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みんなの気持ち

第5回 非常に厳しい暑さである今年の夏。熱中症にどうやって対策する?

2022.08 老施協 MONTHLY

健康社会学者として活動する河合 薫さんが、介護現場で忙しく働く皆さんへ、自分らしく働き、自分らしく生きるヒントを贈ります。

特に高齢者の体には熱がこもりやすいので注意

 暑い、とにかく暑い。あっという間に梅雨が明け、夏になった途端、全国各地で最高気温40度台が続出。熱中症で救急搬送された人は6月27日〜7月3日までの1週間で何と1万4353人を記録し、27人もの人が亡くなったという。体温を超える暑さはまさに凶器。9月も厳しい残暑が予想されているので、「災害級の夏」との戦いはまだまだ終わりそうにない。

 私の友人はオープン・カフェでお茶してる最中に、何とな~くだるいと思っていたら、まさかまさかの熱中症。椅子から立つこともできず、激しい頭痛に襲われた。「体力には自信があったのに」と本人は嘆くが、3日間も仕事を休む羽目になってしまったそうだ。

 とにもかくにも熱中症対策が肝心なのだが、熱中症は「足音なき症状」と呼ばれるほど手ごわい。熱中症は夜でも発症するし、気温が低い日でも湿度が高ければ危険だ。特に高齢者の体は熱がこもりやすく、喉の渇きの感覚も鈍る。1時間にコップ1杯の水分補給を促し、さりげなく腕を触って熱のこもり具合をチェック。声掛けもまめに行って反応を確かめるなどやることは満載だ。

 さらに、冷房の効いた部屋では冷たい風によって皮膚の温度が急激に下がり、血管が収縮するため、屋外に出た途端めまいを起こし転倒してしまったり、軽い貧血を起こしてしまったり、9月頃にだるさが出たりと、「冷房病」になってしまうリスクもある。

 冷えから体を守るには、室内と室外の気温差を5度以内にとどめること。つい外が暑いとクーラー全開にしたくなるが、どんなに気温40度に迫ろうとも、設定温度は27〜28度のままにして。熱中症も怖いけど、冷房病も怖いのでスタッフで連携してチームワークで乗り切っていただきたい。

 そして、もう一つ。灼熱地獄を乗り切るには、「オジさんおしぼり攻撃」にチャレンジしてみてはいかが。以前、全身を25のパーツに分け、体を冷やすにはどこを冷やすのが効果的か?を実験で調べた。その結果、胸や首を冷やすと一気に涼しくなることが分かった。オジさんのようにおしぼりで顔から首をグルッと拭うのは、少々他人の視線が気になるかしれないけど、背に腹は代えられない。

 また、お部屋をブルー系にコーディネートすると、体感温度が2度下がるので電気代の節約になる。浮いたお金で焼き肉でも食べれば、酷暑が快暑になるかも!


健康社会学者(Ph.D.)/気象予報士

河合薫

Profile●かわい・かおる=東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士として「ニュースステーション」(テレビ朝日系)などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、講演や執筆活動を行う

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イラスト=佐藤加奈子