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医療・介護・障害福祉のトリプル改定 令和6年度介護報酬改定を徹底分析

2024.02 老施協 MONTHLY

1月22日、ついに社会保障審議会介護給付費分科会で了承された「介護報酬改定」案。改定事項の重要なポイントを紹介しつつ、全国老施協の小泉立志副会長に今回の改定について解説してもらおう。


プラス改定の中で特養の基本報酬大幅アップ

 令和6年度の介護報酬改定の結果を踏まえ、全国老施協・小泉立志副会長はこう振り返る。

「全体の改定率が+1.59%となり、これに処遇改善の一本化や基準費用額の引き上げなどで見込める0.45%を加えると、2.04%のプラス改定となりました。しかし、われわれ全国老施協といたしまして、当初の要望を下回る結果となったのは大変残念だった、というのが正直な感想です」

 そんな中で改善された大きなポイントを小泉副会長は語る。

「まずは1.59%の改定のうち、0.98%を介護職員の処遇改善に充てるということ。さらには、居住費の基準費用額の日額60円アップは、会員の皆さんのご要望にお応えできた、大変喜ばしい改善点だと考えております」

 基本報酬に関しては、特別養護老人ホームでは大幅な引き上げとなっていることも注目点だ。

「食材料費のアップが取り込まれなかったことは今後の懸念点ではありますが、特養に関しては他の費用や基本報酬の増加分を加えると、非常に優遇していただいたと感じられる改定となりました。これは全国的に陳情を行ったことから得られた結果と言えます」

 一方、 短期入所に目を移すと、長期利用での基本報酬が引き下げられ、61日目からの利用に関する単位数が新設されている。

「施設入所の報酬との均衡を図るため、ショートステイの本来の利用方法から逸脱している、いわゆるロングショートと呼ばれる利用に対する施策として、このような改定が行われたと考えています。ロングショートが、長期入所できないという利用者の方々のニーズによって生まれたものだとしたら、私たちもそれに対応した対策をしていかなければなりません」

 また通所介護においては、全体的に小幅な引き上げにとどまった。

「基本的に経営実態調査の収支差率に応じて改定が行われていますが、特養、短期などに比べて、通所は収益が上がっていたための結果だと言えます。民間の事業所は利益を求めて経営していますが、社会福祉法人は経営的にも甘く、人に対して優しい面があり、赤字経営となっている事業所も多い。内容の充実した通所介護を守り抜く、経営的な工夫が求められる時期に来たのではないでしょうか」

体制強化を図りながら現場の声を届けよう

 改定を踏まえ、事業所が今後考えなければならない点とは?

「医療との連携や、リハビリテーション機能訓練・口腔栄養の一体的推進といった効果のある具体的方策に加え、BCP策定、虐待防止措置、認知症のチームケアなどの基本的事項について、認識をより深め、体制強化を図り実行していく必要があると考えています」

 加えて、この後から改定のポイントを紹介するが、報酬への条件付けは細部にわたっている。

「介護ニーズとサービス提供側のニーズをマッチングさせるのは不可欠です。サービス充実への努力をする一方で、より一層、現場からの制度改善への声を上げ続けていくことが必要となります」


小泉立志 副会長

社会福祉法人鶯園 常務理事 特別養護老人ホーム鶯園 園長/公益社団法人全国老人福祉施設協議会 副会長


TOPIC1
毎年の賃上げを目指す

令和6年度2.5% 翌年2%のベースアップ

 今回の改定で注目されるのは、介護職員への処遇改善への具体的な方策が示されていること。先に小泉副会長が述べた通り、全体の1.59%のうち、0.98%は介護職員への処遇改善に充当される。

 改定案では〈令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う〉という文言が明記された。具体的な賃金イメージは下のグラフだが、令和5年度では約30万円(見込み値)の介護職員の平均月収が、6年度には約7500円、7年度では約6000円アップする概算となる。

「さらに8年度に関しては予算編成の過程で対応してアップするという話ですが、これはまだあくまで見込みなのでこれからも注視していきたいです」(小泉副会長)

