キャリアアップ

介護のかくしん

女性活躍の核心 その2 管理職の意識から

介護の現場に必要な「革新」や「確信」や 「核心」をその分野の専門家に伺います。


社会にある ジェンダー・ステレオタイプ

 社会には生物学的な性(sex)とは別に、「男性」と「女性」という社会的につくられた属性(ジェンダー)があります。その属性の視点から「男性らしい」ことや「女性らしい」ことが規定され、それが固定観念や思い込み(ステレオタイプ)になってしまうことが多くみられます。ジェンダー・ステレオタイプといわれるものです。

 「男は仕事」・「女は家庭」、「男は理系」・「女は文系」なども社会におけるジェンダー・ステレオタイプです。こうしたジェンダー・ステレオタイプの影響で、女性が自分自身のキャリアの可能性や選択肢を制限してしまうことが起きがちで、それが男女の不平等格差を広げる原因にもなっているといわれています。

 

管理職割合に関する 意識と取り組みの現状

 前回に続いて、全国老施協の女性キャリアアップ推進部会(以下、推進部会)が行った「女性のキャリアアップに関する意識調査」(以下、調査)の結果の中から、管理職の方(回答者中の管理職者の割合は全体の21・1%)の回答の一部をみてみます。まず、管理職の方の「介護業界で管理職で男性が多い現状についての意見」は、男女全体で「女性の管理職の割合が増えた方がよい」が38・7%、「現状のままでよい」が0・8%で、「男女の割合は意識していない」が57・1%でした。

 「女性の管理職の割合が増えた方がよい」よりも、「男女の割合は意識していない」が多くなった背景には、「男女関係なく適材適所」、「男女別でなく能力」のようにジェンダーを意識せずに管理職を配置することを重視する考えや、すでに「女性の管理職が多い」という認識があることが自由回答記述からみてとれました。

 ただ、「女性管理職を増やす方策に取り組んでいるか」については、「取り組んでいる」が30・0%、「取り組みたいが、まだ取り組んでいない」が26・9%、「取り組んでおらず、この先も取り組む予定はない」が23・7%で、「その他」が23・7%と分散しており、取り組みには差があることがわかりました。

 

非管理職との認識のギャップ

  前述の管理職の方の回答を踏まえ、「女性管理職を増やす方策を実施しているか」を非管理職の方に聞いた結果をみてみます。結果は、「実施している」が19・3%、「実施しているかわからない」が66・3%で、「実施していない」が13・1%で、管理職の方の認識とギャップがあることがわかります。

 また、自由回答では「リーダー以上の女性割合40%以上」などの実態の記述のほかに、「理事の中には女性が1名のみで時代遅れを感じる」、「役職が男性が多いことに違和感を覚える」のように男女の管理職比率をリーダー以上でみるか、役職以上でみるかで現状に対するとらえ方が違ってくるといえました。

 さらに「女性とか男性とか区別している段階ですでに差別的な認識」という意見もありました。確かに性別による区別・差別がなければよいのですが、「女性は管理職にふさわしくないという偏見がある」という指摘や女性は「育児、家事、介護などに追われて、キャリアアップに興味があっても踏み出せない」という現状も書かれており、「女性」ということでのジェンダー・ステレオタイプが潜んでいることがうかがえました。

 一方で「管理職になりたがらない人が多い」という指摘もあり、管理職になりたくないと思ってしまう状況があることも読み取れました。すべての女性が管理職になる必要性はありませんが、適任者がなれること、適任者を育てることが重要です。次回では推進部会の方と今後に向けた検討をしていきたいと思います。