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特集

いま、介護を学ぶ人たち1 専門学校生

2040年に向けて介護人材の不足が懸念されているなか、少子化が進んでいることもあり、そもそも介護を学ぶ若い人たちの絶対数も減少しています。しかし、そんななかでも介護の仕事に高く関心を抱き、やりがいを求めて学んでいる学生や生徒がいます。こうした人たちの思いをくみ、いかに育てて、活躍の場を与えられるかどうかが、これからの施設の存続にも大きく関わっているのではないでしょうか。今回は「介護業界の希望」ともいえる意識の高い学生・生徒のインタビューを紹介し、こうした声に鑑みつつ、いかにして介護人材を増やせるか、そのための課題と展望を専門家が検証します。

 

求めるのは 笑顔の多い職場

原点は祖父の他界

 介護の道を選んだのは高校2年生のとき。母方の祖父が下半身麻痺になったのがきっかけです。残念ながら、家の事情で祖父宅に行けず、何もできないまま他界してしまったのですが、その頃、学校の福祉の授業で障害者支援施設の職員さんの話を聞く機会があり、介護の世界に興味をもちました。そこで介護職員初任者研修の資格を取得し、進学先をいばらき中央福祉専門学校にして、今は介護福祉士を目指しています。

 

現場で感じた理想と現実

 この学校は国試対策のほか、実習が充実していて、現場経験を多く積めることが特徴です。なかでも施設実習では、1年生のときに行った特養での実習体験が印象に残っています。食事を拒むご入居者に、職員さんが栄養のためにとやや強引に口に食べ物を運ぶ場面を見て、机上の学びとは違う現実を感じ、自分だったらどうするかを考えるきっかけになりました。ほかにも学校で学んだ声かけや移乗介助といった基本的な技術が現場での対応に生きることも実感しました。実習を通して思ったのは、この仕事のやりがいはやはりご入居者さんから感謝されたり、心を開いて話してくれたりする瞬間に強く感じるものだということです。

働く職場に求めるのは、職員同士のやさしい雰囲気と、穏やかに働ける環境です。職員さんや実習先の先輩が笑顔で接してくれると自分も自然に動けます。反対に、僕は慎重な性格なので、職場の雰囲気によっては自分を出しづらいときもあります。実習でも、笑顔の多い施設は居心地がよく、質問もしやすいと感じました。

 現状の不安は、記録を書くのが苦手なので、申し送りなどがうまくできるかどうかですが、そこは先輩や同僚と情報交換しながら、自分に足りない部分を補い、乗り越えたいと思っています。

 将来はご入居者の笑顔があふれる職場で、自分も笑顔で人を支えられる介護福祉士になりたいと考えています。また、施設での介護だけではなく、福祉の幅を広げる旅行介助士のような仕事にも関心をもっています。

 

 

職員の表情は明るくあってほしい

この道で人を支える 力になりたい

 14歳のとき、母方の祖父が脳梗塞で倒れて半身麻痺になったのをきっかけに、介護という仕事を意識するようになりました。当時、家族で祖父をどう支えるかを話し合うなか、中学生だった私は何もできずに悔しい思いをしました。その後、高校生のときには父方の祖父がヘルニアで動けなくなり、母や祖母が介護する姿をそばで見て、私も役に立ちたいと強く思いました。

   それで在学中に介護職員初任者研修の資格を取得。そのまま福祉の専門学校に進み、介護福祉士になるのが今の目標です。

 この学校を選んだのは、隣に特養と保育園がある環境で、実践的に学べると感じたからです。実習では、はじめての体験に頭が混乱することもありましたが、職員の皆さんがやさしく、わからないことを聞ける雰囲気があって、とてもありがたかったです。学校で習った技術や声かけの方法は、現場で応用できる土台になっています。

 

テキパキ働けるかに 不安もあるが

 実習で印象に残っているのは、ご入居者からの「ありがとう」という言葉や笑顔です。配膳などちょっとしたことでも感謝されると、自分がこの仕事を選んでよかったと心から感じます。世間には「介護は汚い、給料が低い」というイメージもありますが、それは表側だけを見た感想。ご入居者と深く関われば、感謝の気持ちを直接伝えていただける、やりがいのある仕事だと感じます。介護の世界では人材不足が深刻だといわれていますが、そんな状況でこの分野に飛び込んだ私のことを、両親や祖父母は、とても応援してくれています。いい仕事だから頑張りなさいと。その言葉に背中を押されているところもあります。

 ただ、今は不安があるのも事実です。就職後、先輩職員さんのようにテキパキ働けるか、夜勤などで体調を崩さないか等々。対処法としては、両親や友達に話してアドバイスをもらうなど自分のなかで抱え込まないようにしようと思っています。

 就職する職場には、明るい雰囲気を求めます。実習先で先輩職員さんの表情が硬かったとき、不安になったことがあるので。反対に、笑顔がある職場だと私も笑顔になれて、、ご入居者にもいい影響があると思います。将来は、介護福祉士として現場で経験を積み、その後ケアマネジャーとして、違った角度から高齢者を支えられる存在になりたいです。

 

次回は専門学校に通う外国人学生の声です。

 

取材・文=冨部志保子