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全国老人福祉施設協議会 会長・副会長 新年のごあいさつ ~より良い介護のための、新たな目標と取り組み〜
2023.01 老施協 MONTHLY
2023年を迎えるにあたって、平石 朗会長、および5名の副会長から、新年のごあいさつと、今後の抱負をいただきました。
整備された新基盤に、新たな命を吹き込む年に
全国老人福祉施設協議会 会長
社会福祉法人 尾道さつき会 理事長
平石 朗
ICT導入モデル事業はじめ一定の成果を得た重点事業
全国老施協会員の皆さま、明けましておめでとうございます。
時代はウィズコロナへと舵を切っている中でも、高齢者福祉・介護の現場で働く方々にはまだまだ気の抜けない日々が続いていることと存じます。一方、この3年で学んだことを生かしながら、福祉・介護業界ならではのウィズコロナの在り方を模索する時期に来ているのも確かであり、まもなく開催される「第1回 全国老人福祉施設大会・研究会議〜JSフェスティバルin 栃木〜」がその足掛かりになればと思っています。
令和3年から2カ年にわたり取り組んでまいりました「介護現場の革新」事業のメインである全国老施協版介護ICT導入モデル事業においては、ICT機器の機能および受け入れる施設の対応能力などをつぶさに検証した結果、施設の規模や業務内容など、さまざまなレベルに合わせて選択肢が提供できる知見を得ることができた、と感じています。今後は各ブロックでこの成功事例を横展開し、さらに新しい成功事例をつくって、介護現場における業務の効率化、適正化を加速するお手伝いができればと考えております。
介護報酬改定、経営力の強化
情報提供力と効率化を推進
令和5年度の事業計画につきましては、先に行われました常任理事会において、3つの重点事項が確認されております。
1つは、令和6年度介護報酬改定に向けた取り組みです。介護現場が直面する諸課題を踏まえ、強固なエビデンスを基に国への提言に努めます。次期報酬改定に向けた活動は既に始まっております。
2つ目が、経営力の強化です。本年度、25のデイサービス施設にコンサルティング会社からスタッフを派遣し、現場の方からも非常に高い評価をいただきました。今後は介護関連諸団体とも連携しながら、経営診断評価サービスなどの分野で施設を支援していきます。
3つ目が、会員への情報提供力の向上と効率化の推進です。私が会長に立候補する際に掲げた目標の一つに情報格差是正がありました。昨年度スタートした「老施協.com」などのツールが、施設長、理事長に限らず、職位を超えてあらゆる現場スタッフの皆さんの意見を集約する場として役立つことを期待する一方、有益な情報を多数内包する全国老施協ホームページの情報提供システムの見直しにも着手します。私が最も大切と考える、現場とつながって現場を支える全国老施協の実現のため、正しい情報をいち早く、かつ分かりやすく伝える努力を進めてまいります。
ようやく世間一般のICT化の流れをキャッチアップするところまでたどり着き、研修会の定着、新たなコミュニケーションツールの獲得など、全国老施協新基盤の、一応の整備ができたと思います。
’23年は、現場の皆さんのお力を借りながら、この基盤に新たな命を吹き込み、広げていくスタートの年にしたい、と思っています。
本年もご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
魅力ある付加価値と独創性を持った組織へ
全国老人福祉施設協議会 副会長
社会福祉法人 蓬愛会 理事長
大山知子
社会のセーフティーネットとしての施設を守るために
間もなく、これまで年一回ずつ行われてきた全国大会と研究会議を一本化した「第1回全国老人福祉施設大会・研究会議〜JSフェスティバル in 栃木〜」が開催されます。新型コロナウイルスの感染対策に留意しながら、実務に即した内容からジャズライブ、施設対抗大喜利大会などが楽しめる企画も取り入れました。全国老施協の持つ豊富な知識・情報を提供し、参加者が相互に交流できる新たなイベントとして育てていきたいと思っております
養護老人ホーム部会、軽費老人ホーム・ケアハウス部会としては、昨年一定の前進がありました。約1年前、岸田首相の掲げた「公的価格」の見直しに、養護、軽費・ケアハウスが含まれないという事実を確認してからというもの、常任理事であるそのだ前参議院議員のお力も借りて厚労省、一般財源を管轄する総務省などと交渉を重ね、全都道府県の老施協とも連携して、ようやく養護、軽費・ケアハウスも含めた処遇改善が図られました。養護、軽費・ケアハウスは、老人福祉の根幹であり、困窮する高齢者を救う社会のセーフティーネット的な役割を持つ施設です。次年度以降もこれらの施設を守るために、地方交付税そのものの仕組みを理解する勉強会などを続け、会員の皆さんへの浸透を図っていきたいと思います。また、経営戦略室では「老施協ビジョン2035」に基づく課題の確認と整理の継続、老施協.com登録者数が約7500人となり、さらなる普及に向けた具体策の推進に取り組みます。
こうした活動の実態や、豊富なノウハウなどを情報提供し、会員の皆さんからも意見や知識を吸収しながら、魅力ある付加価値を持った、独創性の高い組織としての全国老施協を実現すべく、本年も尽力してまいります。
新たな目標と取り組み
- 全国大会と研究会議を一本化し、イベント性も高めた初の試み
- 養護、軽費・ケアハウスにとって、初の大きな処遇改善
- デジタルツールも駆使し、双方向の情報交流ができる組織
全国老施協のデジタルツールを使いこなそう!
