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みんなの気持ち

第21回 イベントで利用者さんに心から楽しんでもらうにはどうすればいいでしょうか?

2023.12 老施協 MONTHLY

健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。

誰もが動け、声を出せ、参加できる「共に感じる」イベントを!

昔は施設が大家族のようにイベントを楽しんでいた

「昔はね、利用者さんのご家族も参加してもらってクリスマス会をやったり、みんなで旅行に行くこともあったのよ。施設全体が〝大家族〟という感じでした。でも今は難しくなってしまった。色々と制限されてしまうからね」――。とある介護施設の施設長さんはこう話す。

「色々」という2文字には家族関係の変化もあれば、利用者さんの状態もある。寿命が延びたことで肉体的にも精神的にも多種多様になり、「みんな一緒に楽しむイベント」の計画が難しくなったと。

 恐らくそんな事情もあるのだろう。今回のお悩みは施設のイベント担当になった梓さん(仮名)。

「これまではクリスマスに学芸会みたいなことをやってきたみたいなんです。でも、人前で何かをするのが苦手で。しかも利用者さんの中には、ずっと座っていられない人もいます。一応スタッフ5人でやる予定なんですけど、利用者さんに心から楽しんでもらうにはどうすればいいでしょうか?アドバイスお願いします」――。梓さんの施設同様、スタッフが〝何か〟をする施設は多い。派手な手作り衣装で「マツケンサンバ」を歌ったり、マジックや漫才をしたり。

 しかし、イベントの主役はあくまでも利用者さん。孤立しがちな高齢者が「他者とつながり」「社会の一員」と感じられる出し物にこそ意味がある。誰もが動け、誰もが声を出せ、誰もが参加できる、「共に感じる」イベントだ。

 例えば、音楽を聴いたり歌うことで、脳が活性化し心がポジティブになることは科学的にも分かっている。思わず体が動くテンポある音楽なら誰もが楽しめる。スタッフが一方的に出し物をするのではなく、利用者さんを巻き込んで一緒に歌う、一緒に踊る。「童謡や懐かしのメロディーで高齢者さんは喜ぶ」と思われているけど、しっかりとした人は子供のように扱われては楽しめない。でも、クリスマスソングなら子供から大人まで楽しめる。ピアノができる人なら演奏できるし、認知症の人でもタンバリンならたたけるし、鈴を鳴らすだけでもいい。歩ける人ならスタッフが手を取って簡単なダンスで盛り上げてもいいし、マイクを回して歌ってもよし。

 スキンシップは人の心を穏やかにする効果もあるので、スタッフもリズムに乗っておじいちゃんおばあちゃんの手を取って、共にリズムを感じて体を動かしてみて。

 そんな時間をみんなで共有できれば〝大家族〟になれるかも!


健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

河合薫

Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う

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イラスト=佐藤加奈子