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速報(JS-Weekly)

〈財務省〉

財政制度等審議会、「歴史的転機における財政」を取りまとめ

JS-Weekly No.881

#春の建議 #骨太の方針への反映 #介護の改革の必要性

介護では、ICT機器活用や経営の協働化・大規模化などを提言

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は5月29日、「歴史的転機における財政」(春の建議)を取りまとめた。政府が6月に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」への反映を求める。介護分野については、団塊の世代が85歳以上となる10年後には介護費用の急激な増加が確実であり、また介護費用を支える保険料・公費負担の上昇、介護サービスを支える人材確保には限界があるとして、介護の改革の必要性を強調。ICT機器の活用や経営の大規模化に取り組みつつ、現役世代や低所得者の保険料の上昇を抑制するため給付範囲の見直しを進め、2割負担の範囲拡大などについては速やかに結論を出す必要があるとした。

 具体的な要旨は次の通り。

ICT機器の活用による生産性の向上と人員配置の効率化

 見守りシステムや介護をしながら記録の作成が可能となる機器など、ICT機器の活用により業務負担の軽減やデータに基づいた介護サービスの質の向上を図るとともに、介護施設・通所介護等における人員配置の効率化をすべき。

財務情報の見える化の推進

 介護事業の収益は安定した伸びを示し、特に社会福祉法人では平均して費用の6か月分前後の現預金・積立金等を保有、現預金・積立金等の額も増加している。こうした状況を踏まえ、介護事業者全体について保有資産を含めた財務情報の見える化を進め、経済状況を網羅的・定量的に分析すべき。

大規模化の推進

 在宅・施設とも、規模が大きいほど収支差率が上昇している。社会福祉法人は、1法人1または2拠点の小規模な形態が全体の過半数を占めており、それらの利益率は低調である。経営基盤強化のためには、経営の協働化・大規模化を推進することが重要。

第9期介護保険事業計画に向け見直す事項
  • 利用者2割負担の範囲拡大はただちに結論を出す
  • 利用者負担の原則2割導入や現役世代並み所得(3割負担)等の判断基準を見直すことも検討していく
  • 介護老人保健施設等の多床室の室料負担は利用者本人の負担に見直すべき
第10期介護保険事業計画の開始までに結論を得るべき事項
  • 要介護1・2の人に提供する訪問介護・通所介護の地域支援事業への移行
  • ケアマネジメントへの利用者負担の導入
人員配置・報酬体系の検討

 介護老人保健施設は利用率が減少し、長期間の滞在も増加している。実態に即し、特養への移行や特養に近い形の人員配置・報酬体系を検討すべき

介護事業者向けの人材紹介会社の規制の強化

 一部の人手不足の事業者が人材紹介会社に高額の経費を払っている状況がある。介護報酬は、本来は職員の処遇改善に充てられるべきものであり、一般の人材紹介会社よりも厳しい対応で、本人への「就職お祝い金」の禁止など現行の規制の徹底に加え、手数料水準の設定などが必要。また、ハローワークや都道府県などを介した公的人材紹介を強化すべきである。

サービス付き高齢者向け住宅におけるケアマネジメント等の適正化

 利用者にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の入居者がいる場合には、それ以外の場合と比較しケアマネジメントの所要時間が3割程度少ないという実態がある。サ高住でケアマネジメントを提供する指定居宅介護支援事業者に同一建物減算を適用し、訪問介護等の同一建物減算も一層の減算を図り、適正化を図るべき。

介護におけるアウトカム指標の強化

 現在の介護報酬では、要介護度が進むにつれて報酬が高くなる一方、自立支援・重度化防止のための取り組みへの評価が不十分。介護保険法の自立支援の理念も踏まえ、要介護度の維持・改善などアウトカム指標を重視した枠組みとすることが重要。

参考資料