全国老人福祉施設協議会 副会長
社会福祉法人 鶯園 常務理事
小泉立志
施設がなくなることは地域インフラが消えること
令和2年度・3年度決算では、特別養護老人ホーム施設会員の40%余りが赤字となりました。4割を超えるのは初めてのことです。厚労省の介護保険部会委員かつ全国老施協の特養部会担当副会長として、制度改正を含めた国や自治体への働き掛けに今後ともより一層尽力していかなければならないと強く感じております。直近では令和6年度の介護報酬改定がありますが、この大一番に向けた“戦い”はもう既に始まっています。
経営の悪化にはコロナや物価高騰の影響ももちろんあるでしょうが、小規模な施設においては構造的な問題を抱えているところも多く、私は小規模特養の老健事業にも携わっておりますので、これからも業務の効率化や経営改善サポートに力を入れていきます。施設がなくなってしまったら、大切な地域のインフラが一つ消えてしまうことになるんです。そうした事態を減らすよう、尽力したいと思っています。
もう一つ、私が20年近く携わっている21世紀委員会は、来年度から名称を「JS次世代委員会」と変更し、次世代会員の全国的ネットワークを作ることを目指します。私自身の経験から肌で感じ“ネットワークは財産だ”という思いが強いからです。
全国老施協のホームページには、介護に関するありとあらゆるデータが掲載されていますが、あまり知られていません。昨年度始まった「老施協.com」や「老施協デジタル」などのツールも駆使して、最新情報を発信していく方策について考えてまいりたいと思います。
また、情報、ノウハウだけでなく、専門家による相談窓口など、多くの知見を持つのが全国老施協です。会員の皆さんにはぜひこれを使いこなしていただきたい、そのスタートの年となるよう個人的にも努力していこうと思います。
新たな目標と取り組み
- 特養会員の赤字経営が初4割超え。経営改善支援を加速
- 令和6年度報酬改定に向けた“戦い”はもう始まっている
- 「JS次世代委員会」による全国的ネットワークの構築
“行動の老施協”を具現化するための努力を
全国老人福祉施設協議会 副会長
社会福祉法人 杉和会 理事長
若山 宏
「今日一日楽しかった」と利用者に思ってもらえるか
この3年間、対面での事業展開がなかなかできなかったことにはもどかしさも感じておりました。リモートならではの、緻密で効率的な業務進行にも一定の良さはある一方、対面でこそ生まれる新たなアイデアやモチベーションに、今年は期待しています。
私が長く担当させていただいている総務組織委員会においては、新規会員入会促進が大命題であり、会員になるメリットとは何なのか、を可視化していく必要があります。そのために、全国老施協が持つ優れた研修ツールであったり、一学会に匹敵する研究成果や知見、こうしたものを分かりやすく伝えていくための情報提供力の向上を、特に若い世代の会員さんたちに担っていってほしいと考えています。幹事横断型会議である「2035の会」などでの活発な議論を期待しています。さらに賛助会員の獲得にも力を入れ、民間企業の方たちに全国老施協を知ってもらう活動も続けてまいります。
デイサービス部会では、要介護1、2を総合支援事業に移行する、という財政審の方針に反対しています。一般財源の中で毎年毎年の作業となっている行政とは違い、われわれ福祉・介護施設は、運営を5年先、10年先のプランまで立てて考えるべきであり、それぞれの施設、事業所が特徴を持って持続的な経営ができるよう、引き続きサポートしていく所存です。
私が所属する施設では、「今日一日楽しかった」と利用者に思ってもらえるか、というシンプルなコンセプトの下、あらゆるアイデアを駆使して日々の運営に当たっています。こうしたノウハウを職員たちと共有し、私がこだわる「行動の老施協」を具現化するために、これからも努力してまいります。
新たな目標と取り組み
- 会員メリットをより分かりやすく発信していく
- 賛助会員の獲得にも引き続きまい進する
- 5年先、10年先を見据えた、持続的経営のサポート
問題を想定し、想定外のリスクにも備える
全国老人福祉施設協議会 副会長
社会福祉法人 三交会 理事長