 一本化のため新設する介護職員等処遇改善加算は6月施行となる。

 また注目ポイントとしては、一本化後の加算について〈介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分すること〉としながらも、事業所内で柔軟に職種間の配分を行えるようになったことが挙げられる。

「私も施設を預かる立場として、介護職員以外の方へどのように分配するかに頭を悩ませてきましたから、これはありがたい改定だと思います。できる限り平等に、多くの従事者の方々に喜んでいただけるようなルール作りを行おうと考えています」(小泉副会長)

平均賃金の推移と処遇改善見込み(介護職員)
【出典】厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(介護職員数)、「介護保険事業状況報告」(要介護(要支援)認定者数)

TOPIC2
処遇改善加算の一本化

事務作業は簡略に! 加算要件の変更に注意

 事務作業の簡略化、人材確保を目指し、3加算が一本化された。新加算は4段階に分かれ、数字が上がるにつれ、要件のハードル・加算額が上がる仕組みだ。特養においては下記の通り。

Ⅰ=+14.0%。Ⅱに加え経験技能のある介護職員を、事業所内で一定割合以上配置する(※訪問介護なら介護福祉士30%以上)。

Ⅱ=+13.6%。Ⅲに加え改善後の賃金440万円以上/年の職員を1人は確保。職場の見える化。

Ⅲ=+11.3%。Ⅳに加え資格や勤続年数などに応じた、昇給の仕組みの整備を行うこと。

Ⅳ=+9.0%。この加算による1/2以上を月額賃金で配分、職場環境の改善、賃金体系などの整備、研修の実施などを行う。

単位表

※介護職員等処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に以下の加算率を乗じる。加算率はサービスごとの介護職員の常勤換算職員数に基づき設定

(注)令和6年度末までの経過措置期間を設け、経過措置期間中は、現行の3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今般の改定による加算率の引き上げを受けることができるようにすることなどの激変緩和措置を講じる。

TOPIC3
改定時期は2段階

5月までは現行、6月から新加算に移行

 トリプル改定となる今年度の改定は、医療機関に関わりが深いサービスと介護職員の処遇改善および処遇改善加算に関わる全サービスが6月からの施行(その他は4月施行)となった。※下図参照

 処遇改善は3月までの令和5年度分に加え、4、5月の令和6年度分に関しても、現行の3加算で算定される。ただし、TOPIC1で挙げた職種間の配分ルールは、4月から緩和されることに。この間は介護職員1人あたり6000円(2%程度)の介護職員処遇改善支援補助金が設定されている。

 6月からは新加算の介護職員等処遇改善加算が算定される。令和6年度分の計画書(4/15提出)に関しては、6月からの加算を想定して提出することが求められる。

改定スケジュール


「特別養護老人ホーム」改定事項

基本報酬2.8%前後の大幅な引き上げに

 折からの経済状況にも影響を受けて、全国老施協による令和4(2022)年度の「介護老人福祉施設等収支状況等調査」では、調査した施設の62%が赤字経営、同じく厚労省が発表した「介護事業経営実態調査」でも利益率が初の赤字という、極めて厳しい経営状況の特別養護老人ホーム。

 そのような深刻な事態の中、今回の改定で基本報酬は、全体として2.8%前後の引き上げとなった。上記の経営状況に加え、特に特養で多く働く介護職員以外の職種の処遇改善が求められていることも、併せて考慮されたものと思われる。

報酬を確認するには…

介護福祉施設サービス費(従来型個室・多床室)で70床・稼働率95%の場合

各介護人数(数式①で算出)×12カ月分※小数点四捨五入×新旧単位×地域単価10円なので、現行1億8856万3920円、改定後1億9373万5980円(数式②で算出)となる。ここに8月からの居住費60円アップを加味すると614万1600円(数式③で算出)報酬に差が出る。

数式①各要介護の人数の出し方

70床×95%(稼働率)×要介護の人数比
※ 1.0%、2.8%、26.0%、40.5%、29.7%

【出典】介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査)(各年4月審査分)

