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チームのことば

【INTERVIEW】タイムズモビリティ株式会社 第一事業本部 首都圏第二事業部長 矢野恵司/広域開発部長 岸知直

2023.12 老施協 MONTHLY

パーク24グループは無人時間貸駐車場事業の元祖で、国内トップシェアの「Times PARKING」を運営するタイムズ24株式会社を含む企業グループ。事業のもう一つの大きな柱が、タイムズモビリティ株式会社が運営するカーシェアリングサービスだ。会員数やステーション数などのシェアは国内最大かつ、都心部のみならず全国にカーシェアを増やしている。今回は同社で開発(=カーシェアステーションの開発)を担当し、事業拡大のキーマンとなっているお二人に、事業躍進の秘訣、異なるグループ会社間とのチームワーク、今後のモビリティの未来などについて伺いに、東京の本社を訪ねた。


どのように一車室を活用するか
グループ全体で考えられる風土作りがシナジーを最大限に生み出していきます

グループのシナジーにより最大化で圧倒的シェアを達成

 パーク24グループがカーシェアリング事業に本格的に参入したのがマツダレンタカー(現・タイムズモビリティ)を傘下に収めた’09年。この年の日本のカーシェア台数は全国で600台以下、会員は六千数百人だった。しかし14年たった’23年現在、台数は5万台を超え、会員数は310万人を超えた。その中でタイムズモビリティが運営する「タイムズカー」のシェアは7割弱と圧倒的だ。15分220円〜の短い時間で借りることができ、保険料・ガソリン代などが利用料金に含まれる「タイムズカー」は、その経済合理性の高さから、右肩上がりに会員が増えている。

 お話を伺うのは、首都圏で開発(カーシェアステーションの開設)などを担うお二人。それぞれが違うアプローチで開発を進めているという。

矢野「私の部署は東京23区を担当しています。営業マンが地道に歩き回って土地の調査などを行い、地元の不動産会社さまや地主さまの元を何度も訪問し、提案を重ねることで車室を確保しています。また、トラブル対応など、その後の運営まで担当しています」

「私の部署は、大規模な不動産(マンション、ビル、商業施設など)を持つ大手法人さまの窓口となって開発に特化する部署です。カーシェアの需要があるのに台数が足りていない地域の土地を持つ法人さまなどに営業をかけ、新たにステーションを増やすなどしています。ウチは、商社的な動きをする部署だと思いますね」

 新規の駐車場を確保し、そこにカーシェアリングを置くようなイメージなのだろうか?

「そうですね。サービスを開始した当初はタイムズパーキングにカーシェア車両を置くことで拡大をしていったのですが、近年だと施設駐車場にカーシェアを置きたいという要望が増えているので、タイムズパーキング以外の駐車場に配備することも多いです」

矢野「あるいは、施設内にある駐車場をタイムズパーキングに変えていただく際に、タイムズカーを併設することで、その施設の付加価値を向上させるといったアプローチもグループ会社であるタイムズ24と行っています」

「ショッピングモールにカーシェアがあることで、カーシェアを借りにこられた方がついで買い物をされたり、買い物をし過ぎて荷物が増えた際にもカーシェアを利用していただいたりと、施設の付加価値を上げるイメージです」

 なるほど。駐車場運営とカーシェアビジネスの両方を行っているグループならではのシナジーだ。東京23区で管理している台数は、どのくらいなのだろうか?

矢野「23区で1万1000台くらい、全国では6万台くらいです」

 あれ? 全国でカーシェアって5万台強なのでは…?

