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速報(JS-Weekly)

多職種によるケアの質が及ぼす介護者への影響

#多職種によるケア

▶質の高いケアを受けているほど、介護に対する肯定的な認識が高まる

 東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センターは5月21日、在宅療養の高齢患者に提供される「多職種によるケア(医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど)」の“質”が、家族介護者の介護への向き合い方に影響を及ぼすことを明らかにした。

 急速な高齢化に伴い、慢性疾患を有しながら在宅療養を継続する高齢者が増加しており、彼らの生活を支える家族介護者の役割が一層重要となっている。従来の研究は「介護負担感」を中心に介護の否定的側面に焦点を当ててきたが、近年では介護によって得られる満足感や成長といった肯定的側面にも注目が集まっている。

 本研究は、日本の関東地域に位置する6つの無床診療所を対象に、2022年11月〜2023年3月の期間に実施された質問紙を用いた横断的観察研究。対象期間中に当該診療所で訪問診療または外来診療を受けていた65歳以上の要介護高齢者と、その主要な介護を担う20歳以上の家族介護者300名に質問票を配布し、251名から有効な回答を得た(回収率84%)。

 主要評価指標は、多職種によるケアの経験を要介護者と家族介護者の視点と、介護に対する肯定的側面と否定的側面の認識に加えて、被介護者・介護者の人口統計学的背景、主観的健康観、精神的健康状態を収集し、解析を行った。

 その結果、家族介護者が「質の高い多職種ケアを受けている」と評価するほど、介護における愛着・自信・学び・規範の実勢といった肯定的認識が高く、周囲からの孤立・対処困難感といった否定的認識が一部低下していることが確認された。

 今回の研究成果は、家族介護者支援において「質の高い多職種によるケア」の重要性を示すもの。今後は多職種によるケアの質だけでなく、多様なケアの量的関係も含め、介護者のQOL(生活の質)向上につながる縦断研究や介入研究への発展が期待される。

(参考資料:https://www.jikei.ac.jp/press/detail/?id=36560