数式②本体報酬比較の出し方

(人数×12カ月※小数点四捨五入×旧単位+人数×12カ月※小数点四捨五入×旧単位+…)×10(地域単価)
(人数×12カ月※小数点四捨五入×新単位+人数×12カ月※小数点四捨五入×新単位+…)×10(地域単価)

数式③居住費を含めた出し方

(改定後金額-現行金額)+60円(居住費アップ)×8カ月(8月スタートで3月まで)×70床×95%(稼働率)=トータルで報酬の増えた額

※12カ月365日、8カ月243日で計算しています

介護福祉施設サービス費(従来型個室・多床室)

小規模特養・経過的単価(従来型個室・多床室)

地域密着型特養(従来個室)

ユニット型介護福祉施設サービス費(個室)

小規模特養(ユニット室)

地域密着特養(ユニット型)

配置医師緊急時対応加算の見直し

【現行】早朝・夜間の場合650単位/回、深夜の場合1300単位/回→【改定】現行算定に加え、配置医師の通常の勤務時間外の場合325単位/回を新設

 ①病状などにおける情報共有、曜日・時間帯ごとの医師との連絡方法、診療を依頼する場合の具体的状況など、配置医師と施設の間で、具体的な取り決めがなされている②複数名の配置医師を置いているか、配置医師と協力医療機関の医師が連携し、施設の求めに応じて24時間対応できる体制を確保しているという2つの基準が守られている、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護において算定される配置医師緊急時対応加算が見直された。

 現行では配置医師が早朝(午前6〜8時)・夜間(午後6〜10時)・深夜(午後10時〜午前6時)に診療した場合のみ算定されるが、この時間を除く配置医師の勤務時間外でも算定可能に。入所者に急変が生じた場合などの対応で、配置医師による日中の駆け付け対応を、充実させるための見直しとなる。

協力医療機関との連携体制の構築

 先述同様、医療と介護の連携をより強固にするための見直しに。

(ア)以下の要件を満たす協力医療機関(③については病院限定)を定めることを義務付ける(複数の医療機関で要件を満たしてもOK)。要件を満たす期限は3年とし、連携体制への実態把握、必要な対応の検討も行うこととする。

①入所者の病状が急変した場合など、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保する。

②施設から診療を求められた場合、診療を行う体制を常時確保する。

③入所者の病状急変時などに、当該施設の医師または協力医療機関、その他の医療機関の医師が診療を行い、要入院と認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していることとする。

(イ)事業所は協力医療機関との間で年1回以上、緊急時の対応を確認し、協力医療機関の名称などについて自治体に提出しなければならないこととする。

(ウ)入所者の入院後に、病状が軽快し、退院可能となった場合、速やかに再入所させることができるように努める。

協力医療機関との定期的な会議の実施

※前項「協力医療機関との連携体制の構築」の(ア)①〜③を参照

  • 介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院
    【新設】協力医療機関連携加算(1)協力医療機関が①~③の要件を満たす場合100単位/月(令和6年度)、50単位/月(同7年度~)(2)それ以外の場合5単位/月
  • 特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
    【現行】医療機関連携加算80単位/月→【改定】協力医療機関連携加算(1)協力医療機関が①②の要件を満たす場合100単位/月(2)それ以外の場合40単位/月
  • 認知症対応型共同生活介護
    【新設】協力医療機関連携加算(1)協力医療機関が①②の要件を満たす場合100単位/月(2)それ以外の場合40単位/月

 入所者または入居者の現病歴などの情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価する新たな加算が創設された。施設形態によって要件が変わるので注意したい。

介護老人福祉施設等における緊急時等の対応方法の定期的な見直し

 入所者への医療提供体制を確保するための省令改正。介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護において、あらかじめ定めている緊急時などの対応方法について、配置医師・協力医療機関の協力を得て定めることが定義された。加えて、年1回以上の見直しを行い、必要に応じて対応方法を変更しなければならないことも記載されている。