「カーシェアとレンタカーを合わせると6万台ということですね」

矢野「’09年にマツダレンタカーをグループ化して以降、レンタカーとカーシェア2つの事業を展開していますが、’19年から、この両者のいいとこ取りをしたサービスとして、『タイムズカー』を展開しています。それまでは、長時間はレンタカー、短時間はカーシェアというように使い分けを推奨していましたが、いいとこ取りすることで選んでいただく手間をなくし、利用者の方が、より使いやすいサービスを作りました」

「長時間借りる際も、レンタカーとカーシェアが同じぐらいの料金となるように料金体系も見直しました。2つの垣根をなくすことで、お客さんが迷ったり考えたりする必要をなくしています。『タイムズカー』ではレンタカーのクルマをカーシェアに融通することもあるため、2つのサービスを合わせた6万台とお伝えしました」

矢野「タイムズカーの展開は、労働力人口が減少する中、有人サービスである従来のレンタカービジネスでは人材確保も難しくなるという点も考慮しています」

 今度はレンタカーとカーシェアを共に行っているシナジー。シェアが圧倒的なのもうなずける。取材スタッフの一人もよく使うそうで「ターミナル駅には徒歩圏内にステーションがあることが多いので、目的地の近くまで電車で行って、駅から離れているときだけちょっと借ります」とのことだ。

「まさしくわれわれが推奨している『レール&カーシェア』の使い方ですね。その利用の仕方はSDGsにもつながってくると思います。目的地の最寄りまでは公共交通機関を利用していただいて、ラスト1マイルをカーシェアで動いていただければ、クルマの走行距離が減り環境負荷低減になります」

タイムズカーのステーションは現在約1万6000カ所にあり、カーシェアではもちろん圧倒的シェアを誇る。レンタカー最大手のトヨタレンタカーの約1000店舗も軽く凌駕する数だ。現在約4万台のカーシェア保有車数を10万台にまで伸ばすのが目標だという
創業時からの駐車場ビジネスを行うのはタイムズ24株式会社。いわゆる無人時間貸駐車場の元祖だ。この大規模な駐車場経営が最初にあったからこそ、カーシェアビジネスでもトップに躍り出ることができた

共通の目標を実現するには会社間での意識共有が大切

 事業の連携によりシナジーという意味では効果があっても、日々の業務をする上ではなかなか難しいところもあるのではないだろうか。

矢野「ここ数年は『グループとしてこの一つの車室をどう活用すれば、連結の営業利益を最大化できるか』という意識が浸透してきていると思います。マツダレンタカーをグループ化し駐車場を活用してカーシェアを展開してきたように、どうやって駐車場事業とモビリティ事業のシナジーを生かしていくのか、みたいな考え方をずっと続けているからだと思いますね」

「同じエリアを担当する部署は会社の区別に関係なく同じフロアにいて、物理的な距離が近いので、違う会社という意識はしてないですね。そういった体制も矢野の言うような企業文化が自然と根付いているんじゃないかと思います」

 これは恐らく珍しい。グループとはいえ、違う会社が同じフロアにいるのでは、分社化した意味がないという考えが主流だろうからだ。理念だけではなく、事案を共有できる業態であるパーク24グループならではな手法と言えそうだ車室の開発やチーム作りではどのような工夫をしているのだろうか。

矢野「車室開発はどうしても個人プレーになりがちなところがあり、同じ部署内であってもチーム作りは難しい部分もあるんです。個人プレーが多いだけに、個人ごとにさまざまなな問題を抱えるケースも多いため、週1回のミーティングの中で個々の営業マンが行っている開発の手法やナレッジの共有をすることで、個人の課題を組織で解決していくというチーム作りを行っています。あと、新人はいきなり車室開発の達成は難しいので、上長が抱えている案件を引き継がせて、成功体験を先に経験してもらうなどしてモチベーションアップにつなげています」

「われわれの部署は開発に特化しているため、運営は矢野の部署や他の部署に任せることになるので、社内連携が重要なところです。社外はもちろんなんですが、社内の情報にもアンテナを張るよう意識して業務にあたるようにしています。また、法人営業をしている中で、面談する方のお一人はタイムズカーの会員さんということがしばしばあります。そうすると、使い勝手のところなどでご意見をいただけるので、そうした情報は社内に共有するようにしています」

