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みんなの気持ち

第18回 利用者さんの前以外ではマスクを外したいのですが、難しい雰囲気…。

2023.09 老施協 MONTHLY

健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。

マスクを外さない代わりにマスクの種類を個人の判断に 委ねるというのはいかが?

政府は高齢者介護施設ではマスク着用を推奨している

「マスク依存症」とやゆされるほど、日本人はマスクが好きだった。「だってみんな外してないし」「だって外すと白い目で見られるし」「だって外して素顔を見られるのが恥ずかしい」などなど、外さない理由は十人十色。が、さすがのマスク依存症も酷暑には勝てなかったらしい。時折、電車やお店でマスク姿を見掛けるが、TPOに合わせた使い分けが広まったと断言して間違いないだろう。それでもやはり「外せない」と漏らすのは、介護職員のサクラさん(仮名)だ。

「新型コロナ感染症が5類に移行してから、利用者さんやご家族の前以外は、外していいルールになりました。利用者さんが使うお部屋は温度調節にも気を使っているので、マスクをしていても気になりません。でも、洗濯室や事務所は結構暑い。作業をしていると息苦しいし、耳も痛いので、マスクを外したいのですが、誰も外そうとしません。ホーム長も外さないから、外したいとも言えない雰囲気です。どうしたらこの空気を変えられますか?」――。

 サクラさんの気持ちはよく分かるし、恐らく同じように思っているスタッフは多いはず。しかしながら、介護職員さんのマスク問題はなかなか根が深い。なにせ、国自体が高齢者介護施設のマスク着用を、今でも推奨しているのだ。

 今年3月、国はマスク着用は個人判断に委ねるとしたが、介護施設ではクラスターが起こりやすい上に、高齢者は重症化しやすいとの理由から「マスク着用を推奨する」と明言した。5月の5類移行後も、夏に第9波を迎えるとの予測もあり、介護現場には引き続き感染対策の徹底を求める行政文書を示した。むろんサクラさんの施設のように、制限をつけた上で個人の判断に任せる施設もある。しかし、マスクとは人に感染させないためのもの。「私は感染していない」と証明できない限り感染リスクは残る。「あとは個人で」と任せるのも、ちょっとばかり無責任かも。

 そこで、マスクを外さない代わりに、マスクの種類は個人の判断に委ねるというやり方はいかがだろう。薄手のものや色物など好きなマスクをする。微熱やせき、喉の痛みを訴える人が出たら、即座にN95マスクに切り替えれば、少しばかり自由を味わえるのでは?

 もし、マスクで湿疹が出るなど不具合がある場合は、迷わずホーム長に相談してほしい。

 マスク着用は決して永遠じゃないので、もうちょっとだけ我慢を!


健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

河合薫

Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う

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イラスト=佐藤加奈子