高齢者施設等における感染症対応力の向上

【新設】高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)10単位/月、高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)5単位/月

 施設内で感染者が発生した場合、対応を行う医療機関と連携の上、施設内で感染者の療養を行い、感染拡大を防止する施策に対する加算を新設した。加算(Ⅰ)に関しての評価対象とされる事項は3つとなる。

(ア)新興感染症の感染者の診療等を実施する医療機関(協定締結医療機関)との連携体制を構築。

(イ)新型コロナウイルス感染症を含む(ア)以外の感染症について、協力医療機関などと連携して対応を決め、適切な対応を行う。

(ウ)感染症対策の一定要件を満たす医療機関、地域の医師会などが定期的に主催する研修に参加し、助言や指導を受けること。

 さらに(Ⅱ)は診療報酬の感染対策向上加算に係る届出をした医療機関から、施設内で感染者が発生した場合の実地指導を3年に1回以上受けることが条件だ。

業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入

【新設】業務継続計画未実施減算
施設・居住系サービスは所定単位数の3/100相当を減算
その他は所定単位数の1/100相当を減算

 感染症や非常災害が発生しても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するための施策。

 ただし感染症の予防およびまん延の防止のための指針の整備および非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、1年間の経過措置期間が設けられ、その間に事業所への働き掛けを強化し、指定権者による継続的な指導を求めるとしている。なお、この間に事業所間の連携により計画策定を行うことも可能とする。

高齢者虐待防止の推進

【新設】高齢者虐待防止措置未実施減算
所定単位数の1/100相当を減算

 利用者の人権の擁護、虐待の防止などをより推進するため、全介護サービス事業者(居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く)において、以下の施策が講じられない場合に、基本報酬を減算する。

  • 虐待防止の対策を検討する委員会(テレビ電話装置などリモートも可)を定期的に開催し、その結果を従業者に周知徹底する。
  • 虐待防止のための指針整備。
  • 従業者への研修を定期的に実施。
  • これらを適切に実施するための担当者を配置すること。

 また、令和6年度中に小規模事業所などの事例を周知し、介護サービス情報公表システムに登録すべき事項に虐待防止に関する取り組み状況を追加するなど、一層の取り組み強化が図られている。

認知症対応型共同生活介護、介護保険施設における平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進

【新設】認知症チームケア推進加算(Ⅰ)
150単位/月(Ⅱ)120単位/月※認知症専門ケア加算(Ⅰ)or(Ⅱ)を算定している場合は、算定不可

 認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現予防、または出現時の早期対応を目指し、平時からの取り組みを求める新たな加算となる。(Ⅰ)への要件は以下の通り。

(1)周囲の者による日常生活への注意が必要となる認知症の者が占める割合が、事業所・施設における利用者・入所者の総数のうち、1/2以上であること。

(2)BPSD予防、早期対応への認知症介護指導に係る研修を修了しているか、認知症介護に係る専門的な研修およびBPSDの予防などのケアプログラムを含む研修を修了している人材を1名以上配置。加えて複数の介護職員によるBPSD対応のチームを組むこと。

(3)対象者の個別評価を計画的に行い、その測定値を踏まえたチームケアを実施すること。

(4)BPSDケアについて、カンファレンス開催、計画作成、対象者への定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直しなどを行うこと。

 (Ⅱ)の要件は、前述の(2)に対して、BPSD予防に資する認知症介護の研修を修めた者を1名以上配置し、チームを組んだ事業所への加算となる。

介護保険施設における口腔衛生管理の強化

 今回の改定で、介護保険施設の事業者に利用者の入所時・入所後の定期的な口腔衛生状態・口腔機能評価の実施が義務付けられた。

 施設の従業者または歯科医師ないしその指示を受けた歯科衛生士が、施設入所時・入所後の定期的な口腔の健康状態の評価を実施することが定められた。またこの連携に伴って、先の技術的助言・指導、評価を行う歯科医師・歯科衛生士は、施設と文書などで取り決めを行うことが示されている。

