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第17回 紫外線を浴びての仕事が多く、家に帰るとぐったり。疲れを取る方法は?
2023.08 老施協 MONTHLY
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
夏の強烈な日差しは体に「紫外線ストレス」を強いる
老人ホームを選ぶときの基準の一つに「お散歩サービス」がある。高齢者は「今日も歩けた!」と思えるだけで元気になるし、家族も「今日も外出できて良かったね」と安堵する。たとえ車椅子でも、外の空気を吸うだけで気分転換になる上に、介護職員さんが一緒だと、とてもとても安心なのだ。
「でも、夏のお散歩は…結構地獄」と本音を漏らす介護職員さんは少なくない。利用者さんが熱中症にならないように、まめに水分補給をし、直射日光が当たらないように帽子をこまめにチェックし、日陰の多い道を見つけながらの散歩は、案外骨が折れる。勤務を終えて家に帰ると、どっと疲れが出て、気が付くと「マジ! もう朝じゃん! あ〜寝落ちしちゃった」なんてこともしばしば。
最近は「紫外線ストレス」という言葉が使われるほど、紫外線が体に負担を強いることが分かってきた。’06年7月には世界保健機関(WHO)が、紫外線を過度に浴びたことが原因で、世界で年間約6万人が死亡しているとする報告書を発表した。紫外線には体内でビタミンDを合成するプラスの効果もあるが、皮膚の老化を促進し、白内障や免疫機能低下による口唇ヘルペスなどを引き起こす危険性が高い。目から紫外線が入るだけで、自律神経が乱れ、疲労につながるとも指摘されている。
熱帯並みに暑い日本では、暑さ対策ばかりが注目されがちだが、紫外線を「浴びない対策」も必要不可欠。お散歩のときには、紫外線ブロック作用のあるサングラスやメガネは必需品だし、UVカット加工されたアームカバーも効果的。冷却効果のある素材を首に巻くだけでも、紫外線から体を守れるので、使ってみてはいかがだろうか。
大切なのは、疲れをためないこと。疲れはその日のうちに取らないと、まるで借金のようにたまっていく。疲労回復の基本は「よく寝る、よく食べる、よく動く」だ。「よく動くなんて余計疲れるじゃん」って? いやいや逆だ。寝る前にストレッチをしたり、朝起きたら縄跳びしたりと、基礎体力を強化すれば代謝が上がり、汗をかきやすい体になる。「暑いからゴロゴロ過ごす」のではなく、紫外線の強い季節だからこそ動こう。
そして、同僚がお散歩から帰ってきたら「お疲れさま!」と麦茶を入れてねぎらったり、「ありがとう! うわぁおいしい!」という思いやりも忘れずに! さぁ、猛暑ならぬ猛紫外線を乗り切ろう!
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子