矢野「カーシェアリングサービスは無人サービスなので、会員さまからコンタクトセンターに寄せられるご指摘、一部、お叱りもあったりしますが、その内容は毎日関連部署にメールで発信されて共有されているので、サービス改善などに生かしたりしています」

矢野さんと岸さんは業務が違っていても案件によって連携することもあり、社内では自然と関係が密になる
都心の大規模マンションなどでは駐車場が空いているケースも多く、かつ、カーシェアが必要とされている場所のひとつ。そうした情報を部内外、社内外から収集して、営業活動に活かしている

サービスとは、一方的に創出するものではない

 コロナ禍では、チームの人と会えないなど、パーク24グループにおいても大きく働き方が変わったという。一体、どのような影響があったのだろうか?

「コロナ禍で顔を合わせる機会が少なくなり、リモートワークが増えました。現在は出社することが多くなりましたが、今でもリモートはうまく使われていて、働き方の選択肢が増えるというのは、社員にとっても会社にとってもプラスになっていると感じています」

矢野「コロナ禍でリモートワークが増えたことで、コミュニケーションが取りづらくなった面もありました。しかし、その中でもコミュニケーションの方法など工夫を重ねながらチーム内で連携し、車室の開発営業を継続したことが、需要が戻ったときのインパクトとなって業績向上につながったと思う。なので、コロナ禍で学んだことはいろいろありますね」

 コロナ禍を乗り越えて、学びがあったというポジティブさは、重要なことに思える。

 最後に、今後、介護業界でカーシェアがどう普及し、どのように活用されると思うか伺ってみた。

矢野「最近ではお客さまに教えていただくことも多いんです。先日の熊本地震の際、タイムズカーを授乳室として使われていたのをSNSに上げていた方がいらっしゃったんです。本当に緊急の事態だとは思いますが、エアコンも効くということで。われわれもサービスを創出していますが、お客さまが独自の価値を創造することもたくさんあります。介護業界のかたにも使っていただければ、思わぬ新しい利用価値が見つかるんじゃないかと思います」

「私としては、ぜひ施設の駐車場の一部に、カーシェアを置いていただいて、施設で働いているかたの移動だったり、利用者さんやご家族の気分転換などで活用いただけるのではないかと思います」

 元々、思わぬところで荷物が増えた、ちょっとした距離でも短時間でも借りられるのが、カーシェアのスタートしたときから変わらない最大のメリット。介護業界にもいろいろヒントがありそうだ。ぜひ、皆さんにも「タイムズカー」を利用してみて欲しい。

創業以来、即戦力を求めて中途採用が多かったが、近年新卒を多く採用していることもあり、研修やグループワークなどを実施し人材育成にも力を入れている
グループ理念・スローガンが書かれた、社員が持ち歩くクレドカード。写真を撮りたいと申し出たら、矢野氏も岸氏も「自分のは少し擦り跡がある…(笑)」と。普段からよく使っている証拠だ

タイムズモビリティ株式会社 第一事業本部 首都圏第二事業部長 矢野恵司

タイムズモビリティ株式会社
第一事業本部 首都圏第二事業部長

矢野恵司

Profile●やの・けいじ=1996年マツダレンタカー入社。店舗営業の後、本社企画部門で社員の研修や営業企画、システム開発などに14年間従事(2009年のグループ化によりパーク24グループに)。その後、タイムズモビリティにて東京で支店長、企画部門長、大阪で支店長、事業部長を歴任し、昨年11月から現職

タイムズモビリティ株式会社 第一事業本部 広域開発部長 岸 知直

タイムズモビリティ株式会社
第一事業本部 広域開発部長

岸 知直

Profile●きし・ともなお=以前は不動産業に従事し、中国など海外にも赴任。2014年、まさに急激に日本でカーシェアリングビジネスの業界規模が拡大していくタイミングでタイムズ24に入社。(2019年にカーシェアリング事業はタイムズモビリティに事業移管)入社から一貫してカーシェアの開発業務を行っている


撮影=磯﨑威志/取材・文=重信裕之