利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務付け

 3年間の経過措置期間を設けた上で、現場における課題を分析し、利用者の安全、介護サービスの質の確保、職員の負担軽減を検討する委員会設置が義務付けられた。介護現場における生産性の向上を目指す改正といえる。

介護ロボット・ICT等のテクノロジーの活用促進

【新設】生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位/月(Ⅱ)10単位/月

 これも、生産性の向上に根差した加算。(Ⅱ)は継続的なテクノロジー活用を支援するため、利用者の安全・サービスの質の確保・職員負担軽減を検討する委員会開催と安全対策を講じる。その上で、見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づく業務改善を継続的に行い、取り組みによる効果を示すデータの提供を行うこと。

 さらに(Ⅰ)は(Ⅱ)を満たし、その成果が認められることが必要。(Ⅱ)はテクノロジーの複数導入、職員間の適切な役割分担、1年以内ごとに1回、その効果を示すデータをオンライン提供することが条件。

外国人介護人材に係る人員配置基準上の取り扱いの見直し

 日本語能力試験N1またはN2合格者を除く、EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者と技能実習生(就労6カ月未満)に対する人員配置基準を見直す。適切な研修体制・安全管理体制が整備された受け入れ施設で、指針整備や研修実施など、組織的に安全対策を実施する体制の、法令等に基づいた整備が必要。その上で、一定の経験のある職員とチームでケアを行えば、先述の人材でも、事業者が配置基準に算入する意思決定を行った場合に算入可能となる。

小規模介護老人福祉施設の配置基準の見直し

 離島・過疎地域に所在する定員30名の小規模介護老人福祉施設で、短期入所生活介護事業所等を併設する場合、人員基準の緩和が認められる。以下が条件と、配置しなくてもよい人員の一覧となる。

①(介護予防)短期入所生活介護事業所が併設=医師(利用者の健康管理が適切に行われる場合に限る)、生活相談員、栄養士、機能訓練指導員。

②(介護予防)通所介護事業所、地域密着型通所介護事業所、(介護予防)認知症対応型通所介護事業所が併設=生活相談員、機能訓練指導員。

③小規模多機能型居宅介護事業所、看護小規模多機能型居宅介護事業所を併設=介護支援専門員。

経過的小規模介護老人福祉施設等の範囲の見直し

 離島・過疎地域以外に所在する経過的小規模介護老人福祉施設で、他の介護老人福祉施設と一体的な運営をされている場合、介護老人福祉施設の基本報酬に統合する。また、同じく離島・過疎地域以外の経過的地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護についても同様。その際、1年間の経過措置期間を設け地域密着型介護老人福祉施設の基本報酬に統合し、報酬体系の簡素化や報酬の均衡を図る。


「ショートステイ」改定事項

本来の利用目的に向けた改定

 厚労省による2022年の経営実態調査では、収支差率が向上しつつあった短期入所生活介護(ショートステイ)。今回の改定では全体的に1%程度の基本報酬アップにとどまった。

 中でも注目されるのは、本来は短期間で利用するショートステイを長期間利用する「ロングショート」利用についてメスが入ったことである。次ページに詳細を記したが、31〜60日の長期利用減算に加え、61日以降の基本報酬を新設し、特養の水準に合わせて適正化したことになる。

短期入所生活介護・併設型(従来型個室・多床室)

短期入所生活介護・併設型(ユニット型)

短期入所生活介護における看取り対応体制の強化

【新設】看取り連携体制加算 64単位/日(死亡日およびそれ以前30日以下について7日を限定)

 事業所は看取り期利用者に対して看護職員の体制確保や対応方針を定め、利用開始の際に、利用者もしくは家族などに対して説明・同意を得ていることが必要。加えて①看護体制加算(Ⅱ)or(Ⅳ)イかロを算定②看護体制加算(Ⅰ)or(Ⅲ)イかロを算定かつ、事業所の看護職員か病院などの看護職員との連携で、24時間連絡できる体制確保も必須。

訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化

【新設】口腔連携強化加算50単位/回(1月に1回に限る)

 訪問介護・看護・リハビリテーション、短期入所生活介護・療養介護および定期巡回・随時対応型訪問介護看護において、事業所と歯科専門職(診療報酬の歯科訪問診療料算定実績が必要)の連携の下、職員が利用者の口腔状態を確認・評価し、利用者の同意下で歯科医療機関・介護支援専門員への情報提供を加算。歯科との連携体制は文書などの取り決めが必要。

短期入所生活介護における長期利用の適正化

(※要介護3の場合 単独型/併設型/単独型ユニット型/併設型ユニット型の順)
基本報酬 787単位/745単位/891単位/847単位
長期利用者減算適用後(31~60日) 757単位/715単位/861単位/817単位
【新設】長期利用の適正化(61日以降) 732単位/715単位/815単位/815単位

 ロングショート利用の適正化を図る。長期利用は介護福祉施設サービス費の単位数と同単位数(併設型はさらなる単位数減は行わない)。介護予防短期入所生活介護は、要支援1は(ユニット型)介護予防短期入所生活介護費について(ユニット型)介護福祉施設サービス費の要介護1の75/100、要支援2は同93/100相当の単位数となる。

身体的拘束等の適正化の推進

【新設】身体拘束廃止未実施の事業所には、所定単位数の1/100相当の減算

 短期入所系・多機能系サービスでやむを得ず入所者の身体的拘束などを行う場合、その理由を記録する。また、事業所では対策検討委員会を3カ月に1回以上開催、適正化のための指針を整備し、介護職員その他従業者に周知徹底を図り、研修を定期的に実施することが必要。なされていない場合は、基本報酬を減算する。その際、1年間の経過措置期間を設ける。


「デイサービス」改定事項

見直し・要件緩和など小幅な改定

 高齢者虐待防止に向けた施策の充実、経営の大規模化・協同化、介護サービス事業所の効率的な運営に関するトピックなどが注目を集めていた通所介護(デイサービス)。その基本報酬に関しては、小幅な引き上げとなった。

 先の特養に対して厚労省が発表した「介護事業経営実態調査」の結果が増収であったことに加えて、介護職員以外の職種が少ないことも影響していると思われる。その上で、認知症加算、個別機能訓練加算、入浴介助加算などの見直し・要件の緩和、口腔機能向上の加算などの改定が特徴的だ。

通所介護(通常規模型)7-8時間

通所介護(大規模型Ⅰ)7-8時間

通所介護(大規模型Ⅱ)7-8時間

地域密着型通所介護7-8時間

豪雪地帯等において急な気象状況の悪化等があった場合の通所介護費等の所要時間の取り扱いの明確化

 継続的な介護サービスの提供を行うための施策として、豪雪地帯といった地域の気象状況の変化における、通所介護費などの所要時間について見直しがあった。

 現行の所要時間による区分の取り扱いでは、要した時間ではなく、計画に位置付けられた内容の通所介護などを行うための標準的な時間によるとされているところ、実際のサービス提供時間が計画よりも「やむを得ず短くなった場合」には、計画上の単位数を算定して差し支えないものとしている。

 今回の改定ではこの「やむを得ず短くなった場合」に、当日の利用者の心身の状況だけではなく、豪雪地帯などでの降雪といった急な気象状況の悪化といった理由で、利用者宅と事業所間の送迎に平時よりも時間を要した場合も該当されることが明記された。ただし、時間が大きく短縮した場合には、計画を変更し、変更後の所要時間に応じた単位数を算定しなければならない。

通所介護・地域密着型通所介護における認知症加算の見直し

【現行】認知症加算60単位/日→【改定】変更なし※要件の変更・緩和

 加算単位数に変更はないが、これまでの認知症加算の要件に加え、従業者に対する認知症ケアに関する個別事例の検討や、技術的指導に係る会議などを定期的に開催することが求められる。

