されている小泉さん、流れを熟知してらっしゃる田中さん、瀬戸さん、特に厳しい経営を強いられている特養の部会長、幹事をされていた石踊さん、山田さんという最強の副会長布陣を敷き、プラス改定に向けてスピード感を持って対処していく所存です。

会員の声に応えるためには行動力が大切な要因に

 制度政策は政治で決まります。措置の時代とは違い、介護保険制度の施行以降は契約の時代。ぜひ、理事長、施設長の皆さまには、さらに経営者感覚を持って問題点を洗い出していただき、忌憚なく執行部へその声をお寄せいただければと思います。われわれはそうした声を基に、関係省庁および政治的ネットワークを活用した政策提言し、より良い介護現場を実現する働き掛けを、継続的に行ってまいりたいと思っています。

 私ども執行部も受け身ではなく、「月刊老施協」はじめさまざまなメディア等を通しながら目的意識を持って積極的に発信し、会員の皆さまの声を一つでも多く吸収するよう努力してまいります。そしてその声にどう応えていけるかというところは、行動力しかないと思います。正確なキャッチを行い、素早い行動でお応えしていくということを、私が思い描く新体制のテーマとして掲げてまいります。会員の皆さまにおいては、物価高騰など内外の厳しい経営環境の中、使命感を持って現場を支えていただいていることに感謝し、その思いに応える環境づくりができるように行動してまいります。引き続きお支えいただければ幸いです。

トモコさん完成! 会員の方への役立つ情報を発信していきますので、よろしくお願いします!

新副会長 小泉立志

新副会長 小泉こいずみ立志たつし
社会福祉法人 鶯園 常務理事


5人の副会長全員が力を合わせて
大山会長をサポートしてまいります

長年培ったネットワークを最大限活用したサービスに

 今回、2期連続3回目の副会長を拝命しました小泉です。おかげさまでいろんな方のお力添えをいただき、気が付けば平成14年から、20年にわたって役員を務めさせていただいております。大山新会長とも長年のお付き合いになり、選挙の結果からも大山会長に対する期待の高さを感じますし、私も頑張って一緒に汗をかかせていただこうと思っております。

 私は現在も介護保険部会の委員として活動させてもらっておりますが、いよいよ1年を切った来年度の介護報酬改定に向けて、皆さんと力を合わせて全力で取り組みたいと考えています。また、平石会長の時代から始めた全国ブロック会議を今後も継続し、丁寧にお話を伺いながら、現場の皆さんからの情報収集に役立てたいと思っています。ぜひ会員の皆さんも、施設運営上のお悩み、現場での職務における課題など、気軽に声をお寄せいただければと思います。私自身も皆さんの声に応えるためにいろいろな勉強ができ、問題点がクリアになっていくという経験をよくさせていただいています。

 この20年の活動で独自に築いたネットワークも活用し、細かな会員サービスにつなげていければと思います。最大の課題は報酬改定ですが、物価高騰対策、人材不足に対する方策、特養の40%以上が赤字となっている事業経営問題と、全国老施協が抱える問題はさまざまです。

 さらに最近ではあまり高齢者施設のことを考えないままスタートしたマイナンバーカードの管理の問題など、新たな課題も次々と生まれるのが現状ですが、執行部と会員の皆さんの情報共有を効率的に行う施策も検討しながら、お役に立てる組織として、より一層努力してまいりますので、皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


新副会長 田中雅英

新副会長 田中たなか雅英まさえ
社会福祉法人 三交会 理事長


新しい財源を国に提言するところまで踏み込んでいきたい

財源のゼロサムゲームを勝ち抜いていくために

 2期目の副会長を拝命しました、田中です。4人の副会長と共に大山会長を支え、会員施設が抱えている課題の解消・緩和に全力を尽くします。今年度は物価高騰対策とプラスの介護報酬改定実現に集中して取り組みます。大山会長の下、会員皆さまの力を結集して、この未曽有の危機を乗り越えていきたいと考えています。私が勤める施設は東京都目黒区にあります。その「地の利」を生かして行政、議会などへのロビー活動に積極的に協力します。また、会員施設における理事長以下、職員の政治に対する意識改革にも取り組みたいと考えております。社会保障における各分野への財源配分は最後には政治決着になります。一方の財源が増加すれば、もう一方の財源が削減されるというゼロサムの構造になっています。介護分野の族議員がいない中、本会が推薦する候補者を国会に送り出すことが、全国老施協が国の制度・政策に影響を及ぼす存在となるためには不可欠です。

