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特集(制度関連)

速報!令和6年度介護報酬改定 改定率は4月と6月施行分合わせてプラス1.59%に決定

2024.01 老施協 MONTHLY

全体としては1.59%のプラス改定、介護職員への賃上げなど、おおかた固まった令和6年度介護報酬改定の内容について速報する!


介護従事者への配慮を感じる、過去2番目に高いプラス改定に

補正予算&介護報酬改定における5つのポイント

改定時期が2段階に

6月施行

  1. 医療機関と関わりが深い4サービス
    ① 居宅療養管理指導
    ② 訪問看護
    ③ 訪問リハビリテーション
    ④ 通所リハビリテーション
  2. 介護職員の処遇改善
    処遇改善加算に関係する全サービス

4月施行

上記の4サービス以外のサービス


1. 物価高騰における地方交付金7000億円

2023年11月2日に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が閣議決定され、世界情勢などの変化による物価高騰の影響を受けた生活者・事業者に対して、約1.2兆円の「電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」が盛り込まれた。うち介護事業者を含む推奨事業メニューに7000億円を投入。都道府県ごとに支援内容が決定する予定。

2. 介護職員処遇改善支援6000円の賃上げ

2024年2月より介護職員の賃金を1人当たり月6000円(2%程度)引き上げるための補正予算約364億円も計上された。介護職員ベースアップ等支援加算を取得かつ2・3月から実際に賃上げを行う事業所に給付。賃上げ効果が継続できるよう、補助額の2/3以上は月額賃金の改善に使用することを要件としている。この支給は5月までとなる。

3. 基本報酬の引き上げなど+0.61%は4月施行

介護報酬全体としての改定率は+1.59%となったが、その中の基本報酬のアップ分とそれ以外の加算にあたる+0.61%が実質的な本体部分と言える。この本体部分は、財務状況の見える化、介護予防支援事業所の拡大、高齢者の住まい・生活支援、LIFEの活用といったものが含まれる。介護保険事業(支援)計画とそろえて4月施行。

4. 介護職員の処遇改善分+0.98%は6月施行

医療機関との関連の深い4分野と処遇改善の改定を含む+0.98%は6月施行。5月まで補正予算で対応する6000円の賃上げは、6月からは介護報酬に組み込まれる。これまで複雑化していた処遇改善加算がこれにて一本化される。+0.98%は2026年までの2年分の財源であり、1年ごとにベースアップできる配分分法となる見込みだ。

5. 基準費用額・居住費は8月から1日60円引き上げ

基準費用額(居住費)については8月から1日60円の引き上げを行うこととなった。また、Ⅱ型介護医療院、「その他型」および「療養型」 の介護老人保健施設の多床室(8㎡/人以上)の入所者を対象として、月額8000円相当の室料負担を求めることに。なお、利用者負担第1段階の多床室利用者については負担を増加させないようにする。

処遇改善加算の一本化など実質約2%のアップ!

 ’23年12月18日、厚生労働省で社会保障審議会・介護給付費分科会が開催され、令和6(2024)年度介護報酬改定に関して、大枠の方向性が取りまとめられた。

 そこでは少子高齢化や世界情勢に左右される経済状況などを踏まえつつ、大きく4つの視点を基本として、介護報酬の改定を実施すると定義された。それが次の通り。

①「地域包括ケアシステムの深化・推進」=質の高いケアマネジメント・サービスが切れ目なく提供できるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みを行う。

②「自立支援・重度化防止に向けた対応」=制度の趣旨に沿い、多職種連携・データの活用を進める。

③「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」=処遇改善や生産性向上による職場環境の改善を推進する。

④「制度の安定性・持続可能性の確保」=評価の適正化・報酬の整理など、安定した制度整備へ。

 また同じ分科会において、一律で4月からとされていた施行時期について、医療機関と関係の深い訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション・居宅療養管理指導の4つのサービスは、6月の診療報酬改定と同時改定とすることも確認された。

 この日の分科会の内容をもって、同月20日、武見敬三厚生労働大臣、鈴木俊一財務大臣らが予算大臣折衝を行い、改定率が決定した。

 改定率は+1.59%。これは介護保険制度開始後2番目に高いプラス改定で、国から介護業界へ一定の配慮が図られたと考えられる。6月から施行される介護職員の処遇改善分(2~5月は「介護職員処遇改善支援補助金」で対応)が0.98%分に当たる。残る0.61%分が基準費用額引き上げなどに当たり、介護職員以外の処遇改善を実現できる水準としている。

 またこの改定率の外枠として、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や、8月からの光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収効果として0.45%相当のプラス改定、つまり合計して実質+2.04%相当の改定となる。


構成=玉置晴子/取材・文=一角二朗