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第15回 自分自身を振り返る、査定の自己評価は高く書くべきか、謙遜するべきか…。
2023.06 老施協 MONTHLY
健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。
自己評価は何のためか? それを考えれば答えは出る
管理職になって一番やりがいを感じているのは人事評価です。一度の評価で部下の人生が変わるかもしれないので責任は大きいと思います。でも、部下の自己評価と私の評価に大きなギャップがあるときは、私が何かを見落としてるか、思い込みがあるかのどちらかでしょ。それを面接する中で見つけるのが、言葉は悪いのですが、結構楽しいんです——。
以前、管理職層を中心にインタビューしたとき、こう話してくれた男性がいた。評価される方からすれば、「んなことにやりがいを感じないでくれよ」と文句の一つや二つ言いたくなるかもしれないけど、苦労があっての〝やりがい〟なのだろう。男性いわく、「自己評価は3割増」。ごくまれに「自己評価大増量!」の部下もいるので、そんなときは、部下の自尊心を傷つけないようにするのに苦労するという。
一方、部下は部下で「おやおや」と失笑されては困るし、「あらあら随分と控えめだね」などとアピール下手に思われるのもうっとうしい。ちょっと苦手な〝アイツ〟にだけは負けたくない気持ちもある。どれくらいのさじ加減で書けばいいのか? どうしたらちゃんと評価してもらえるのか? 悩みは尽きない。が、自己評価は何のためなのか? を考えれば答えは出る。
会社が期待するのは社員の成長だ。社員が自分自身を振り返ることで改善点を見つける。上司と話し合う中で次の目標を考え、ちょっとだけ踏ん張って大きくなってほしい。そのプロセスを指南するのが上司の醍醐味というわけだ。
自己評価のポイントは3つ。
- 目標は達成できたか?
- どうすればうまくできたか?
- これからもう一踏ん張りするには、具体的に何をどういう気持ちでやればいいか?
1は自己アピール、2は自分の課題と改善点、3は仕事への情熱と理想の自己イメージだ。短文かつシンプルに、実際にあった出来事も加えよう。数字も効果的だ。前回の自己評価で「残業時間の削減」を課題にした場合「10%削減」「10時間減った」といった具合に。逆に、「スキルアップした」「頑張った」などの表現はNG。上司から「自分を〇〇〇」と客観的に思われてしまう可能性が高いので、くれぐれもお気を付けて!
とはいえ、介護現場の本当の評価者は上司ではなく利用者さん。おじいちゃん、おばあちゃんの笑顔が一回でも増えるように工夫しよう。地位や名誉より愛、愛を!
健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士
河合薫
Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。退社後、気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う
イラスト=佐藤加奈子