 来年の報酬改定は、医療、介護、障害福祉分野のトリプル改定になります。大山新会長には強力なリーダーシップを発揮していただき、4人の副会長と共に、この困難な課題に挑戦したいと思っています。現在、社会・経済状況が大きく変化しています。国の社会保障制度における優先事項も高齢者分野から全世代型へと傾いています。岸田首相の「異次元の少子化対策」という発言が象徴的です。社会保障の問題は、ひとえに財源調達問題に尽きると思います。そこで、高齢者分野の充実には新たな財源確保を訴えていく必要があると考えます。今後も全国老施協が果たすべき役割に誠心誠意尽力してまいります。会員の皆さまにおかれましては、よろしく、ご指導、ご協力をお願いいたします。


新副会長 瀬戸雅嗣

新副会長 瀬戸せと雅嗣まさし
社会福祉法人 栄和会 施設長


介護報酬プラス改定、地方との情報共有に尽力します

地方では先行して起きている2040年問題に向けて

 今回初めて副会長に就任させていただきます、瀬戸です。この4年間、ブロック理事として平石前会長をお支えしてまいりましたが、平石路線を継承する大山新会長の下でも支える一人になれればと思っております。

 当面の課題はもちろん来年の介護報酬改定に向けての対応だと思いますが、以前、介護給付費分科会の委員を務めさせていただいた経験もあり、それを生かして持てる力を精いっぱい出していこうと考えております。中長期的には、いわゆる2040年問題を控えて、老人福祉施設、介護事業所は、経営の在り方や仕事の手法など、大きく変わっていかなければならないと感じています。これをどのように改革していくかについて、老人福祉、介護を代表する全国団体である全国老施協が、地域の福祉を守るために先頭に立って活動していけるよう努力してまいります。

 私の地元、北海道では、過疎が進む上にエリアがかなり広域になるため、地域によってはデイサービスが撤退してしまい、利用者にさらに長距離の移動を強いるなど、’40年よりも早めにいろいろな問題が起きているという実情もあります。こうした地方の事情、課題を全国で共有する意味では、平石前会長のときから続いているブロックごとの意見交換の場などが非常に大事になってくると考えます。DXについては、私の施設でも見守りセンサーなどを一部導入していますが、当初抵抗感があった現場職員も今ではその効果に驚きの声を上げているなど、ケアの質の向上のためのツールとしては今後欠かせないものになっていくと思います。こうした事例も共有し、変化に向かう時代に、会員の皆さんにとって役立つ指針となる活動に、積極的に取り組んでいこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


新副会長 石踊紳一郎

新副会長 石踊いしおどり紳一郎しんいちろう
社会福祉法人 幸伸会 理事長


介護業界は今、大きな岐路に立たされています

大山会長ならではの大胆さを
発揮した組織改革を

 このたび副会長に就任させていただきます、石踊です。過去2期にわたって特養部会長をさせていただき、鹿児島県に施設を持つ者として、地方の意見を全国に反映させるという役割も担っていると感じています。特養部会長経験者として、来年の介護報酬改定においても大山会長のお力になれればと思っております。

 介護保険制度ができてから二十数年、慢性的な人材不足、ここにきての物価高など、職場環境、経営環境は大きく変わってきています。よく、特養の4割が赤字という点が問題になりますが、逆に6割はまだ何とか黒字のところもあり、こうしたノウハウや情報を共有することも、全国老施協の重要な役割だと思います。
さまざまな情報ツールがありますので、これらを通じて会員皆さんの意見もどしどしいただき、ぜひ情報も活用していただければと思います。正直、まだまだ活用してもらい切れていないところもありますので、われわれからも積極的に情報発信をしていきたいと考えています。鹿児島ではICTを導入した結果、こうした先端のツールが使える職場として若者の注目を集めたり、現場の看護師さんの中には、短縮された業務時間を使って「本来の介護業務ができる」とおっしゃる方もいます。介護業界は、今、良くも悪くも大きな岐路に立たされています。それをちゃんと国にも理解してもらい、必要な政策を実現することも重要です。

 大山会長には、全国老施協初の女性会長として、細やかさと、大山さんならではの大胆さを持って、引き続き組織改革に取り組み、国にも提言していっていただけるとありがたいと思いますし、私も微力ながらお手伝いさせていただこうと思っております。会員の皆さま、どうかよろしくお願いいたします。


