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速報(JS-Weekly)

中高齢発症の気分障害が認知症に関連する可能性

#認知症 #タウたんぱく質 #中高齢発症の気分障害

▶脳内に原因たんぱく質の蓄積を確認

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)量子医科学研究所脳機能イメージング研究センターの研究チームは令和7年6月、うつ病や双極性障害などの気分障害を中高齢で発症した人の脳内には同年代の健常者よりも高い割合で認知症の原因物質の一つとして知られる「タウたんぱく質」が蓄積されていることがわかったと発表した。

 中高齢発症の気分障害は、社会的孤立や介護負担の増加と関連しており、高齢化が進む現代において深刻な社会的課題となっている。さらに近年の疫学研究からは、中高齢発症の気分障害が認知症の前段階として現れる可能性が指摘されている。認知症の多くは、タウたんぱく質やアミロイドβなどの異常たんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞死が起こることで進行すると考えられているが、これらが中高齢以降の気分障害の発症にどう関わるかは、十分に解明されていなかった。

 今回の研究では、QSTが独自開発したさまざまな認知症や関連疾患におけるタウたんぱく質病変を鋭敏に捉えることができる世界で唯一PET(陽電子放射断層撮影)を使用し、40歳以降で発症したうつ病および双極性障害の人を対象に検査を実施した。

 その結果、同年代の健常者と比較して、中高齢発症の気分障害の患者はタウたんぱく質を有している確率が約4.8倍高いことが明らかになった。さらに、国立精神・神経医療研究センターのブレインバンクのデータを用いた検討により、40歳以降にうつ状態または躁状態を初発した患者ではタウたんぱく質病変を持つ割合が高いことも確認された。また、うつ状態や躁状態が認知機能障害の発症に、平均して約7年先行していることが明らかになった。

 これらの結果により、中高齢発症の気分障害の中に、認知症の原因たんぱく質の一つであるタウたんぱく質病変が認知症発症前から既に蓄積していることを生体で確認するとともに、死後脳データからも裏付けがなされた。

(参考資料:https://www.qst.go.jp/site/press/20250609.html