田中雅英
伝える、教えるではなく気付いてもらうことが大切
’22年も新型コロナに翻弄された一年間でした。現在は、第8波が猛威を振るっています。医療や治療薬が全国の施設に速やかに届くことを期待しています。加えて、エネルギー価格・物価の高騰、深刻な介護人材不足、人件費の上昇圧力などにより、施設は厳しい経営を余儀なくされています。その上、社会保障審議会介護保険部会で給付費を抑制する検討が進む中、7月には唯一の組織内議員であったそのだ前参議院議員が議席を失いました。しかしこうした困難な状況下でも、全国老施協はさまざまな課題の解消・緩和に努め、物価高騰対策、養護・軽費老人ホームの事務費の見直し、軽度者の総合事業への移行反対など一定の成果を得ることができ、私も副会長として行政、与党に対する要望活動等これらの取り組みの一端を担うことができました。
’23年は、まず、担当している広報、介護人材対策、研修、老施協総研の4つの委員会の目標達成に向けて注力いたします。また、年度末からは、社会保障審議会の介護給付費分科会の審議が本格化していきます。私の勤める施設は都心に近いので、行政、議会へのロビー活動に加え、世論形成に影響力を持つメディアへの働き掛けにも積極的に協力していきます。大事なことは伝える、教えることではなく、気付いてもらうこと。それがわれわれの努めと思っています。
「偶然は準備した精神にしかほほ笑まない」。さまざまなワクチンを開発したルイ・パスツールの言葉です。これは科学の分野だけにとどまらない真理だと思います。私も想定される問題に対して準備を怠らず、想定外のリスクにもできるだけ備え、会員の皆さまのニーズに応えられるよう尽力してまいります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
新たな目標と取り組み
- 困難の多かった’22年、一定の成果も得られたので’23年はさらに
- 都市部も過疎部も内包する東京都の代表として、問題解決に尽力
- 管理者の役割は、教えることではなく、気付かせること
小さいこと、脆弱なことに誇りを
全国老人福祉施設協議会 副会長
社会福祉法人 みしま 理事長
秦 千代栄
膨大な知見を情報としてどう還元していくかが課題
私は5名の副会長の中でも一番若く、役員としても新任。とにかく平石会長や副会長の皆さんの足を引っ張らないよう、と思いながら務めさせていただいています。
この2年間で実感したのは、全国老施協はシンクタンクだな、ということです。20を超える委員会、部会があり、それぞれが高い専門性と独立性を持って内外から多くの知見を集約しています。これを情報としていかに還元していくか、が最大の課題だと感じます。とにかく情報の量がすごいので、ニーズに合わせて会員の皆さんに提供していくために、今年度から始まったwebメディアなどもうまく使って、必要な情報をタイムリーに発信していくことを模索すべきです。受け取る側にとっては、“量より質”が大事ですから。特に「老施協.com」は、管理者、施設長、理事長にも率先して閲覧してもらい、職員の皆さんと共有していただけたら、と思います。
私は副会長として、ロボット・ICT推進、外国人介護人材対策、それと福島で施設を運営しているということもありまして、災害対策の各委員会・部会を担当させていただいております。
ロボット・ICTと外国人材は、ツールと人材ではありますが、共に慢性的な人材不足と、経営の非効率に対処するための施策で、この2つをうまくミックスして使いこなす施設運営を今後推進する必要性を感じています。
私自身が運営する施設は、職員70名くらいの小規模社福法人です。またそうした施設を代表して平石会長に任命いただいた、とも理解しています。小さいことも脆弱なことも武器にして、大きさや量ではなく、質をいかに担保できるか、というテーマを持ってこれからも精進してまいります。
新たな目標と取り組み
- 全国老施協はシンクタンク。ニーズに合わせた発信を
- ロボット・ICTと外国人介護人材を両輪としてミックスする
- 施設も情報も、大事なのは、量より質
撮影=桃井一至/取材・文=重信裕之
新たな目標と取り組み