新副会長 山田淳子

新副会長 山田やまだ淳子じゅんこ
社会福祉法人 南魚沼福祉会 常務理事


いい意味でのしなやかさを持ち
固定観念に縛られずに活動します

2040年問題は、介護に限らない日本全ての問題

 今期から副会長を務めさせていただきます、山田です。この2年は特養部会に所属させていただき、いろいろと勉強させていただきました。来る介護報酬改定に向けて少しでもお役に立てればと思います。岸田総理は子育て支援に力を入れていますが、同様に高齢者対策にも力を入れていただけるよう、プラス改定に向けて努力してまいります。また、唯一の女性副会長として、大山会長のテーマの一つである「女性活躍の社会実現の促進」の面でもサポートできればと考えております。

 新潟の施設長として特養部会で活動する中、地方の状況を全国老施協が把握し、組織力、経営力、サービスの質、これらを向上させるための支援を積極的に行う必要性を感じております。2040年問題とは、高齢者が増えると同時に労働人口が減少する人口動態の問題ですから、介護業界に限らずさまざまな業種で問題になると思われます。今は財源の取り合いですが、この先は働き手の取り合いも起こる。そうした中で、社会福祉法人が倒れるわけにはいかないので、インフラを含めた施設の持続可能性についても、真摯に検討してまいりたいと思っております。

 私自身は、変な言い方ですが、カラーがないと言いますか、逆に言えばどんな色にも染まることができる、いい意味でのしなやかさを持っていると思いますので、固定観念に縛られずに、いろいろなことに挑戦していきたいと考えています。私は常日頃、全国老施協は、介護、福祉現場の働く人たちの思いを受け止める団体であるという点が一番大事なコンセプトだと感じており、皆さんの声を制度政策に反映させる努力を、これからも惜しみなく進めていきたいと思っております。皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。


必読!大山会長が掲げる4つの柱!

大山氏は当選のあいさつの際、介護報酬改定でプラスを勝ち取ることを最重要課題としつつ、現体制を継承しながら掲げる4本の柱を提示。これらを実現するために必要なことを伺った。

より良い介護現場の実現のために!
1 介護報酬のプラス改定に向けた働き掛け

今月発表予定の「骨太の方針」を受け、今後の予算編成においては新設されたこども家庭庁に向けた予算・財源が焦点になると考えています。加えて来年は6年に一回のトリプル改定の年度に当たり、介護報酬プラス改定に向けては高いハードルが予想されます。12月にはおおむねの予算額が決まってしまいますので、来年4月改定と言いながら、実はほとんど時間がありません。冒頭(→P3)でもお伝えしました通り、新執行部はこの改定に向けて最強の布陣で臨みます。会員の皆さまの現場の声もどしどしお寄せいただけると幸いです。

2 全国老施協改革の継続と進化

平石前会長の強力なリーダーシップの下に進められた改革路線を今後も継続し、さらなる進化も目指していきたいと考えています。まずは昨年実施した全国8地区での介護ICT実証モデル事業の成功事例を、各地区で横展開していくことが大きなテーマになります。そしてデイサービス施設向けに経営相談士を派遣した実証モデルの成果も全国に展開していくことから始め、多くの得られた知見を実用的に全国展開していくスタートの年として、会員の皆さまの施設の経営状況改善に向けたお手伝いをしていければと思っております。

3 女性活躍の社会実現の促進

今回は会長、副会長合わせ執行部に2名の女性が就任し、理事全体の1/3が女性になりました。今後は、介護人材対策委員会との連携を踏まえ、女性キャリアアップ推進部会(仮称)を設置することも考えています。女性スタッフが多い環境下で、現場を知り、活躍する女性たちが施設長、理事長といった役職を目指しやすい、あるいは目指したくなる環境づくりについて検討し、実施していきたいと思います。都道府県老施協で既に始まっている制度なども参考に、徐々に役職に就く女性の数を増やし、現在から3割増を最初の目標と考えています。

4 公益法人と政治団体それぞれの役割を明確化した上での連携

冒頭でもお伝えした通り、政策は政治の場で決まります。われわれも経営者感覚を持って、国に訴えていくべきところは訴えていかないといけない時代です。しかし一方、公益法人に政治活動はできません。そこで政治活動が可能な、有志による全国介護福祉政治連盟を通じて、現場の声や要望をしっかりと政府、関係省庁に伝えていこうと考えています。いまだ全産業平均に満たない賃金は今後も常に介護報酬がプラスで推移しないと2040年に向けて業界が成り立たなくなるということを、皆さんからいただいたエビデンスを基に訴えていきます。


撮影=磯㟢威志/取材・文=重信裕之