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〈厚生労働省〉
介護保険部会で介護人材確保、生産性向上に向けた議論
JS-Weekly No.840
第95回社会保障審議会介護保険部会
ポイント
① ロボット・ICT導入による人員配置基準の緩和に慎重論
② 介護助手に介護報酬上の評価を求める
厚生労働省は7月25日、社会保障審議会介護保険部会を開き、次期介護保険制度改正に向けた議論を行った。 ①地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進、②介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進、③給付と負担、④その他を検討課題にあげているが、この日は、「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について」をテーマに幅広く議論を行った。
介護人材の確保等に向けた諸施策はデータによる検証を
介護人材確保や生産性向上に向け、厚生労働省では、これまで処遇改善加算などによる介護職員の賃金改善、介護ロボット・ICT(情報通信技術)などのテクノロジーの活用などによる生産性向上、介護助手の活用によるタスク・シフティングやタスク・シェアリング、経営の大規模化・協働化などさまざまな取り組みを行っている。これらの施策については、多くの委員が「積極的に推進すべき」とした。一方で、「現場とのミスマッチがないか」などその効果をデータとして把握・検証する必要があるという意見も相次いだ。
ロボット・ICT導入は重要としつつ人員配置基準の緩和には慎重論
厚生労働省ではロボットやICTを活用した施設を対象とした実証事業を行い、現在の基準より少ない人員配置でも介護の質が確保されるかどうかの検証を行っている。これについても委員からは、「ロボットやICTは人の代わりになるものではない」など、ICTの活用を人員配置基準の緩和に結び付けることへの慎重論が多く出た。
また、桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)からは、「大規模な法人・事業所などではロボットやICT導入に比較的積極的だが、小規模な法人・事業所ではそこまで手が回らず、今後『大きな格差』につながると予想される。格差解消策も視野に入れた検証を行ってほしい」との要望が出た。
介護助手の制度化、報酬上の評価などを求める意見も
介護助手は、介護職員との業務分担によって専⾨的な業務以外の周辺業務を⾏う職種で、その活用により、介護職員の⽣産性やケアの質の向上が期待できるとされている。
委員からは、その効果を評価する一方で、介護助手の人件費がかかるとして、「何らかの報酬上の評価が必要」との意見が出た。また、介護助手の定義が分かりにくいとして、「業務の区分けを明確にする」「やりがいを持って働けるような名称も検討すべき」という意見もあがった。
厚生労働省は令和4年に、介護助手の活用による効果を実証するための効果測定事業を実施。また、介護施設での活用状況を把握するための調査研究事業も行う。
経営の大規模化・協働化では、小規模事業所への支援が必要との指摘
社会福祉連携推進法人の制度化などにより、経営の大規模化・協働化が進められている。委員からは、「ロボットやICTの活用を進める上でも重要」「経営の効率化を進める上で不可避」とする意見が出た。一方で、現状では地域密着の小規模事業所も多いことから、さまざまな観点からの支援が必要との意見もあがった。
桝田委員が今回の部会を以て退任
第95回介護保険部会を以て桝田委員が任期満了に伴い、委員から退任された。桝田委員からは「これからの介護保険制度は負担と給付のバランスが取られ、国民に信頼と納得をもたらすものであるべきだと思う。そのためには、骨太の方針2022で言う、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)と、何が一番効果的か、限られた資源を有効活用して、国民に信頼と納得をもたらす介護保険制度とするための『EBPM』に尽きると考える。約15年間、全国老人福祉施設協議会の代表として参加させていただき、ありがとうございました。」と述べた。