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特集

介護ロボット&ICT啓発 第1弾 どれだけ役立つ!? ロボット&ICT

介護ロボット・介護ICTとは?

 そもそもロボットとは、●情報を感知(センサー系) ●判断し(知能・制御系) ●動作する(駆動系) 、この3つの要素技術を有する、知能化した機械システムのことと定義されています。介護業界ではロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を介護ロボットと呼んでいます。あらかじめプログラミングをしておけば、自分で判断しアクションを起こせる機械がロボットなのです。

 一方の介護ICTとは、主に請求業務等、介護サービス施設・事業所での業務を支援するソフトウエアのことを指します。ICT技術を活用した情報連携システムを導入できれば、各施設で利用者の情報を時間差なく共有できたり、施設の空き状況なども簡単に確認できたりするようになります。 このように情報共有をICT化することで、施設同士のスムーズな連携や、業務の効率化が可能になります。

 

介護ロボット・介護ICTの必要性

 少子高齢化の波が収まらない日本では、今後も要介護の認定者の数が増えることが予測されています。そのため介護職員は2025年度には2019年度比で約32万人増の約243万人、2040年度には約69万人増の約280万人が必要になるといわれています。そんな中、介護業界の人手不足対応策の切り札の一つになるとされているのがロボットやICTの導入です。

 ロボットやICTは単に人手不足を解消するためだけではなく、「介護の質の維持・向上」「生産性の向上」「離職防止・定着促進」のためにも必要とされています。

 

ロボット導入の起承転結

 しかし特養などの施設の中にはロボットやICTの導入に二の足を踏んだり、機械への苦手意識から導入が遅れているところも少なくありません。また導入を決めたものの、ロボットを使いこなすことだけに労力をとられてしまい、本来の目的を忘れてしまう事態にもなりかねません。

 介護ロボットの導入にあたっては、今、何が課題で、それを解決するためにどのようなロボットが必要で、効果はいかほど出ることが予測されるかを明文化しておく必要があります。

 ロボット導入に起承転結があるのであれば、大切なのは解決すべき課題である「起」の部分。「承」の部分にあたるロボットの使いこなしが目的になってしまって「起」がおざなりになってしまっては本末転倒です。

 

ロボット導入の費用対効果と 業務効率化

 未導入の介護施設にとって一番知りたいのが、ロボット導入の費用対効果ではないでしょうか。導入のためのコストや労力に対するメリットがどれくらいあるのかも解説しつつ、今回はロボットの導入をスムーズに進めるためのシミュレーションを「起承転結」の4コマ漫画でご紹介します。

 

POINT 介護記録システムの費用対効果

こんなことにも使える!

記録を書くためにいちいちデスクに戻らなくてもよいので時間の無駄が減る。
音声入力システムを使えば、文章を書くのが苦手な人や外国人スタッフでも記入しやすい。
文字が読みにくい、表現がわかりにくいなどによる食い違いミスやトラブルがなくなる。
テンプレート機能を利用して事前に定型文を設定をしておけば、タップだけで記録作業ができる。施設情報を事前に登録しておくのも記録の質の均一化に有効。
集合して申し送りをする時間が省ける。
ペーパーレスになり紙代やインク代、保管のためのスペースが節約できる。
記録の見直しが容易にできる。
介護保険請求を記録から自動計算できる。

 

POINT 介護記録システムがかなえる作業効率化

 介護記録システムは、記録をデジタルデータ化させることで、その他のICT機器との連携が可能になり、請求書の作成や加算取得がらくにできるなど、一石二鳥の事務処理が行えます。残業時間が減るなどスタッフにとっての作業効率化が目に見えてわかりやすいので、最初に導入する機器としても適しています。施設長自らがICTやデジタル化に興味をもつことも大切です。

 

POINT 見守り機器の費用対効果

こんなことにも使える!

介護記録ソフトと連動している場合には、その場で介護記録作成に使用する。
夜間の排せつタイミングの把握に使用する。
看取り期の身体状況の把握に使用する。
居室内など目の届かないところで事故等が発生した場合の原因究明に使用する。
ヒヤリ・ハット画像などを保存しておき、リスクマネジメント研修に使用する。

 

POINT 見守り機器が かなえる作業効率化

 多様なデータを収集することができる見守り機器を採用することで、さまざまな作業がいっそう効率化します。

 居室内の録画が可能な機器を採用し、 録画したデータを分析することで居室内での動線や行動パターンを把握でき、 動線に合わせて手すりを設置したり、 家具の位置を変えるなど、一人で過ごしても安全な環境づくりに活用できたと いうケースもあります。見守り機器を導入したことによる直接的な効果に加えて、そもそも転倒を防ぐことにも役立ち、作業効率化につながります。

 録画を行う場合には、プライバシーに配慮し、ご利用者・ご家族の理解を得ておきましょう。

 

POINT インカムの費用対効果

こんなことにも使える!

手の空いている人を探し回らなくてよくなる。
PHSと異なり1対複数で会話ができるため、相談しやすくアドバイスも多く集まる。
入浴介護が終わりそうになったら次のご利用者の準備を呼びかけることで、順番待ちの時間短縮になる。
外出時にドライバーとの連携がとりやすくなる。
新入社員の研修につながる。
インカムでつながっている安心感や一体感が介護スタッフを孤独にさせず、離職率の低下につながる。

 

POINT インカムがかなえる作業効率化

 「インカム」とは、耳・口の付近に装着して音声・会話の送受信をするイヤホン(または小型スピーカー)とマイクが一体となった機器をいいますが、人手不足を補えるだけでなく、「なぜ今、手が離せないのか」「どういう状況にあるのか」などの相互理解も深まり、スタッフ間のコミュニケーションも高まります。目の前では言いにくいこともインカムを通すと言いやすくなる、というスタッフもいます。

 

POINT 移乗サポートロボットの 費用対効果

こんなことにも使える!

2人介助が必要な頻度が減り、介護スタッフがユニットから不在になるときの事故が減らせる。
移乗にかかる時間を減らすことで、1日に入浴できる人数が増やせる。
トイレなどでの更衣介助の負担が減り、臀部の状態確認がしっかり行える。
立位機能回復を目指したリハビリにも活用できる。
力に自信のない人でも採用でき、求職者も安心して応募できる。
装着型でなければ、介助がしやすい。

 

POINT 移乗サポートロボットが かなえる作業効率化

 腰痛という介護職ならではの悩みを解決するためのものでもあるので、現場のスタッフで導入委員会をつくりボトムアップで導入に結びつける方法も効果的です。介護スタッフの休職や離職を防ぐことが、施設全体の作業効率化にもつながります。導入するときは担当リーダーを決めて、使い方を熟知してもらうのも効果的。移乗サポートロボットを活用することは、高齢者の残存能力を引き出すことにもつながります。

 

取材・文=池田佳寿子