 また、利用者に占める認知症の方の割合に関する要件が、前年度または算定日が属する月の前3カ月間の総利用者数の15/100に緩和されている。

通所介護等における入浴介助加算の見直し

【現行】入浴介助加算(Ⅰ) 40単位/日、入浴介助加算(Ⅱ) 55単位/日→【改定】いずれも変更なし※要件の変更

 入浴介助技術向上や利用者の居宅での自立した入浴の取り組みを促進するために、要件が変更された。

 入浴介助加算(Ⅰ)では、入浴介助に関わる職員に対し、入浴介助に関する研修などを行うことを追加。

 (Ⅱ)では、既存の「医師等の利用者宅浴室の環境評価・助言」の要件でこれまでの医師などの評価に加え、その指導の下で介護職員が訪問し、情報通信機器を利用して状況の把握をし、医師などが評価・助言する場合でも加算が認められる。

 (Ⅱ)に関しては、事業所が作成する個別の入浴計画も、それに相当する内容を通所介護計画に記載することで認められることになる。

 それに加えて、先述の計画における「利用者の居宅の状況に近い環境」(利用者が住む家の浴室・浴槽に合わせて、当該事業所の浴室に福祉用具などを設置し、その状況を再現した状況)など、現行のQ&Aや留意事項通知で示した内容を告示に明記し、算定要件が明確化されている。

通所介護、地域密着型通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の緩和および評価の見直し

【現行】個別機能訓練加算(Ⅰ)イ56単位/日→【改定】変更なし
【現行】個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ85単位/日→【改定】76単位/日(変更)
【現行】個別機能訓練加算(Ⅱ)20単位/月→変更なし

 通所介護、地域密着型通所介護の個別機能訓練加算では「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」で、通所介護などを行う時間帯を通じて機能訓練指導員を1名以上配置することが明記されているが、配置時間の定めをなくし、評価を変更した。

 通所介護事業所の場合を例に挙げれば、現行の算定要件では指導員が提供時間を通じて専従しなければならなかった。しかし、今回の改定によって機能訓練以外の時間を他の事業所での勤務ができたり、同じ事業所の別職種に配置できるなど、人材の柔軟な活用が行えるような配慮がされている。

全国老施協からの情報提供をご活用ください

①セミナー・動画配信

(1) 動画配信【2月上旬ごろ】

審議報告をベースに説明、会員限定Web配信・無料

(2) 経営戦略セミナー【3月4~5日開催(2月上旬案内予定)】

特養、短期、デイの改定内容や処遇改善加算への対応について、厚労省や本会役員等が解説
会場参加+オンデマンド配信、ライブ+オンデマンド配信(会員1万円、非会員2万円)

②ホームページ(特設ページ)の開設

(1) 動画配信【上記①(1)と同じ】

(2) 加算新旧比較、収益シミュレータ【2月上旬】会員限定・無料

(3) 参考事例(運営基準・重要事項説明書・利用契約書)※

【3月上旬ごろ】会員無料、非会員1サービスごと5000円

(4) Web相談窓口(JSWEB110)【随時】会員限定・無料

(5) LIFEポータルページおよび相談窓口【随時】一部会員限定・無料

(6) 介護報酬改定に伴う各種行政資料【随時】一般公開・無料

③メールニュース(JS-Weekly)による情報提供

(1) 介護給付費分科会や行政通知を紹介【毎週金曜】

(2) 必要に応じてFAX配信も行う(JS-Weekly号外)【随時】

※参考事例の作成サービス(予定)

  1. 訪問介護
  2. 居宅介護支援
  3. 通所介護
  4. 短期入所生活介護
  5. 特定施設入居者生活介護
  6. 養護老人ホーム(特定を除く)
  7. 軽費老人ホーム
  8. ケアハウス(特定を除く)
  9. 認知症対応型通所介護
  10. 小規模多機能型居宅介護
  11. 認知症対応型共同生活介護
  12. 地域密着型介護老人福祉施設
  13. 特別養護老人ホーム

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構成=玉置晴子/取材・文=一角二朗/イラスト=PIXTA