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第19回 国家試験が近く、仕事をしながら勉強する時間をどうつくればいいでしょうか?
2023.10 老施協 MONTHLY
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
勉強はしたいけれど仕事を休むのは難しい
キャリアアップしたい。でも、働きながら勉強するのはとてもしんどい──。こんな悩みを抱える人は多いはず。介護福祉士を目指す杉田さん(仮名)もその一人だ。
「先輩から介護福祉士の資格取得を勧められました。給料は上がるし、転職にも有利。管理職になる道も開ける。私は介護の仕事は好きなので、長く勤めるためにも取りたい。でも、仕事をしながら勉強する時間が取れず、気持ちばかり焦ってしまって。短時間で効率よく学べる勉強法を教えてください」。
介護職のキャリアアップは国家資格「介護福祉士」を目指すルートに一本化されているので、杉田さんの言う通りぜひ取ってもらいたい資格の一つだ。勉強するだけで日々の仕事に役立つ知識も増える。が、問題は時間とお金。通学や通信教育もあるけれど、仕事を休むのは難しいし、できることならお金も節約したい。そんなときどうしたらいいか? お勧めするのは河合考案「穴あけ勉強法」だ!
用意するのは参考書とカバンに入るサイズのノート。それ以外は必要なし。寝る前20分間、穴あけ問題を作り、通勤時間や休憩時間など空いた時間に穴あけ問題を解く。それを日々のルーティンにするだけでオッケー。手順は次の通り。
①ノートの中央に縦線を引く。
②参考書を声に出して読みながら気になる単語に赤線を引く。
③線を引いたノートの右側にその気になる単語を書く。
④左側には単語の前後の文章を簡単にし、答えとなる気になる単語の部分は空白=穴あけにする。
②〜④の作業を20分間繰り返したら、おやすみなさい。
⑤翌朝、通勤電車でノートの右側を手で隠しながら穴あけ問題を解く。休憩時間、昼食の時間、トイレ時間に、ノートを出してたった1問でもいいから解く。以上だ。
穴あけ勉強法がいいのは、夜、問題を作るときは、脳みそを使わなくていいってこと。筋トレだと思ってただただ赤線、単語を書く、穴あけ問題を作るを繰り返す。文章で覚えようとするのは難しいけど、単語さえ覚えれば自然と知識が記憶の箱に刻まれる。仕事中に先輩に「〇〇ってありますよね?」などと単語=〇〇をきっかけに教えてもらうこともできる。試験合格の秘訣はひたすら「毎日やる!」。それが身に付くと、忙しい中でも時間づくりもうまくなる。
ただし、たまには友達に愚痴を漏らしたりするコーピングでストレスをためないように!
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子