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インタビュー

介護の心の 在り方を 著名人が語る!

村上友梨「私たち介護のこと知ってます。」~元グラビアアイドルの介護福祉士

2022.05 老施協 MONTHLY

介護を必要とする高齢者を持つ家族も、施設や在宅で働く介護職も、
日々のケアを行いながら心を一定に保つのは難しいとされる介護の現場。
今回は芸能界の仕事の傍ら、在宅介護、介護福祉士としての施設勤務、
そして、介護職のケアを行うワークショップ活動経験のある三者から、
取り組み方や心の在り方、何を支えに活動してきたのかを伺った。


元グラビアアイドルの介護福祉士
村上友梨

村上友梨

いろいろ試して自分なりのやり方を見つけられたら!

村上友梨

村上友梨

Profile●むらかみ・ゆり=’92年11月7日生まれ。広島県出身。’06年にグラビアデビューを果たし、’09年「ミスFLASH2009」準グランプリに輝く。’15年より芸能活動と並行してグループホームで働き始め、勉強に専念するため’18年にグラビアを卒業。’19年、介護福祉士資格取得

教科書通りにいかないから心と経験で介護に向き合う

 ’15年から認知症対応型共同生活介護施設、いわゆるグループホームで働き始め、グラビアアイドルやタレント活動をしながら介護の仕事に携わってきた村上友梨さん。’19年に介護福祉士の資格を取得してからは以前にも増して、介護の仕事を多方面に発信するようになった。そんな彼女が介護施設で働くきっかけとなったのは、亡き祖母の存在だった。

「祖母が認知症になり施設に預かってもらっていたんです。その際にお風呂で転んでしまい、寝たきりになったことが原因で亡くなってしまったんです。そのときから介護の大切さを考えるようになり、それから1、2年もしないうちに今の施設で働き始めました」

 介護は命を預かる仕事という思いから、まずは資格取得に動いた。

「正直、『すぐに辞めるだろう』と思われていたと思うので、それを払拭したくてすぐに学校に通い、まず介護職員初任者研修の資格を取りました。そして、3年経験を積むことで受験資格が得られる介護福祉士の国家資格を取ることを目標に、介護福祉士実務者研修も受けました。資格の取得は自分が自信を持つためでもありましたが、利用者さんのご家族から見ても資格があった方が安心感が得られるのではないかとも思いました」

 この資格取得のための勉強は、すぐに実務でも役立ったという。

「介護の仕事は資格がなくてもできますが、資格のために勉強したことで働きながら覚えるよりも早くさまざまな方法を知ることができました。例えば、『どこに住んでるの?』と繰り返し聞かれて、心が折れそうになったこともありましたが、どう話を切り替えるかを学んだことで乗り越えることができました。そのときは『どこに住んでるの?』と聞かれて、『〇〇だよ』と答えた後、すぐに『おばあちゃんはどこに住んでるの?』と話を切り替えたことで、会話が先に進んだんです」

 また、心の在り方について学べたことも助けになっているそう。

「教わる内容は学校の先生によって異なるようですが、私が教わった先生はとても人間味のある方で『私も人間だからイライラすることもある』とおっしゃっていたんです。もちろん一番には生活支援をさせていただく相手への思いやりを持つことが大切ですが、仕事だからといって無理をし過ぎずに、自分のままでいいんだよということを学ぶこともできました」

 村上さんは先生に加えて、先輩後輩問わず周囲の人からも学び、自分なりの方法を編み出している。

「症状や性格は利用者さんごとに違いますから、教科書通りのやり方ではうまくいかないこともありますよね。例えば、ある利用者さんは口が大きく開かないので、正面からではなく、斜めからの方が上手に食べさせやすかったので、そうしている職員さんがいたんです。でも、真面目で教科書通りにしたい職員さんはそれを受け入れることができず、ぶつかってしまったことがありました。しかし、考え方がそれぞれ異なるのは当たり前のことなので、やり方は個々にあっていいのではないかなと思っていて。みんなのやり方を認めて、さまざまな方法を試しつつ、自分なりのやり方を見つけていけたらいいなと思っています」

気持ちを知るために、相手の目をしっかり見ていると村上さん

 そんな心の広い村上さんでもイヤな思いをすることはもちろんある。だが、本人いわく、「イヤなことがあっても施設を出た途端に忘れてしまう」明るく前向きな性格と、ネガティブなことをあえて口に出すことで、ストレスフリーで働くことに成功している。

「利用者さんにつねられたり、ひどいことを言われたりして落ち込んでしまう方がいますが、私は引きずらずに職員同士でもケアマネジャーでもホーム長でも家族でも話しやすい相手に話してしまうことが大切だと思います。私もつねられたりすることは毎日のようにありますが、利用者さんは怖いからつねってくるんですよね。でも、怖くないことを説明して分かってもらっても、すぐ忘れてしまうので仕方ない。だから、痛さを軽減する対応をしつつ、同僚や家族などに話してストレス発散しています。つねられたことも話すと気持ちが明るくなるんですよ(笑)」

 この仕事を始めて以来、何があろうと辞めたいと思ったことがないという村上さんは、今後も芸能界での経験を生かして、介護の仕事を広めていきたいと語る。

「人材不足状態はずっと続いているので、介護のやりがいや楽しさを伝えられる人になりたいと思っています。大変で給料が安いと思われているので、経験してみたいとすら思わない方が多いかもしれませんが、少しでも興味を持ってもらえるように発信し続けたい。それと同時に、介護福祉士は国家資格なのに合格してもお給料があまり変わらず、悔しい思いをしました。受験するためには3年の継続経験が必要ですし、合格するためにはかなり勉強しないといけない資格なので、発信することで介護士の環境が少しずつでも改善されたらいいなと思っています」

村上友梨さんの心を動かしたmessage

あんた、(食事の)入れ方うまいね〜

食事介助をしているときに、96歳のおばあちゃんから「あんた、入れ方うまいね〜」と言われたときはうれしかったです。おばあちゃんは普段、静かに目を伏せていらっしゃるのですが、パッと目を開いて、突然そう言ってくださったのでとても印象的で。「ありがとうございます!」とほっこりしました。コロナ後におじいちゃんと2人でようやくお散歩に行けたときに「久しぶりのアベックだ」と言われたときもほっこりしました(笑)。

撮影=伊原正浩、村上庄吾/取材・文=及川静